講演情報

[T4-P-9]ヒマラヤ造山帯大横断ー第12回学生のヒマラヤ野外実習ツアー(2024年3月)報告
Traversing the Himalayan Orogen-Report of the 12th Student Himalayan Field Exercise Tour in March 2024.

*吉田 勝1,2、酒井 哲弥3、シグデル A.2、シルワル C.B.2、在田 一則4、ウプレティ B.N.5 (1. ゴンドワナ地質環境研究所、2. ネパール国立トリブバン大学トリチャンドラ校、3. 島根大学総合理工学部、4. 北海道大学総合博物館、5. ネパール科学技術アカデミー)
PDFダウンロードPDFダウンロード

キーワード:

ヒマラヤの地学実習、地学野外実習、ネパールヒマラヤ、ヒマラヤ地学ツアー、学生のヒマラヤ実習

GSJ2024Poster ヒマラヤ造山帯大横断2024―第12回学生のヒマラヤ野外実習ツアー20243月)報告
吉田勝1,2・酒井哲弥3・A. Sigdel・C.B. Silwal・在田一則4・B.N.ウプレティ1 ゴンドワナ地質環境研究所,トリブバン大学トリチャンドラキャンパス地質学教室,島根大学総合理工学部,4北大総合博物館,,ネパール科学技術アカデミー

ヒマラヤ造山帯をヒマラヤ8000m主稜線の北側,トランスヒマラヤから大ヒマラヤ山脈を横断してガンジス平原にいたる横断ツアー,学生のヒマラヤ野外実習ツアー(SHET)は2012年より毎年実施されてきた(学生ヒマラヤHP,2024)1.今年3月には第12回の実習ツアーが3月4日/5日から20日の16日間/17日間で実施された.参加者は日本各地の9大学及びネパール国立トリブバン大学の学生・大学院生35人と日本の市民3人で,指導・引率者は筆者らを含む日ネの教員4人で,チームの総勢は42人であった.詳細は吉田(2024a)2で報告した.
野外実習コースは例年と同じで,カトマンズ~ポカラ(泊)~カロパニ(泊)~ムクチナート~カグベニ(泊)~カロパニ(泊)~タトパニ(泊)~ポカラ(2泊)~タンセン(泊)~ルンビニ(泊)~カトマンズを貸切バスで10日間の野外ツアー,その内ムクチナート~タトパニ区間は主に徒歩であった(図1).野外ツアーの前後にはカトマンズでプレ野外ツアーセミナー,野外ツアー報告会,トリブバン大学生らとの合同市内ツアーなどが行なわれた.
野外ツアー期間中,天候はおおむね良好で,全行程を通じて見事なヒマラヤの眺望に恵まれ,予定通りの見学・調査を行なうことができた.本実習ツアーの毎日の行動詳細は吉田(2024b)3で報告した.
なお,ネパール地質鉱産局(DMG)では一昨年5月から外国チームによる国内の野外調査活動と標本の持ち出しに対して厳格な規則を定めており,その許可申請について引率・指導で参加のトリブバン大学教員にお願いした.調査活動許可は問題なく取得できたが,ネパール出発前日に行なった標本持ち出し許可申請は難航し,とりわけ採集した良質の化石や鉱物の多くは没収されてしまい,採集した学生たちの落胆は大きかった.
ツアー中の参加者の健康状態に関しては,野外調査期間の前半は数人が軽い高所障害を呈した程度で,全員元気であった.しかし,後半から帰国後にかけて風邪症状を示すものが次々とあり,帰国直前までには10人前後に達した.罹患者の多くは帰国後病院で検査・治療を受けて快癒したが,多くの者は新型コロナ検査で陽性であった.
SHET-12では暫定参加費を20万円としていた.ネパール国内の諸経費は数年前から漸増して来ているが,今年はとりわけ山岳地域での食事料金が高騰していた.これらのためにチームとして経費節約に大きな努力を払った.参加人数が多かった故もあり,ネパール国内経費を従来と同程度に抑えることができた.航空運賃を含む学生の1人当たりの平均参加費は182,936円であった.これに対して一般対象のクラウドファンディングや2組織と1個人からの寄付金総額554,226円よって一人当たり15,835 円の参加費補助を行ない,結局,学生1人当たりの参加費は平均167,101円となった.
学生のヒマラヤ野外実習プロジェクトでは第13回の実習ツアーを来年3月に実施する予定である.学生の参加費をできるだけ低く抑えるためのSHET対象クラウドファンディング(学生にヒマラヤで学ぶ機会を!CF, 2022)4の充実が期待される.
1 www.gondwanainst.org/geotours/Studentfieldex_index.htm
2 吉田勝(2024a)ヒマラヤ造山帯大横断2024. フィールドサイエンス出版,391頁.3 第12回学生のヒマラヤ野外実習ツアー引率日誌.ヒマラヤ造山帯大横断2024,199~208頁.
4 「学生にヒマラヤで学ぶ機会を!」:www.gondwanainst.org/cf

図1.実習ツアーのコースと日程(地質概略図はDMG,1982から抜粋)

コメント

コメントの閲覧・投稿にはログインが必要です。ログイン