講演情報

[T9-P-1]中琉球の新たな地体構造単元「徳之島帯」の新提案

*山本 啓司1、磯﨑 行雄2、岡本 和明3 (1. 鹿児島大学大学院理工学研究科、2. 東京大学大学院総合文化研究科、3. 埼玉大学教育学部)
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キーワード:

琉球弧、山陰花崗岩帯、テクトニクス、地質構造、U–Pb 年代

徳之島は琉球弧中央のやや北東寄りに位置し、大きさは南北約26 km, 東西約14 km である。徳之島の地質について公表されたデータ(主として中川, 1967; 川野・加藤, 1989; 斎藤ほか, 2009; Ueda et al., 2017; Yamamoto et al., 2022)に基づいてその特質を整理した上で、改めて徳之島の地体構造上の位置付けについて考察する。 徳之島の先第四紀基盤岩は、花崗岩類が広く分布する北半と、堆積岩、玄武岩質緑色岩及び変成岩が広く産する南半に大きく分けられる。北半の花崗岩類分布域は、東側海岸の宮城山と西側海岸の秋利神を弧状に結ぶ線が、その南縁である。この線に沿って、おそらく高角度で北に傾斜する断層が発達すると推定される。この推定断層を美名田山断層と仮称する。徳之島北半の先新生代基盤岩は弱い変形を被った砂岩、泥岩、およびそれらの交互層からなり、層状チャートや玄武岩質緑色岩を伴う。島南半の先新生代基盤岩は明瞭に変成度が異なる二つの地質体から構成される。島東南部の海岸を含む低地に低変成度の泥岩、砂岩、玄武岩質緑色岩が分布し、井之川岳を中心とする山岳部および西海岸の秋利神川河口周辺には、泥質岩を主体とする片理が発達した変成岩類が分布する。非・弱変成の基盤岩類については、島の北半と分布するものを「天城岳ユニット」、南半のものを「尾母ユニット」と呼ぶことにする。これらは岩相の特徴から、九州から北隣りの奄美大島まで追跡される四万十帯の付加体に対比される。一方、井之川岳の南西部では泥質片岩の中に角閃岩、古原生代(約1.8億年前)から白亜紀末のジルコンを含む片麻岩、さらに蛇紋岩の複数の小岩体を伴っていて、それらが角閃岩相の高温部に達する低圧高温型変成作用を被っている。これらの変成岩類は、前述の天城岳・尾母ユニットとは明らかに異なった様相を呈する。主に徳之島南半の山岳部に産する高度変成岩類を一括して「井之川岳変成複合体」と呼ぶ。これらの先新生代基盤岩は、暁新世(ca. 60 Ma)花崗岩類に貫入されている。井之川岳変成複合体は砂質片岩のジルコン年代に基づくと、角閃岩相の変成作用の時期は暁新世であった可能性がある。西南日本で対比可能な高温熱イベントとして、山陰(花崗岩)帯での花崗岩活動がある。中国・四国地方では四万十帯よりも大きく大陸側に位置する場で生じた火成・変成作用であり、同様の熱イベントが中琉球の四万十帯で起きたのであれば、地体構造上の位置付けの再検討が不可避である。 井之川岳変成複合体は、四万十帯付加体の構造的上位にクリッペとして累重することから、その分布域を日本列島内の新たな地体構造単元として「徳之島帯」と呼んで、識別することを提案する。徳之島帯の起源として、暁新世マグマ活動域の古第三系浅海相砕屑岩層や四万十帯付加体の高温変成部などである可能性が考えられる。

引用文献:Isozaki et al., 2010, Gondwana Research, 18, 82-10;川野・加藤, 1989, 岩鉱, 84, 177-191;中川久夫, 1967,東北大学地質古生物研究邦報, no. 63, 1-39; 斎藤眞ほか, 2009, 20万分の1地質図幅「徳之島」. 産総研; Ueda et al., 2017, Island Arc, 26. e12199; Yamamoto et al., 2022. International Geology Review, 63, 1-16. 地名:宮城山(みやぐすくやま)、秋利神(あきりがみ)、美名田山(みなだやま)、天城岳(あまぎだけ)、井之川岳(いのかわだけ)、尾母(おも)

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