講演情報

[T11-P-2]兵庫県生野鉱床における多金属鉱化作用の解明に向けた鉱物学的・地球化学的検討

*吉田 頌1、大田 隼一郎1,2、小笠原 光基1、中村 謙太郎1,2、安川 和孝1、藤永 公一郎2,1、加藤 泰浩1,2 (1. 東京大学大学院工学系研究科、2. 千葉工業大学次世代海洋資源研究センター)
PDFダウンロードPDFダウンロード

キーワード:

熱水性鉱床、硫化鉱物、生野鉱床、局所化学分析、Re-Os年代測定

産業上重要な金属の供給源である金属鉱床の多くは熱水性鉱床に分類され、その大部分は複数種類の金属元素を高品位に濃集した多金属鉱脈型鉱床である。そのため、新規鉱床の探査指針を提案する上では、このような熱水性多金属鉱脈型鉱床の形成プロセスを解明することが重要である。そして、鉱床形成プロセスの解明においては、対象とする鉱床の形成に関与したマグマの年代と鉱床自体の鉱化年代を決定して時系列を整理することが重要な制約条件となる。
本研究では、熱水性多金属鉱脈型鉱床が集中して分布する兵庫県但馬地域に存在する生野鉱床を対象とした。生野鉱床は日本三大銀山として室町時代から江戸時代にかけて多量の金銀を産出したほか、明治時代以降も銅、鉛、亜鉛、錫など種々の金属の生産で国内産業を支え、日本の近代化に多大な貢献を果たすなど、鉱床学的にも歴史的にも重要度の高い鉱床である。成因解明のための重要な情報である鉱床の生成年代については、鉱脈の氷長石を対象としたカリウム(K)-アルゴン(Ar)年代測定法により74–63 Maの値が得られている [1]。また、生野鉱床の関係火成岩として大畑花崗岩類が示唆されており [2]、花崗岩試料の全岩K-Ar年代測定法により61.3 Maの年代値が得られている [1]。しかしながら、鉱脈の氷長石に対するK-Ar年代は、鉱脈形成後の熱的イベントなどの影響を受けやすいため、有用金属の沈殿した年代を直接示していない恐れがあることと、大畑花崗岩類の年代測定に用いられた花崗岩試料は変質を受けており、その影響の評価が難しいことから、それぞれ異なる手法で年代値を得て比較検討を行い、生野鉱床の鉱化時期と起源マグマについてより直接的な制約条件を得る必要がある。
熱水性硫化物鉱床の鉱石試料に対して適用可能な年代決定手法として、レニウム(Re)-オスミウム(Os)放射年代測定法がある[3]。本研究では、Re-Os放射年代測定法の適用を念頭に置いた上で、生野鉱床の7鉱脈の鉱石試料を研究対象とした。まず、鉱石試料中でのReとOsのホスト相を特定することを目的として、反射顕微鏡を用いた鏡下観察、エネルギー分散型X 線分析装置搭載走査型電子顕微鏡による観察および元素マッピングを実施し、構成鉱物の種類とその産状を観察した。Re-Os年代測定法を鉱石試料に適用するためにはReが十分量含まれている必要があるため、構成鉱物の組み合わせが明瞭な試料に対してレーザーアブレーション誘導結合プラズマ質量分析によるRe局所分析を行い、Reの分布を把握した。その後、Reの明瞭なシグナルを検出した鉱石試料に対してRe-Os同位体測定を実施し、生野鉱床の年代値を求める。本発表では、上述した一連の手法によって得られた鉱物学的特徴およびReを含む地球化学的特徴について報告する。

[1] MITI, (1988), 広域地質構造調査報告書:播但地域–昭和62年度, 46 p.
[2] 今井秀喜, (1970), 近畿地方西部鉱床生成区 日本鉱業会昭和45年度秋季大会分科研究会資料, 4 p.
[3] Cendi et al. (2023) Economic Geology. 118(6), 1341-1370.

コメント

コメントの閲覧・投稿にはログインが必要です。ログイン