講演情報

[T11-P-3]局所化学組成分析に基づく兵庫県中瀬鉱床の金鉱化作用の検討

*池津 雄地1、大田 隼一郎1,2、小笠原 光基1、中村 謙太郎1,2、安川 和孝1、藤永 公一郎2,1、加藤 泰浩1,2 (1. 東京大学大学院工学系研究科、2. 千葉工業大学 次世代海洋資源研究センター)
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キーワード:

熱水性鉱床、金・アンチモン鉱床、硫化鉱物、局所化学組成分析、Re-Os放射年代測定法

 金は宝飾品や投資・資産だけでなく, 医療やエレクトロニクスといった産業分野においても活用領域が広がっており, 今後さらなる需要増加が見込まれている [1]. 金鉱床からはアンチモンが同時に産出されることがあり, 例えば兵庫県の中瀬鉱床は日本を代表する金・アンチモン鉱床である [2]. 金とアンチモンが同時に濃集する過程を明らかにすることで金鉱床形成のメカニズムの一端を解明することにつながる可能性がある.
 中瀬鉱床は熱水性鉱床であると考えられている [2]. 熱水性鉱床の形成プロセスを考察する上では, 鉱脈が形成された年代を明らかにし, 鉱床を形成したマグマの活動史と関連付けることが重要である. しかしながら, 中瀬鉱床の形成年代については現在も未解明となっている. 鉱床の形成年代の決定方法としては放射年代法が用いられることが多く, 中でもレニウム (Re) とオスミウム (Os) の放射壊変系を用いたRe-Os放射年代測定法が近年注目されている [3, 4].
 本研究では, 兵庫県・中瀬鉱床の形成メカニズムの解明を目標として, レーザーアブレーションを用いて鉱石の局所化学組成分析を行い, 金やアンチモンを含む様々な元素の挙動を考察した. また,Reの存在領域を明らかにし, Re-Os放射年代測定法の適用可能性について検討を行った. 具体的には,中瀬鉱山から採取された鉱石試料計42点を対象に, これらの鉱石試料から代表的な産状を観察するため, まずはそのすべてを岩石カッターで半割し肉眼で観察を行った. そして, 典型的な鉱化ステージが確認出来る試料を選出し, チップ上に切り出した上で直径3 cm 程度の研磨片試料を作成した. 研磨片試料に対して反射顕微鏡, 実体顕微鏡およびエネルギー分散型X 線分析装置搭載走査型電子顕微鏡 (SEM-EDS) を用いてそれぞれの鉱石試料を構成する鉱物の種類とその産状の観察を行った. さらに, レーザーアブレーションシステムと組み合わせたICP-MS (LA-ICP-MS) を用いて局所化学組成分析を実施した.
 鏡下およびSEM-EDS観察により, 本鉱床が典型的には母岩側から順に硫砒鉄鉱・黄鉄鉱脈, 石英脈, ベルチェ鉱・輝安鉱脈の順で構成されていることが確認された.一方, 自然金は石英中に単体で存在する場合と輝安鉱と共存する場合があることが分かった. また, LA-ICP-MS分析の結果, Reは主に硫砒鉄鉱の外縁部に分布する傾向があることが示唆された.

[1] Zion Market Research. (2023). [2] 北卓治. (1962) 京都大学博士論文.[3] 鈴木勝彦, 加藤泰浩. (2010) 資源地質, 60(1), 25-36. [4] Cendi et al. (2023) Economic Geology, 118(6), 1341-1370.

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