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[T16-P-6]兵庫県篠山地域の丹波帯ペルム系層状チャートの層序と年代

*坂本 賢太郎1、尾上 哲治1 (1. 九州大学)
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キーワード:

ペルム紀、放散虫

古生代ペルム紀のグアダルピアンからローピンジアンにかけての化石記録からは,ペルム紀末の大量絶滅に先立ち,グアダルピアン/ローピンジアン境界(GLB)付近で大量絶滅が起こったと考えられている.その原因として現在有力とされているのが,グアダルピアン後期(キャピタニアン)に起こった南中国地塊の峨眉山の火山活動だが,絶滅の直接的な原因となる環境変動の詳細は不明である.また浅海性生物群集(フズリナ,サンゴ,腕足動物など)や陸上動物の絶滅は,キャピタニアンの中頃から後期にかけて起こったとされるが,遠洋性環境の生物群集(例えば放散虫やコノドント)の絶滅の詳細な時期についても決定されていない.その理由として,ペルム系化石層序年代の対比(例えばコノドントと放散虫)が十分に確立されていないことが一つの要因となっている.
 そこで本研究では,兵庫県篠山地域丹波帯のペルム系層状チャートを対象に放散虫化石を抽出し,放散虫化石層序の検討を行った.本調査地域では,先行研究(石田ほか,1991)によって放散虫を用いた生層序学的検討が行われている.本研究では,Xiao et al. (2018)の分類や化石年代に基づいてペルム系放散虫化石層序を再検討し,大量絶滅や大規模な火山活動が起こったとされるキャピタニアンの層序区間の決定を目的として検討を行った.検討セクションである藤岡奥セクションの林道沿いの露頭において,層厚約22mの柱状図を作成し,30㎝程度の間隔でチャート試料,頁岩試料を採取した.本セクション中には6つの小断層が確認できたため,セクションを 7つのサブセクションに区分した.採取したチャート試料は水酸化ナトリウム溶液を使用して溶解し(Onoue et al., 2024),放散虫化石を抽出した.
 本研究の結果,セクション下部よりグアダルピアン前期~中期に特徴的なParafollicucullus fusiformisParafollicucullus globosaが産出した.セクション中部からは,グアダルピアン後期~ローピンジアン前期に主に産出するFollicucullus属の放散虫が,またセクション上部からはローピンジアンに特徴的なAlbaillella属の放散虫が産出した.産出した放散虫記録よりXiao et al. (2018)に基づいて試料の年代を推定したところ,調査したセクションの堆積年代はグアダルピアン前期(ローディアン)からローピンジアン後期(チャンシンジアン)に相当することが明らかになった.本研究では,初産出がローディアンの基底を定義するAlbaillella yamakitaiの産出は確認できなかったが,その他のAlbaillella属の数種とFollicucullus属の数種の産出と統計学的手法を用いた年代決定法(Xiao et al., 2018)より,GLBの範囲を,セクションの基底から13mから19mの範囲に絞り込むことができた.また本研究では,検討セクションにおけるキャピタニアン全体の層序区間が明らかになったため,今後は大量絶滅や大規模な火山活動が起こったとされるキャピタニアンを通した環境変動や放散虫化石群集の変化について検討を進める予定である.

引用文献
石田耕太郎・山下雅之・石賀裕明, 1992, 丹波帯の遠洋性堆積物中のP/T境界について. 島根大学地質学研究報告, 11, 39-57.

Onoue, T. et al., 2024, A dilute sodium hydroxide technique for radiolarian extraction from cherts. Scientific Reports 14, 12831.

Xiao, Y.F., Suzuki, N. and He, W.H., 2018, Low-latitudinal standard Permian radiolarian biostratigraphy for multiple purposes with Unitary Association, Graphic Correlation, and Bayesian inference methods. Earth-Science Reviews, 179, 168–206.

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