講演情報

[T16-P-14]宮崎県高千穂町の秩父帯における上部三畳系上村石灰岩の層序とコノドント化石年代

*久常 晃誠1、尾上 哲治1、Manuel Rigo2 (1. 九州大学、2. パドヴァ大学)
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キーワード:

三畳紀、コノドント、石灰岩

宮崎県高千穂町の秩父帯には,ペルム紀グアダルピアンから後期三畳紀にかけてパンサラッサ海中央部の海山で形成された浅海環礁性石灰岩が分布する.このうち高千穂町上村周辺には,下位より黒色有機質石灰岩の中部ペルム系岩戸層,ドロマイト質石灰岩の上部ペルム系三田井層,塊状石灰岩の下部-上部三畳系上村層が分布しており,このうち特に岩戸層や三田井層のグアダルピアン/ローピンジアン境界の絶滅や,ペルム紀末大量絶滅などの大量絶滅について多くの研究がなされてきた.パンサラッサ海中央部の海山に起源をもつ上村石灰岩は,当時の大洋域における浅海の海洋環境情報を復元できるという特徴がある.そのため,堆積相解析,フズリナ・コノドント化石層序,炭素同位体比分析などの研究が行われてきた(例えば, Sano and Nakashima, 1997;磯﨑・太田,2001).しかし,上村層の上部三畳系石灰岩を対象とした研究はこれまで少なく,岩相層序や年代についても詳しくわかっていない.そこで本研究では,地表踏査から三畳系上村石灰岩の岩相および層序について検討し,さらにコノドント化石層序および堆積相解析からパンサラッサ海中央部における後期三畳紀の古海洋環境復元を目的として研究を行った.
 上村層の上部三畳系は,急斜面で植生の多い丘陵斜面に分布し,露頭の露出は局所的である.本研究では上村石灰岩の最北部で連続層序区間を設定し,層厚約15mの柱状図を作成した.上村層は,層厚が30 cm~50 cm程度の層状石灰岩から構成される.本研究では 50㎝程度の間隔で合計20層の石灰岩からコノドント化石および堆積相解析のための試料を採取した.
 本研究の結果,検討したセクションの下部より,中期三畳紀アニシアン後期に特徴的なParagondolella ex gr. excelsaで特徴づけられるParagondolella属のコノドント化石が産出した.セクション中部からは,後期三畳紀カーニアンに特徴的なQuadralella lobataを含むQuadralella属が産出した.上部からはノーリアンに特徴的なEpigondolella属のコノドント化石のほか,最上部からはMockina bidentataなどの上部ノーリアン(セバチアン)の年代を示すコノドント化石が得られた.薄片観察に基づく堆積相解析では,セクション全体を通じて主に薄殻二枚貝を含むlime-mudstoneおよびwackestoneから構成され,比較的静穏な環境で堆積したミクライト質石灰岩から構成されることが明らかになった.そのほか数層準では,有孔虫,貝形虫,ウミユリを含むpackstoneも観察された.本研究の結果,上村石灰岩最上部の約15 mの連続層序は,アニシアン後期からノーリアン後期にかけて堆積したミクライト質石灰岩であることが明らかになった.今後はより詳細なコノドント化石層序を確立し,後期三畳紀のカーニアン多雨事象などの全地球的なイベント層準の特定を進める予定である.

引用文献
・磯﨑行雄・太田彩乃,2001,超海洋中央部での古生代末大量絶滅事件と浅海環境の急変-海山頂部相中・上部ペルム系石灰岩の生層序および岩相層序-.地学雑誌110, 427-432.
・Sano, H., Nakashima, K., 1997, Lowermost Triassic (Griesbachian) Microbial Bindstone-cementstone Facies, Southwest Japan. Facies, 36, 1-24.

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