講演情報
[T17-P-1]岩手沖日本海溝での反射法地震探査断面から見た陸側斜面の変形構造
*三浦 亮1、中村 恭之1、野 徹雄1、瀧澤 薫2、白石 和也1、三浦 誠一1、藤江 剛1 (1. 海洋研究開発機構、2. 日本海洋事業(株))
キーワード:
日本海溝、反射法地震探査、沈み込み帯、mid-slope terrace
日本海溝は、陸側斜面先端部に小規模な付加プリズムが形成されるもの(von Huene et al. 1994)、基本的には造構性侵食作用の進行する非付加型沈み込み帯として知られている(例えば、Clift and Vannucchi, 2004)。加えて、南海トラフと同様にプレート沈み込み型地震発生帯であり、2011年には国内観測史上最大となるMw9.0の巨大地震とそれに伴う津波が発生している。1997年以降、JAMSTECでは日本海溝における反射法地震探査を実施してきているが(例えば、Tsuru et al., 2000, 2002)、2011年の東北地震発生直後からはとくに震源域のプレート境界断層や上盤プレートの構造をターゲットとして探査を実施してきた(例えば、Kodaira et al., 2017)。
また、千島海溝~日本海溝域は、2011年東北地震から10年以上経過した現在でも地震活動が活発である。将来的に沈み込み帯やアウターライズ域での巨大地震発生が危惧され(例えば、地震調査研究推進本部, 2024)、今後も予断を許さない状況が続いている。しかしながら、現実的な知見に基づく津波即時予測や地震サイクルシミュレーション等を行う上で必要となる三次元的な地下構造の実態把握は遅れている。そこでJAMSTECでは2019年以降、千島海溝~日本海溝域において、「かいれい」「かいめい」を用いた反射法地震探査を重点的に実施し、プレート境界断層の複雑な形状等を三次元的に捉えるための構造調査に取り組んできた。
2023年の「かいめい」調査航海(KM23-07)では日本海溝北部(青森~岩手沖)で約6kmのストリーマーケーブルと10600立方インチの大容量エアガンを用いた調査を実施した(中村ほか, 2023)。著者らは本航海で得られたデータに対して重合前深度マイグレーション処理を含む各種処理を適用し、反射法地震探査断面(時間断面および深度断面)を作成した。本発表では、主に陸側斜面に見られる変形構造に着目して岩手沖における反射法地震探査断面を紹介する。
中村ほか (2023)で既報の通り、この反射法地震探査断面においては陸側斜面下に沈み込む太平洋プレート上面が追跡でき、一部区間ではさらにその下のモホ面と推定される反射イベントも確認できる。また、陸側斜面上部~中部にかけては、明瞭な不整合(Boston et al., 2017における”Regional Basal Unconformity”に相当)が確認でき、その上位には成層した堆積層が分布する。そしてこれらを切るように正断層の発達が確認できる。陸側斜面中部~下部には陸側(西側)に傾斜する強振幅の反射面が複数確認でき、このうち最も西側のものはmid-slope terraceの西端に確認できる。これはTsuru et al. (2000)で”backstop interface”と解釈された反射面に相当する。この陸側傾斜反射面と、mid-slope terrace~海溝軸までの陸側斜面下部とで囲まれるウェッジ状の領域には複数の強振幅の陸側傾斜反射面に加え、これらを切るような正断層も確認される。本発表では、このような陸側斜面の地下構造を詳細に描出することで、変形・非変形境界としての”backstop interface”の位置・形状や、mid-slope terraceを含めた上盤側プレート前縁部の変形構造について議論する。
<文献>
Boston et al. (2017) EPSL, doi:10.1016/j.epsl.2017.01.005
Clift and Vannucchi (2004) Rev. Geophys., doi:10.1029/2003RG000127
地震調査研究推進本部 (2024) https://www.jishin.go.jp/main/choukihyoka/ichiran.pdf (2024年1月15日改訂版, 2024年6月24日閲覧)
Kodaira et al. (2017) Geosphere, doi:10.1130/GES01489.1
中村ほか (2023) 日本地質学会第130年学術大会要旨
Tsuru et al. (2000) JGR Solid Earth, doi:10.1029/2000JB900132
Tsuru et al. (2002) JGR Solid Earth, doi:10.1029/2001JB001664
von Huene et al. (1994) JGR Solid Earth, doi:10.1029/94JB01198
また、千島海溝~日本海溝域は、2011年東北地震から10年以上経過した現在でも地震活動が活発である。将来的に沈み込み帯やアウターライズ域での巨大地震発生が危惧され(例えば、地震調査研究推進本部, 2024)、今後も予断を許さない状況が続いている。しかしながら、現実的な知見に基づく津波即時予測や地震サイクルシミュレーション等を行う上で必要となる三次元的な地下構造の実態把握は遅れている。そこでJAMSTECでは2019年以降、千島海溝~日本海溝域において、「かいれい」「かいめい」を用いた反射法地震探査を重点的に実施し、プレート境界断層の複雑な形状等を三次元的に捉えるための構造調査に取り組んできた。
2023年の「かいめい」調査航海(KM23-07)では日本海溝北部(青森~岩手沖)で約6kmのストリーマーケーブルと10600立方インチの大容量エアガンを用いた調査を実施した(中村ほか, 2023)。著者らは本航海で得られたデータに対して重合前深度マイグレーション処理を含む各種処理を適用し、反射法地震探査断面(時間断面および深度断面)を作成した。本発表では、主に陸側斜面に見られる変形構造に着目して岩手沖における反射法地震探査断面を紹介する。
中村ほか (2023)で既報の通り、この反射法地震探査断面においては陸側斜面下に沈み込む太平洋プレート上面が追跡でき、一部区間ではさらにその下のモホ面と推定される反射イベントも確認できる。また、陸側斜面上部~中部にかけては、明瞭な不整合(Boston et al., 2017における”Regional Basal Unconformity”に相当)が確認でき、その上位には成層した堆積層が分布する。そしてこれらを切るように正断層の発達が確認できる。陸側斜面中部~下部には陸側(西側)に傾斜する強振幅の反射面が複数確認でき、このうち最も西側のものはmid-slope terraceの西端に確認できる。これはTsuru et al. (2000)で”backstop interface”と解釈された反射面に相当する。この陸側傾斜反射面と、mid-slope terrace~海溝軸までの陸側斜面下部とで囲まれるウェッジ状の領域には複数の強振幅の陸側傾斜反射面に加え、これらを切るような正断層も確認される。本発表では、このような陸側斜面の地下構造を詳細に描出することで、変形・非変形境界としての”backstop interface”の位置・形状や、mid-slope terraceを含めた上盤側プレート前縁部の変形構造について議論する。
<文献>
Boston et al. (2017) EPSL, doi:10.1016/j.epsl.2017.01.005
Clift and Vannucchi (2004) Rev. Geophys., doi:10.1029/2003RG000127
地震調査研究推進本部 (2024) https://www.jishin.go.jp/main/choukihyoka/ichiran.pdf (2024年1月15日改訂版, 2024年6月24日閲覧)
Kodaira et al. (2017) Geosphere, doi:10.1130/GES01489.1
中村ほか (2023) 日本地質学会第130年学術大会要旨
Tsuru et al. (2000) JGR Solid Earth, doi:10.1029/2000JB900132
Tsuru et al. (2002) JGR Solid Earth, doi:10.1029/2001JB001664
von Huene et al. (1994) JGR Solid Earth, doi:10.1029/94JB01198
コメント
コメントの閲覧・投稿にはログインが必要です。ログイン