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[T17-P-2]島根県西部・三隅層群の鉱物脈:沈み込み境界の変形と流体活動

*三木 悠仁1、遠藤 俊祐1 (1. 島根大学)
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キーワード:

鉱物脈、三隅層群

はじめに 付加体~高圧変成岩中の鉱物脈は,沈み込みプレート境界付近の流体流動の物理化石として注目され,近年では流体圧サイクルに支配されるスロー地震活動との関連づけた数多くの研究が公表されている.島根県西部の三隅層群は弱変成作用を受けたジュラ紀付加体,もしくはジュラ紀周防変成岩の最低変成度部に相当する.付加体と高圧変成岩の遷移領域を形成場としており,現世の南海沈み込み帯の深部スロー地震発生域浅部の地質アナログとみなしうる.三隅層群は三隅港から折居海岸にかけての日本海沿いに好露頭が連続し,多数の鉱物脈が観察される.三隅層群の変形構造はOho and Hirayama (1991)により調べられているが,鉱物脈については過去に研究されたことがない.岩相ごとの鉱物脈の姿勢,サイズ(幅と長さ),空間分布,構成鉱物,微細組織に関する予察的な調査結果を報告する.

三隅層群の岩相 三隅層群の大部分は泥質~砂質岩によって構成され,泥質千枚岩と変成砂岩からなる整然相のほかに,Block-in-matrix構造が顕著なメランジュ相を示す地域もある.メランジュ相は泥質基質に砂岩のブーディンもしくは剪断による非対称レンズを含むほか,ブーディン化した大理石も含まれる.この大理石ブーディンはフォリエーションに対して垂直に伸びた繊維状方解石によって構成されており,アラゴナイト大理石から相転移した可能性がある.砂泥質岩に次ぐ存在度の苦鉄質岩類は,原岩の構造・組織を残す変成玄武岩と均質でフォリエーションの強く発達した苦鉄質千枚岩に分類できる.変成玄武岩中の斜長石やかんらん石斑晶はパンペリー石に置換され,基質には多量の緑泥石と少量の緑れん石,アルバイトなどを含む.苦鉄質千枚岩中にはrhodoniteを主とするMnノジュールやチャート薄層が挟まれる.これら野外における産状(有限歪み)から,変成砂岩,変成玄武岩,変成チャートは,泥質千枚岩および苦鉄質千枚岩に比べてコンピテントな岩相であったと判断される.構成鉱物からは300℃,0.6GPa程度の変成条件が推定される.

鉱物脈 変成玄武岩,苦鉄質千枚岩,泥質千枚岩中の鉱物脈を調べた.海岸沿いの三隅層群は全域で低角北傾斜の岩相境界およびフォリエーション(Oho and Hirayama 1991のスレート劈開S1)をもつ.変成玄武岩中の鉱物脈の姿勢はフォリエーションに対してほぼ垂直かつ二方向(NE-SWおよびNW-SE走向)に卓越する引張クラック充填脈である.一方,苦鉄質千枚岩および泥質千枚岩の鉱物脈はフォリエーションに対して低角なものが卓越する.鉱物脈はフォリエーションを切断しつつも,褶曲および石英の結晶塑性変形を被っているため,単一の延性変形段階の期間中の流体圧上昇サイクルに応じて形成されたことを示す.変成玄武岩および苦鉄質千枚岩の鉱物脈は,泥質千枚岩中に比べてサイズが大きくて数密度が低く(もしくは局在化),岩相ごとの浸透率の違いを反映している.幅の広い脈の多くは複数回のクラック充填イベントで形成された組織をもつ引張クラック充填脈であるが,低角の鉱物脈は脈内が脈壁と平行な剪断面で切られ石英が細粒化していることがある.いずれの岩相の鉱物脈も石英が主体であるが,緑れん石,緑泥石,白雲母,アルバイト,方解石のうちいくつかを含む.パンペリー石は脈中には存在しない.緑泥石温度計を適用すると,鉱物脈中の緑泥石は母岩の緑泥石よりもsudoite成分が低く高温傾向を示す.しかし,この成分は緑泥石のFe3+の見積もりにも依存するため,実際に母岩との温度差があるかどうかは慎重な検討が必要である.

文献 Oho and Hirayama (1991) 地質学雑誌 97, 791-797

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