講演情報

[T17-P-3]プレート沈み込み帯における鉱物脈密度分布とその測定方法の開発

*貞松 夏実1、坂口 有人1 (1. 山口大学)
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キーワード:

鉱物脈、沈み込み帯、四万十帯

【はじめに】プレート沈み込み帯に存在する流体は地震発生や付加体形成に影響を及ぼすと考えられている(例えばDavis et al., 1983)が、流体がどのように移動しているのか詳しくわかっていない。流体は地震発生帯の深度では間隙を移動できず、亀裂にのみ存在するようになる(上原ほか, 2011)。そのため鉱物脈は流体移動の情報を得る手がかりである(岡本, 2014)。過去のプレート沈み込み帯が露出する四万十帯では普遍的に鉱物脈は存在している。しかし、それは一様に分布しているわけではない。沈み込み帯の深度によって流体の移動様式が変化する可能性がある。そのため、本研究は四万十帯内の古地温の異なる場所を調査し、プレート沈み込み帯の深度方向における鉱物脈密度の分布を明らかにする。また、従来の鉱物脈密度分析法ではいくつかの課題が見られるので、より精度の高い鉱物脈密度の測定方法を開発し、四万十帯の鉱物脈定量調査を行う。
【調査方法】本研究では流体移動が顕著に見られる断層帯などは避け、付加体のいわば「普通」の地層を対象とする。古地温が異なる各地域の代表的な露頭において円形の領域を設定し、そこに存在するすべての鉱物脈の面積を見積もる。露頭には鉱物脈の多いエリア少ないエリアが不均質に存在するため、それぞれ2か所以上含むように調査範囲を設定する。調査範囲の面積が小さいと、この不均質の影響を受けて測定結果に差異が生じる。予備調査として面積を徐々に広げた場合の鉱物脈密度の変化を調べた結果、直径10mあればその地域の鉱物脈密度を代表できることが分かった。本研究では各地域の代表的な露頭における直径10m円内の脈密度を比較する。本研究では、直径10mの調査範囲を設定し、その中を見かけの鉱物脈密度によって複数の部分に区分する。各部分の代表的な場所に直径1mの円を設定し、その中において目視可能なすべての鉱物脈の面積を露頭で測定する。そして岩石試料を採取して、鏡下において微細な鉱物脈の面積も測定する。これらを積算して、直径10mの調査範囲内の鉱物脈の密度を求める。
【結果】古地温が低い地域から高い地域まで12か所で調査した。その結果、古地温が約150℃と低い地点では鉱物脈密度割合が約7‱と低い。古地温が160℃から230℃と上昇すると、鉱物脈密度が低い地域もあるが、45‱などの高い値を示す地域も見られる。古地温が約300℃以上になると、鉱物脈密度割合が100‱超と非常に高くなった。なお、すべての地点で石英脈が見られ、12か所中4か所でカルサイト脈が確認された。これらのことからプレート沈み込み帯では鉱物脈密度は温度に依存して増加し、深部ほど脈密度が高いと考えられる。
引用文献
Davis,D., Suppe, J. and Dahlen, F.A.- (1983) Mechanics of fold-and-thrust belts and accretionary wedges, Journal of Geophysical Research, 88, 1153-1172.
岡本敦(2014)鉱物脈組織から読み解く地殻流体流動, 岩石鉱物科学, 43, 25-29.
上原真一, 嶋本利彦, 松本拓真, 新里忠史, 岡崎啓史, 高橋美紀 (2011)地下深部における新第三紀泥質軟岩中の亀裂の透水特性‐室内試験による推定‐, Journal of MMIJ, 127, 139-144.

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