講演情報
[T17-P-4]構造性メランジュに発達する剪断脈の差応力の制約:白亜系四万十帯横波メランジュ
*平岡 空1、橋本 善孝1、細川 貴弘1 (1. 高知大学)
キーワード:
断層、流体圧、剪断脈、流体包有物
はじめに:流体圧は断層のすべり強度に大きく影響する。断層すべり挙動を理解するためには天然において流体圧がどの程度影響を及ぼしているのか定量化する必要がある。先行研究で断層中の鉱物脈に含まれる流体包有物の解析から断層形成時の流体圧を推定されてきた。しかし断層形成深度を独立に求めることができなかったため、流体圧の断層強度への影響度の定量化ができなかった。Hosokawa and Hashimoto [2022, Scientific Reports]は引張クラックの形成条件と天然から得られた流体圧を用いて引張クラック形成深度と岩石の引張強度を制約することに成功した。本研究では、この手法を剪断脈に発展させる。小断層解析による古応力、剪断破壊理論と天然の情報を組み合わせ、剪断脈の形成深度と流体圧比λ(静岩圧に対する流体圧の割合)を制約することを目指す。地質概説:研究対象地域は、四国白亜系四万十帯横浪メランジュである。高知県土佐市横浪半島を南北に約2kmの幅を持ったメランジュ相である。黒色頁岩を基質とし、砂岩、泥岩、赤色頁岩、多色頁岩、チャート、石灰岩、玄武岩のブロックで構成されている。メランジュ構造を切る小断層が多数発達しており、厚さ約数mm~数cmの鉱脈を伴っている.この小断層の分布が海洋底層序に規制されていることから底付け付加前に形成されたと考えられている[Hashimoto et al., 2012, Island arc]。剪断脈形成時の温度・圧力は流体包有物からおよそ175~225℃、143~215MPaと推定されている。手法:横浪メランジュの小断層古応力解析から、正断層応力場と逆断層応力場の二つの応力場が推定されており[Hashimoto et al., 2014, Tectonics]、得られている2つの応力解のそれぞれについて、各小断層面とσ1のなす角(θr)を算出した。また、θr の確定した剪断脈について流体包有物測定を行い、形成時の流体温度・圧力を推定した。今回は、逆断層応力場と正断層応力場に対応する鉱物脈についてそれぞれ3つと1つの結果が得られた。結果:4つのサンプルの結果が得られたが、測定できた流体包有物が少なく、データの信頼性は低い。その上で、サンプル1-4についてθrは19度、36度、48度、および53度であり、流体圧は119MPa、204MPa、170MPa、および111MPaであった(最後のサンプルが正断層応力場)。温度はおよそ160度から220度程度で、先行研究とほぼ一致している。議論:岩石破壊理論によれば、 θrは差応力と流体圧比の関数である。本研究において、形成深度はHosokawa et al. [2023, 地質学会]で8kmと制約されており、今回得られた流体圧を流体圧比に変換できる。すなわち結果として、差応力を推定することが可能となる。得られた差応力は逆断層応力場では最小でおよそ7MPa、最大でおよそ262MPaとなった。正断層応力場に対応する一つのサンプルはおよそ82MPaであった。制約された差応力は大きな幅を持つことから、多様な流体圧の影響とそれに応じた多様な差応力規模が混在していることが示唆される。引用文献:Hosokawa and Hashimoto, 2022, Scientific reports; Hashimoto et al., 2014, Tectonics; Hosokawa et al. 2023, 地質学会; Terakawa et al.,2012, Journal of geophysical research
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