講演情報
[G-P-33]熊野沖IODP Site C0025における新第三系の浮遊性有孔虫生層序
*髙山 佳奈子1、林 広樹2、松岡 篤3 (1. 島根大学大学院自然科学研究科、2. 島根大学総合理工学部、3. 新潟大学)
キーワード:
生層序、浮遊性有孔虫、IODP Exp. 358、NanTroSEIZE、熊野沖
IODP Site C0025はInternational Ocean Discovery Program(IODP)第358次研究航海のcontingency siteとして掘削された地点である.このSite C0025は熊野海盆の北西端付近(北緯33°24’05.4600”,東経136°20’09.1428”)水深2039.5 mのところに位置し,400.00~574.77 mbsfの区間で,回収されなかったコア2Rを除いて全18本のコアが採取された(Kimura et al., 2020).これらのコアの年代については石灰質ナンノ化石によると化石帯NN14—NN15/CN10~CN11からNN19/CN13b(1.34~4.13 Ma)と対比され,この年代に基づいてコアの7R~19R(457~574.775 mbsf)の区間における古地磁気の年代はガウス正磁極帯(2.581~3.596 Ma)に相当する可能性が指摘された(Kimura et al., 2020).ただし,厳密にみると矛盾する区間も認められた(Kimura et al., 2020). このことを踏まえ,本研究では浮遊性有孔虫を用いてSite C0025から採取されたCCサンプル(18試料)の年代と古環境の変遷の復元,そして他の周辺の地点から得られた同年代の浮遊性有孔虫生層序と対比し,熊野海盆周辺の古環境変遷の復元を行うことを目指した.その結果全てのコアで浮遊性有孔虫が産出し,17属55種が同定された.浮遊性有孔虫の全有孔虫に占める割合(P/T)比の平均値は75.2%,乾燥試料1g中に含まれる総浮遊性有孔虫数の平均値は5507.5個体であった.全18試料における産出頻度の上位7タクサはGlobigerinita glutinata, Neogloboquadrina s.l. (N. incompta + N. praeatlantica), Neogloboquadrina pachyderma, Globigerina bulloides, Globigerina falconensis, Globoconella spp.(G. conomiozea,G. inflata,G. puncticulata), Globigerinoides ruberであった.これらの上位タクサは現在の熊野沖でも見られ,また,これまでの南海トラフ掘削の浮遊性有孔虫分析でも報告されている(例えばHayashi et al., 2011).また同定した浮遊性有孔虫群集をPAST (ver. 4.03)を用いて多様度(H),均衡度(eH/S),主成分分析,Rモードクラスター分析,Qモードクラスター分析を行った. Qモードクラスター分析結果から4つのグループに分けられ,更新世の区間については大局的に混合水塊の影響が卓越するものの,3層準でG. ruberなど暖流の要素(尾田・嶽本,1992など)が相対的に多産することから,この層準で暖流の影響が強くなったと考えられる. 年代指標種としてGloboturborotalita nepenthes,Dentoglobigerina altispira,Shaeroidinellopsis seminulina,Globoturborotalita woodi,Globorotalia crassaformis,Globigerinoides extremus,Globorotalia tosaensis,Neogloboquadrina asanoi,Globoconella inflata modern form,Globigerinoides obliquus,Globorotalia truncatulinoidesなどが産出した.浮遊性有孔虫によって復元した年代に基づくと,Hayashi et al. (2011)のIODP Site C0001の岩相ユニットⅠとⅡの境界付近と対比できると考えられる.謝辞:本研究ではIODP第358次航海で掘削されたコア試料を用いた.条線研究者の皆様をはじめ関係各位に感謝申し上げる.参考文献: Hayashi et al. (2011), Proc. IODP, Vol.314/315/316, doi:10.2204/iodp.proc.314315316.206.2011; Kimura et al. (2020), IODP Proceedings, Vol. 358, doi:10.14379/iodp.proc.358.105.2020, p. 1, 3—4, 11—12; 尾田・嶽本(1992), 第四紀研究, 31, 341—357.
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