講演情報
[G-P-42]西フィリピン海盆および九州パラオ海嶺から得られた堆積物の微化石分析
*池田 芽生1、坂本 泉1、横山 由香1、YK24-05S航海 乗船者一同 (1. 東海大学)
キーワード:
西フィリピン海盆、九州パラオ海嶺、微化石
フィリピン海は,西太平洋で最も大きな縁海の1つである.その中央部には長大な九州パラオ海嶺が南北に延び,同海域を二分している(樋口ほか,2015). 九州パラオ海嶺では東側を四国海盆,パレスベラ海盆を挟んで伊豆・小笠原・マリアナ(IBM)弧が,その西側には西フィリピン海盆が展開する(樋口ほか,2015).西フィリピン海盆の北側には沖大東海嶺が北西―南東方向におよそ600 kmにわたって直線的に伸びており,更にその北にある大東海嶺,奄美海台とともにフィリピン海プレートを構成しており,その形成,拡大,奄美海底崖の形成は約4700万年前以降であることが明らかとなっている.そのため,西フィリピン海盆北端部―沖大東海嶺接合部では,約4700万年以降の構造運動により,西フィリピン海盆の海洋地殻断面と沖大東プルームに関係すると見られる火山群の断面が,海底崖に大規模に露出していると考えられ,その断面の観察と採取試料分析は西フィリピン海盆拡大開始時期とプルームによる火山活動開始時期の正確な解明に繋がる.2024年4月12日から4月27日間で行われたYK24-05S航海では,西フィリピン海盆北部から沖大東海嶺南半部にて,西フィリピン海盆拡大と沖大東プルームの活動開始,太平洋プレート沈み込み開始の3イベントの時間関係を明確にするため,海底観察と試料採取を行うことを目的に,しんかい6500による潜航調査,海底地形調査が行われた.本航海では計7回の潜調査が実施され,うち,沖大東海嶺基部南向き崖(6K#1760),沖大東海嶺頂部(6K#1761),沖大東海底崖尾根南部の北向き斜面(6K#1765),沖大東海底崖南方(6K#1766)で堆積物が採取された.本研究では,これらの堆積物の肉眼記載,スミアスライド観察およびそこに含まれている微化石の分析を行うことでその特徴を把握することを目的に研究を行った.また,2022年6月14日から7月2日に行われたYK22-11S航海にて西フィリピン海盆および九州パラオ海嶺でも潜航調査が行われている.YK24-05S航海で採取された堆積物の比較としてCBFリフトー九州パラオ海嶺(6K#1643,6K#1644,6K1646)で採取された堆積物の分析も行ったので報告する.YK24-05S航海では4地点で堆積物試料が採取された.底質の特徴としては,6K#1760(着底水深4584 m)では,沖大東海嶺基部の崖下で泥質堆積物が見られた.また,礫が点在しており,中腹~上部にかけて塊状のブロックが確認できた. 6K#1761(着底水深4200 m)では,塊状の岩石とそれを覆う堆積物が見られ,斜面上部ではクラストやノジュールが含まれていた.6K#1765(着底水深6228 m)では,沖大東海底崖下でマンガンノジュールが赤土に混じって分布していた.そして斜面に近づくにつれ角礫岩が見られ,マンガンが被覆していた.6K#1766(着底水深5865 m)では,西フィリピン海盆北部で海洋地殻断面の観察を目的に潜航・試料採取が行われ,斜面は主に酸化マンガンノジュールと軟泥堆積物が確認できた.上記4地点から得られた堆積物はdark brownのシルトから粘土であり,6K#1760,6K#1761潜航の堆積物試料には1 mm程度のパミスが含まれていたおり,微化石分析では珪藻と放散虫が確認できた.一方,YK22-11S航海では3地点から堆積物試料が得られている.6K#1643(着底水深4768 m)は,CBFリフト南斜面で調査が行われ,深度4600 m以下の斜面は酸化マンガンに包まれた砕屑性堆積物が確認され,斜面上部は枕状溶岩からなる.6K#1644(着底水深4952 m)では,斜面の露頭がマンガンクラストに覆われており,泥質堆積物の上に崩れた軽石や礫が分布していた.6K#1646(着底水深5378 m)はCBFリフト南向きの崖で調査が行われた.CBF北部では露頭は厚いマンガンクラストと泥質堆積物に覆われている.緩斜面の下部は泥とマンガンノジュール,火山岩片などの黒い角礫片で構成されており,斜面上部は泥質堆積物からなっている.以上3地点で採取された堆積物はdark brownのシルトから粘土で,細かいマンガン欠片が堆積物に混在していた.そのうち6K#1644から珪藻と放散虫が確認できたが,他2地点の試料からは産出がほとんど確認できなかった.両航海で見られた珪藻種としては,Ethmodiscus spp.およびPseudoeunotia doliolus (Wall.) Grunowが確認できた.引用文献:樋口ほか(2015),大東海嶺群海域海盆の形成・堆積史―北大東海盆,奄美三角海盆,南大東海盆の比較―.地学雑誌,124(5), 829-845.
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