講演情報

[G-P-43]船上音響観測としんかい6500の海底観察にもとづくプチスポット火山フィールドの特定

*町田 嗣樹1、金子 純二2、猪瀬 和広3、平野 直人4 (1. 千葉工業大学、2. 海洋研究開発機構、3. ビジオテックス株式会社、4. 東北大学)
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キーワード:

プチスポット、音響探査、南鳥島

プチスポット火山の活動は、プレート下に存在する二酸化炭素に富むマグマが、プレートの屈曲に伴って生じた亀裂に沿って噴出することによって発生する。このような噴火プロセスやマグマの特異性から、プチスポット火山活動は海洋への二酸化炭素の放出源となり得るだけでなく [1]、海洋プレートを下部から最表層の堆積物に至るまで改変させる可能性がある [2-5]。これらの現象がどの程度のインパクトを地球の物質循環に与えるかが重要であるが、それを検討するうえで制約となるのは、「プチスポットマグマの活動が、どの程度の空間的な広がりをもって起こるのか?」を定量的に特定することである。
現在までに、例えば北西太平洋では、4つの海域においてプチスポット火山の活動が報告されている [5]。いずれの海域においても、個々の火山体の大きさは他の火成活動で形成されるものに比べ桁違いに小さい [6]。ただし特徴的な点は、複数の火山体がある決まった範囲内のみに分布しクラスターとなって、いわゆる「プチスポット火山フィールド」を形成していることである。さらに、プチスポット溶岩が堆積層内に水平方向に貫入する様子や [7]、地形的に高まりを形成していない平坦な深海底においても溶岩の露頭が存在すること [8] が報告されている。つまり、プチスポット火山フィールドは、海底地形として認識できる範囲外にも広がっていることを意味する。
一方、筆者らは、2016年4月に行われたYK16-01航海による南鳥島沖でのマンガンノジュール調査の際に、ノジュール密集域であろうと考え潜航調査を実施した2か所の深海平原においてプチスポット溶岩の露頭を発見し、溶岩の採取に成功した。この時に得られた知見は、MBESにおいて強い後方散乱強度を示し、船上サブボトムプロファイラー(SBP)により堆積物の堆積が確認できない(音響的に不透明な層が海底面に露出する)深海平原が、プチスポット溶岩分布域であり、その近傍の小海丘が火山であったことである。つまり、船上MBESと船上SBPの組み合わせによりプチスポット火山フィールドの分布範囲を特定することができる可能性があることを見出した。
以上の知見を踏まえて本研究では、2013年から2019年にかけて行われた南鳥島の南東方沖における船上SBP観測(全11航海)のデータをコンパイルし、海底下の堆積構造および音響不透明層の分布を明らかにした。さらに、2018年・2019年に行われた「しんかい6500」の潜航によって、船上SBP観測で判明したプチスポット火山フィールドの範囲と考えられる領域の東西南北の境界部をそれぞれ観察し、プチスポット溶岩の分布を確認した。本講演では、MBES/SBP音響データから明らかになった南鳥島海域のプチスポットに特徴的な火山の形状および海底の音響特性(反射強度と海底下音響構造)の詳細と、それによって特定されたプチスポット火山フィールドの分布範囲、およびフィールド内でのプチスポット溶岩の産状などを紹介する。
[1] Okumura & Hirano, Geology, 2013; [2] Pilet et al., Nat. Geosci, 2016; [3] Akizawa et al., Mar. Geol., 2022; [4] Mikuni et al., Solid Earth, 2024; [5] Hirano & Machida, Comms. Earth & Env., 2023; [6] Hirano et al., Basin Res., 2008; [7] Fujiwata et al., GRL, 2007; [8] Sato et al., Int. Geol. Rev., 2017.

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