講演情報
[T11-P-1]一般市民の防災リテラシー向上に向けた地方公設試験研究機関の取り組み(その3)
*小田原 啓1、本多 亮1、安部 祐希1、石山 達也2、三宅 弘恵2、森川 信之3、松原 誠3 (1. 神奈川県温泉地学研究所、2. 東京大学地震研究所、3. 防災科学技術研究所)
キーワード:
防災リテラシー、活断層、地震防災、三浦半島
文部科学省では、令和5年度より3か年計画で「三浦半島断層群(主部/武山断層帯)における重点的な調査観測」(研究代表者:東京大学地震研究所 石山達也、代表・参加機関:東京大学地震研究所、防災科学技術研究所、神奈川県温泉地学研究所)が実施されており、温泉地学研究所はサブテーマ4「地域連携勉強会」を主として担当している。令和6年度は、自治体・ライフラインの防災担当者向けの地域連携勉強会を開催し、教職員向けアンケートを実施した。本講演ではその内容について報告する。
(1)自治体防災関係者・ライフライン関係者を対象とした地域連携勉強会の実施
令和6年7月26日(金)、横須賀市産業交流プラザにおいて、令和6年度地域連携勉強会を実施した。参加人数は21名で、所属機関は自治体・政府関係機関が8機関、ライフラインや公共交通機関が5機関であった。勉強会は、前半に各サブテーマの分担研究者から事業とその成果についての説明を行い、後半にパネルディスカッションの形で質問に対する回答を行った。質問は参加者から質問用紙の形で回収し、司会者が整理したうえで講演者に質問した。パネルディスカッションの際に提出された質問の総数は40で、ほぼすべての参加者から質問が提出された。文章にして書くことで、挙手による質問よりもハードルが低くなったためであると考えられる。また、終了後の理解度に関するアンケートでは、参加者の7割が理解できた・ある程度理解できたと回答した。しかしながら、改善が必要な点も挙げられており、令和7年度の地域連携勉強会では、挙げられた課題を可能な限り実現する必要がある。
(2)教育関係者を対象としたアンケート
現場のニーズを捉えた地域連携型の学習会や講演会等を企画することを目的とし、防災教育の現場における活断層や地震防災に対する認識や研究者に対するニーズ調査を行った。方法は、神奈川県教職員組合に協力を依頼し、同組合のメーリングリストを利用して、主に三浦半島やその周辺市町に勤務する教員に向けてアンケートのお願いを配布した。回答はGoogleフォームによって収集した。アンケートの回答期間は2025年7月~8月、回答数は557名であった。
回答者の勤務地は藤沢市(178名)、茅ケ崎市(160名)、鎌倉市(112名)、横須賀市(38名)の順に多かった。所属は小学校が458名、中学校が89名、その他(養護学校等)が10名であった。役職は、教諭が430名、総括教諭が80名、養護教諭が21名、その他(事務等)が26名であった。専門とする教科については、小学校教員は「なし」または「無回答」が多く、中学校教員では理科(34名)が最も多かった。アンケートの質問内容は次の4つを設定した。「設問1:回答者の属性に関する質問」「設問2:地震・活断層についての基礎知識を問う設問」「設問3:地震防災教育についての現状を問う設問」「設問4:本事業についての設問」。以下に主な設問とその回答傾向を示す。
(設問2-1)活断層の定義を知っていますか?
回答:正確に理解しているは1割弱。単語だけ知っているまたは知らないが3割。
(設問3-1) 生徒・児童に地震や活断層の話をする機会はありますか。(複数回答可)
回答:無いが半数。訓練で4割、授業では2割程度。
(設問3-4)実際の地震防災教育を進める上でアドバイザー(研究者)が必要と思いますか。
回答:思う、検討してみたいで7割。
(設問4-1)本事業で実施する研究・調査について、地震に備えるうえで特に重要と考えられるものは何ですか?(複数回答可)
回答:揺れの予測、活断層の位置、マグニチュード、繰り返し間隔の順に多い。
(設問4-4)そのほか地震防災教育を実施するうえで、情報発信や調査結果の提供の仕方などについて、研究者に希望することはありますか?ご自由にお書きください。
回答:自治体や教育委員会等にしっかりと情報提供を。教職員夏季研修に入れてほしい。授業の相談、出前授業。わかりやすい教材(動画、スライドデータなど)の発信。
本アンケートの結果では、正確に地震や活断層を理解し、授業等に取り入れている教員が約1割程度であるのに対して、全く知らないとの回答が約3割であった。研究者をアドバイザーとして必要(検討したいを含む)との回答が約7割であり、ニーズは確実に存在すると思われる。そのニーズは、教員向けの勉強会だけではなく、わかりやすい教材や資料とそれらへの簡単なアクセス方法が知りたいという傾向が見て取れる。どのような形で我々研究者が教育現場に情報を発信し、現場の教員と連携を取って子どもたちへの地震防災教育に繋げていくかを実践するために、2025年8月末に教職員向けの地域連携勉強会の開催を予定している。本講演ではその結果についても概報したい。
(1)自治体防災関係者・ライフライン関係者を対象とした地域連携勉強会の実施
令和6年7月26日(金)、横須賀市産業交流プラザにおいて、令和6年度地域連携勉強会を実施した。参加人数は21名で、所属機関は自治体・政府関係機関が8機関、ライフラインや公共交通機関が5機関であった。勉強会は、前半に各サブテーマの分担研究者から事業とその成果についての説明を行い、後半にパネルディスカッションの形で質問に対する回答を行った。質問は参加者から質問用紙の形で回収し、司会者が整理したうえで講演者に質問した。パネルディスカッションの際に提出された質問の総数は40で、ほぼすべての参加者から質問が提出された。文章にして書くことで、挙手による質問よりもハードルが低くなったためであると考えられる。また、終了後の理解度に関するアンケートでは、参加者の7割が理解できた・ある程度理解できたと回答した。しかしながら、改善が必要な点も挙げられており、令和7年度の地域連携勉強会では、挙げられた課題を可能な限り実現する必要がある。
(2)教育関係者を対象としたアンケート
現場のニーズを捉えた地域連携型の学習会や講演会等を企画することを目的とし、防災教育の現場における活断層や地震防災に対する認識や研究者に対するニーズ調査を行った。方法は、神奈川県教職員組合に協力を依頼し、同組合のメーリングリストを利用して、主に三浦半島やその周辺市町に勤務する教員に向けてアンケートのお願いを配布した。回答はGoogleフォームによって収集した。アンケートの回答期間は2025年7月~8月、回答数は557名であった。
回答者の勤務地は藤沢市(178名)、茅ケ崎市(160名)、鎌倉市(112名)、横須賀市(38名)の順に多かった。所属は小学校が458名、中学校が89名、その他(養護学校等)が10名であった。役職は、教諭が430名、総括教諭が80名、養護教諭が21名、その他(事務等)が26名であった。専門とする教科については、小学校教員は「なし」または「無回答」が多く、中学校教員では理科(34名)が最も多かった。アンケートの質問内容は次の4つを設定した。「設問1:回答者の属性に関する質問」「設問2:地震・活断層についての基礎知識を問う設問」「設問3:地震防災教育についての現状を問う設問」「設問4:本事業についての設問」。以下に主な設問とその回答傾向を示す。
(設問2-1)活断層の定義を知っていますか?
回答:正確に理解しているは1割弱。単語だけ知っているまたは知らないが3割。
(設問3-1) 生徒・児童に地震や活断層の話をする機会はありますか。(複数回答可)
回答:無いが半数。訓練で4割、授業では2割程度。
(設問3-4)実際の地震防災教育を進める上でアドバイザー(研究者)が必要と思いますか。
回答:思う、検討してみたいで7割。
(設問4-1)本事業で実施する研究・調査について、地震に備えるうえで特に重要と考えられるものは何ですか?(複数回答可)
回答:揺れの予測、活断層の位置、マグニチュード、繰り返し間隔の順に多い。
(設問4-4)そのほか地震防災教育を実施するうえで、情報発信や調査結果の提供の仕方などについて、研究者に希望することはありますか?ご自由にお書きください。
回答:自治体や教育委員会等にしっかりと情報提供を。教職員夏季研修に入れてほしい。授業の相談、出前授業。わかりやすい教材(動画、スライドデータなど)の発信。
本アンケートの結果では、正確に地震や活断層を理解し、授業等に取り入れている教員が約1割程度であるのに対して、全く知らないとの回答が約3割であった。研究者をアドバイザーとして必要(検討したいを含む)との回答が約7割であり、ニーズは確実に存在すると思われる。そのニーズは、教員向けの勉強会だけではなく、わかりやすい教材や資料とそれらへの簡単なアクセス方法が知りたいという傾向が見て取れる。どのような形で我々研究者が教育現場に情報を発信し、現場の教員と連携を取って子どもたちへの地震防災教育に繋げていくかを実践するために、2025年8月末に教職員向けの地域連携勉強会の開催を予定している。本講演ではその結果についても概報したい。
