講演情報
[T11-P-4]八街市・富里市周辺に見られる地盤沈下の時空間変化
*荻津 達1、八武崎 寿史1 (1. 千葉県環境研究センター)
キーワード:
地盤沈下、InSAR
はじめに
地盤沈下は地下水等の汲み上げや自然圧密等に起因すると考えられており、その要因を特定しそれぞれの寄与率を明らかにすることは地盤沈下の防止を考える上で非常に重要である。地盤沈下の状況は、要因となる事象や地下の地質構造を反映していると考えられるため、要因を特定するための第一歩として、地盤沈下を時空間的に正確に把握することが重要となる。
近年、千葉県の八街市や富里市周辺では、3箇所の局所的な沈下の中心を持つ特徴的な地盤沈下が確認されている(荻津・八武崎, 2019, 2021)。本研究では当該地域における近年の地盤沈下について、精密水準測量結果に併せてInSAR時系列解析により明らかになった時空間変化について報告を行う。
地盤沈下の概要
精密水準測量の結果(千葉県, 1976-2024)によると、1年間変動量図では1996年頃からは八街市に中心をもつ沈下が確認されはじめ、2000年代の始めからは沈下が富里市付近でも明瞭になっている。この傾向は継続し2019年には佐倉市と八街市の境界付近に、2020年には富里市の芝山町側境界付近に沈下の中心が確認できるようになるが、その後2023年はこの地域全体で沈下量が大きくなっており沈下の中心は1箇所となっている。5年間累積変動量分布でも3箇所の沈下の中心を確認することができる。2018年-2022年に8cm以上沈下した地域は佐倉市から芝山町まで東北東・西南西方向に伸長した長さ約10km幅約3.5kmの範囲に分布しており、佐倉市と八街市の境界付近、八街市と富里市の境界付近及び八街市の芝山町との境界付近の合計3箇所に沈下の中心が確認できる。
InSAR時系列解析
対象地域の地盤沈下について、詳細に時空間変化を把握することを目的にInSAR時系列解析を行った。2015年3月から2025年3月までに欧州宇宙機関(ESA)のSentine-lAで取得されたデータを用いてStaMPS/MTI(Hooper et al., 2012)によりPSInSAR解析を行った。なお、今回の解析結果についてはLOSであり、垂直方向の変動量ではない。
1年間変動量図では精密水準測量の結果よりも詳細な沈下の状況が確認でき、概ね全期間をとおして3箇所の沈下の中心が確認できた。また、対象期間の初期では南西側の沈下が顕著であるが、時間の経過とともに北東側の沈下が大きくなる傾向が確認できると同時に時間の経過に伴い3箇所の沈下の境界が不明瞭となっている。
また、前述の地域周辺では、富里市北部から成田市南部に伸びる地域及び富里市北東部から成田市と芝山町の境界付近に伸びる地域で、精密水準測量ではとらえきれていない沈下が確認されている(荻津・八武崎, 2021)。この沈下についても引き続き確認され、特に富里市北部から成田市南部に伸びる地域については時間の経過とともに沈下の傾向が強まっている。
まとめ
八街市・富里市周辺の地盤沈下について、InSAR時系列解析により詳細な時空間変化が明らかとなった。今後は引き続き地盤変動の把握を行うとともに、地下の地質構造や周辺での地下水等の利用状況などを併せてその要因解明を進めることが必要である。
引用文献
千葉県, 1976-2024, 精密水準測量成果.
Hooper, A., D. Bekaert, K. Spaans, and M. Arikan, 2012, Recent advances in sar interferometry time series analysis for measuring crustal deformation. Tectonophysics, 514-517, 1–13.
荻津達・八武崎寿史, 2019, 日本地質学会第126年学術大会講演要旨.
荻津達・八武崎寿史, 2021, 日本地質学会第128年学術大会講演要旨.
地盤沈下は地下水等の汲み上げや自然圧密等に起因すると考えられており、その要因を特定しそれぞれの寄与率を明らかにすることは地盤沈下の防止を考える上で非常に重要である。地盤沈下の状況は、要因となる事象や地下の地質構造を反映していると考えられるため、要因を特定するための第一歩として、地盤沈下を時空間的に正確に把握することが重要となる。
近年、千葉県の八街市や富里市周辺では、3箇所の局所的な沈下の中心を持つ特徴的な地盤沈下が確認されている(荻津・八武崎, 2019, 2021)。本研究では当該地域における近年の地盤沈下について、精密水準測量結果に併せてInSAR時系列解析により明らかになった時空間変化について報告を行う。
地盤沈下の概要
精密水準測量の結果(千葉県, 1976-2024)によると、1年間変動量図では1996年頃からは八街市に中心をもつ沈下が確認されはじめ、2000年代の始めからは沈下が富里市付近でも明瞭になっている。この傾向は継続し2019年には佐倉市と八街市の境界付近に、2020年には富里市の芝山町側境界付近に沈下の中心が確認できるようになるが、その後2023年はこの地域全体で沈下量が大きくなっており沈下の中心は1箇所となっている。5年間累積変動量分布でも3箇所の沈下の中心を確認することができる。2018年-2022年に8cm以上沈下した地域は佐倉市から芝山町まで東北東・西南西方向に伸長した長さ約10km幅約3.5kmの範囲に分布しており、佐倉市と八街市の境界付近、八街市と富里市の境界付近及び八街市の芝山町との境界付近の合計3箇所に沈下の中心が確認できる。
InSAR時系列解析
対象地域の地盤沈下について、詳細に時空間変化を把握することを目的にInSAR時系列解析を行った。2015年3月から2025年3月までに欧州宇宙機関(ESA)のSentine-lAで取得されたデータを用いてStaMPS/MTI(Hooper et al., 2012)によりPSInSAR解析を行った。なお、今回の解析結果についてはLOSであり、垂直方向の変動量ではない。
1年間変動量図では精密水準測量の結果よりも詳細な沈下の状況が確認でき、概ね全期間をとおして3箇所の沈下の中心が確認できた。また、対象期間の初期では南西側の沈下が顕著であるが、時間の経過とともに北東側の沈下が大きくなる傾向が確認できると同時に時間の経過に伴い3箇所の沈下の境界が不明瞭となっている。
また、前述の地域周辺では、富里市北部から成田市南部に伸びる地域及び富里市北東部から成田市と芝山町の境界付近に伸びる地域で、精密水準測量ではとらえきれていない沈下が確認されている(荻津・八武崎, 2021)。この沈下についても引き続き確認され、特に富里市北部から成田市南部に伸びる地域については時間の経過とともに沈下の傾向が強まっている。
まとめ
八街市・富里市周辺の地盤沈下について、InSAR時系列解析により詳細な時空間変化が明らかとなった。今後は引き続き地盤変動の把握を行うとともに、地下の地質構造や周辺での地下水等の利用状況などを併せてその要因解明を進めることが必要である。
引用文献
千葉県, 1976-2024, 精密水準測量成果.
Hooper, A., D. Bekaert, K. Spaans, and M. Arikan, 2012, Recent advances in sar interferometry time series analysis for measuring crustal deformation. Tectonophysics, 514-517, 1–13.
荻津達・八武崎寿史, 2019, 日本地質学会第126年学術大会講演要旨.
荻津達・八武崎寿史, 2021, 日本地質学会第128年学術大会講演要旨.
