講演情報

[T5-P-3]IODP第405次航海(JTRACK)にて得られた日本海溝の物性測定結果

*神谷 奈々1、Tamara N. Jeppson2、Matt Ikari3、Mai-Linh Doan4、Jonathan Ford5、Huiyun Guo6、Ron Hackney7、Maria Jose Jurado8、宮川 歩夢9、Pei Pei4、Srisharan Shreedharan10、小平 秀一11、Marianne Conin12、Patrick Fulton13、Jamie Kirkpatrick14、Christine Regalla15、氏家 恒太郎16、前田 玲奈11、奥津 なつみ11、IODP第405次航海 研究乗船者 (1. 京都大学、2. USGS、3. MARUM、4. Univ. Grenoble Alpes、5. OGS、6. Univ. California Santa Cruz、7. The Australian National Univ.、8. Geosciences Barcelona、9. 産業技術総合研究所、10. Uta State Univ.、11. 海洋研究開発機構、12. Univ. Lorraine、13. Cornell Univ.、14. Univ. Nevada-Reno、15. Northern Arizona Univ.、16. 筑波大学)
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キーワード:

岩石物性、JTRACK、東北地方太平洋沖地震、日本海溝

 2024年9月から12月にかけて,東北地方太平洋沖地震の震源域においてIODP Expedition 405(JTRACK)が実施された.本プロジェクトでは,地震後の断層固着回復過程,プレート境界断層浅部の滑りメカニズム,沈み込み帯の物質特性がプレート境界断層に与える影響の解明を目的とし,日本海溝の沈み込み先端部(Site C0019)と沈み込む前の太平洋プレート上(Site C0026)で掘削が行われた.2012年に沈み込み先端部(Site C0019)にて実施されたIODP Expedition 343 (JFAST) では,掘削同時検層(LWD)データが約850 mbsfまで連続的に取得されたほか,浅部(約170-190 mbsf)およびプレート境界断層付近(約600-850 mbsf)の区間で断続的にコア試料が採取された.今回のJTRACKでは,Site C0019にて約850 mbsf,Site C0026にて約300 mbsfまでLWDデータとコア試料が連続的に取得されている.本発表では,JTRACKにて船上で実施された物性の測定結果を報告する.船上では,マルチセンサーコアロガー(MSCL)を用いて密度,初磁化率,P波速度,自然γ線を測定したほか,半割したコア試料を用いて,密度,間隙率,弾性波速度,比抵抗,熱伝導率を測定した.また,ベーンせん断試験およびペネトロメーターを用いて岩石強度を得た.Site C0019において,間隙率は,800 mbsf付近まで70%から40%へと深度増加に伴って減少し,プレート境界断層より下部では深度増加に伴い増加傾向となった.弾性波速度および比抵抗は,深度増加に伴う増加傾向を示し,密度の増加および間隙率の減少と整合的な傾向となった.熱伝導率は,1.0±0.5 mW/m2の間で変化し,密度および間隙率の変化と整合的な深度増加に伴う増加傾向を示した.ベーンせん断強さは,100 mbsf以浅で測定が行われ,概ね深度に伴う増加傾向を示し,約30 mbsf付近の亀裂密度が大きい区間では,強度の低下が確認された.Site C0026では,間隙率は60-80%の間で変化し,約200 mbsf以深で深度に伴う明瞭な減少傾向が確認された.弾性波速度と比抵抗は,深度増加に伴う増加傾向を示し,特に,鉛直方向での比抵抗の増加が著しい.熱伝導率は,100 mbsf以深でわずかに深度に伴う増加傾向を示した. ベーンせん断強さは,100 mbsf以浅で測定され,深度増加に伴って大きくなる傾向を示した.間隙率について,太平洋プレート上の別の掘削データと比較すると,Site C0026より北東に位置するSite 436では,Site C0026とほぼ同様の分布を示すのに対し,Shatsuky Rise北方のSite 1179では,間隙率が全体として高くなる傾向が見られた.