講演情報
[T5-P-5]宮崎県延岡市北方地域における掘削・地表調査、岩相解析速報
*矢部 優1、木口 努1、大坪 誠1 (1. 産業技術総合研究所 地質調査総合センター)
キーワード:
付加体、石英脈、スロー地震
産業技術総合研究所地質調査総合センター活断層・火山研究部門では,宮崎県延岡市北方地域において,2024年に地殻変動観測施設整備のために3本の孔井掘削(掘削長: 250m(孔1),200m(孔2), 30m(孔3))を実施した.本掘削地点周辺には四万十帯渡川層が分布している.また,本掘削地点の北西部には四万十帯槙峰層が分布している.本掘削地点より東部の海岸沿いに分布する槙峰層では,Ujiie et al. (2018) が石英脈濃集帯を見出してスロー地震の痕跡であると提案している.槙峰層については,内陸側での被熱温度は,海岸沿いのそれよりも高く,沈み込んだ石英脈を含む泥岩と玄武岩の間で交代反応が生じている(Ujiie et al., 2022).本発表では,掘削で得られた検層データ・岩石試料の概要と,周辺地域で実施した地表踏査の結果について速報として報告する.
掘削地点は北方総合運動公園内に位置する.掘削地点周辺には阿蘇-4A火砕流堆積物が広く分布し(5万分の1地質図「延岡」(奥村ほか,2010)),周辺の地表調査では五ヶ瀬川沿いには多く認められる.その構造的下位の渡川層は泥岩を主体とする泥岩砂岩互層であり,鱗片状の劈開をなすことがあるほか,礫状泥岩を含む.これらの産状は掘削地点近傍および走向方向への延長する露頭で認められる.
掘削では,孔1の最深部において20 m程度のコア試料を取得し,その他の区間ではカッティングス試料を取得した.また,孔1と孔2において,ガンマ線,地震波速度,比抵抗孔壁画像などの種目の検層を実施した.取得されたカッティングス試料の記載によると,孔1・2両地点において,表層20m深までは玉石まじりの粘土が分布し,20 m深から200 m深にかけて泥岩を主体とする泥岩砂岩互層(渡川層の特徴と一致)が分布していた. 掘削地点の北西部に分布する槙峰層における地表調査では, Ujiie et al. (2022)が報告する交代反応の生じた泥岩玄武岩互層に注目した.当該地層と類似する他の露頭の探索を試みたが,石英脈を含む泥岩と玄武岩の互層を産する露頭は確認できたものの,そこでは明確な交代反応は認められなかった.5万分の1地質図「諸塚山」(今井ほか, 1982)によると,交代反応が生じている地層のすぐ構造的上位には衝上断層が存在しており,当該地層の露出は走向方向に連続しないと考えられる.
引用文献
Ujiie et al. (2018) Geophyiscal Research Letters. https://doi.org/10.1029/2018GL078374
Ujiie et al. (2022) Geochemistry, Geophysics, Geosystems. https://doi.org/10.1029/2022GC010569
掘削地点は北方総合運動公園内に位置する.掘削地点周辺には阿蘇-4A火砕流堆積物が広く分布し(5万分の1地質図「延岡」(奥村ほか,2010)),周辺の地表調査では五ヶ瀬川沿いには多く認められる.その構造的下位の渡川層は泥岩を主体とする泥岩砂岩互層であり,鱗片状の劈開をなすことがあるほか,礫状泥岩を含む.これらの産状は掘削地点近傍および走向方向への延長する露頭で認められる.
掘削では,孔1の最深部において20 m程度のコア試料を取得し,その他の区間ではカッティングス試料を取得した.また,孔1と孔2において,ガンマ線,地震波速度,比抵抗孔壁画像などの種目の検層を実施した.取得されたカッティングス試料の記載によると,孔1・2両地点において,表層20m深までは玉石まじりの粘土が分布し,20 m深から200 m深にかけて泥岩を主体とする泥岩砂岩互層(渡川層の特徴と一致)が分布していた. 掘削地点の北西部に分布する槙峰層における地表調査では, Ujiie et al. (2022)が報告する交代反応の生じた泥岩玄武岩互層に注目した.当該地層と類似する他の露頭の探索を試みたが,石英脈を含む泥岩と玄武岩の互層を産する露頭は確認できたものの,そこでは明確な交代反応は認められなかった.5万分の1地質図「諸塚山」(今井ほか, 1982)によると,交代反応が生じている地層のすぐ構造的上位には衝上断層が存在しており,当該地層の露出は走向方向に連続しないと考えられる.
引用文献
Ujiie et al. (2018) Geophyiscal Research Letters. https://doi.org/10.1029/2018GL078374
Ujiie et al. (2022) Geochemistry, Geophysics, Geosystems. https://doi.org/10.1029/2022GC010569
