講演情報
[T5-P-7]九州北部の秋吉帯の境界断層の地質構造とテクトニックセッティング
*市澤 佑太1、下松 匠2、浜橋 真理3、坂口 有人3 (1. 山口大学理学部地球圏システム科学科、2. 中央開発株式会社、3. 山口大学大学院創成科学研究科)
キーワード:
境界断層、ペルム紀付加体
〈目的〉
ペルム紀付加体である秋吉帯の地体構造区分の境界断層の詳細な構造は明らかになっていない。長門構造体ではペルム紀付加体と300Ma片岩類との間で見られるスラストが推定されているものの(椛島ほか、1993)、断層露頭を直接確認できておらずその詳細な構造は明らかになっていない。本研究では西南日本内帯の中で、ナップの一部を構成していると考えられている境界断層が九州北部柄杓田地域で見られるため、断層周辺のマッピングを行い詳細な岩相や構造を明らかにする。上盤や下盤で見られる変形特性を調査し、それぞれの特徴を明らかにする。境界断層の構造解析を行い断層コアやダメージゾーンを記載する。
〈地質概要〉
企救半島は関門層群に不整合に覆われる呼野層群が分布している(柳瀬、磯崎、1993)。柄杓田東部の海岸では、秋吉帯とみなされるcoherent unitと強い変形構造を含むchaotic unit が分布している。
〈結果〉
上盤
上盤を構成する主な岩石は頁岩、泥岩、砂岩であり、安山岩岩脈や凝灰質砂岩、ブロック状のチャートも見られる。走向傾斜はE-W,NW-SE走向、傾斜は20-60°北傾斜である。一部褶曲の影響によって南傾斜が見られる。上盤ではブーディンや褶曲で特徴づけられており、ブーディンの厚さは1mほどの大きさがよく見られる。褶曲軸は垂直でヒンジラインは水平でE-W方向のものが多い。ヒンジ上では約10mの大きさになるブーディン構造が見られる。また、翼部ではフレクシュラルスリップも確認でき、本地域は平均延性度が低い状態で変形したと考えられる。上盤の頁岩の鏡下観察では、主に微細な石英、斜長石から構成されており、わずかに緑泥石や方解石も含まれている。
境界断層
境界断層の断層コアの厚さは約1.9mで、主にカタクレーサイトから成り、層厚0.5mmの薄いウルトラカタクレーサイトも見られる(下松、2017)。走向傾斜はE-W走向、60°北傾斜である。断層コアには脆性破壊によって破壊された石英粒子が見られ、さらにその粒子を断層によって切断されている様子が確認できることから、複数回の脆性破壊活動が起きたと考えられる。ダメージゾーンは上盤側でのみ約80mにわたって発達している。そこでは小断層で特徴づけられ、上盤の小断層の剪断センスは逆断層センスと横ずれ断層センスの小断層が発達している。横ずれ断層を逆断層が切断しているケースが多く見られ、横ずれ断層の後に逆断層が活動したと考えられる。
下盤
下盤を構成する主な岩石は泥質片岩とチャートであり、玄武岩や緑色岩、石灰岩も見られる。走向傾斜はE-W,NW-SE走向、傾斜は境界断層付近では60°北傾斜であるが、境界断層から離れるにつれ20°北傾斜へと、緩傾斜になっている。下盤の泥質片岩は片理面や石英脈、ちりめんじわ劈開で特徴づけられており、石英脈のなかにレンズ状の石灰岩が入っている様子も見られる。ダメージゾーンは見られず、褶曲構造も顕著ではない。下盤の泥質片岩の鏡下観察では、主に石英、斜長石、方解石から構成されており、緑泥石、緑簾石、紅簾石、磁鉄鉱が含まれている。
〈結論〉
境界断層の上盤はブーディンや褶曲構造が発達しており、未固結変形が主体である。下盤の特徴として片理面や石英脈、ちりめんじわ劈開などが見られ、上盤よりも高い変成作用と供に延性変形を被っている。境界断層はくり返し破砕されたカタクレーサイトからなり、断層コアの厚さは約1.9m、ダメージゾーンの厚さが約80mである。(下松、2017)では一部に0.5mmほどの薄いウルトラカタクレーサイトがあり、部分溶融が確認されたことから、ナップ境界断層は地殻浅部で形成された震源断層であると考えられる。
〈引用文献〉
椛島太郎・磯崎行雄・西村祐二郎, 1993, 長門構造体, 300Ma低温高圧型片岩類と弱変成ペルム紀付加体間の境界スラストの発見, 地質学雑誌第99巻第11号877-880ページ, 880.下松匠, 2017, 秋吉帯呼野層群東部の熱構造と断層の性状, 山口大学理学部地球圏システム科学科卒業論文, 30-31.柳瀬晶・磯崎行雄, 1993, 九州北部企救半島のペルム紀付加体の岩相・層序および放散虫年代, 地質学雑誌第99巻第4号285-288ページ, 288.
ペルム紀付加体である秋吉帯の地体構造区分の境界断層の詳細な構造は明らかになっていない。長門構造体ではペルム紀付加体と300Ma片岩類との間で見られるスラストが推定されているものの(椛島ほか、1993)、断層露頭を直接確認できておらずその詳細な構造は明らかになっていない。本研究では西南日本内帯の中で、ナップの一部を構成していると考えられている境界断層が九州北部柄杓田地域で見られるため、断層周辺のマッピングを行い詳細な岩相や構造を明らかにする。上盤や下盤で見られる変形特性を調査し、それぞれの特徴を明らかにする。境界断層の構造解析を行い断層コアやダメージゾーンを記載する。
〈地質概要〉
企救半島は関門層群に不整合に覆われる呼野層群が分布している(柳瀬、磯崎、1993)。柄杓田東部の海岸では、秋吉帯とみなされるcoherent unitと強い変形構造を含むchaotic unit が分布している。
〈結果〉
上盤
上盤を構成する主な岩石は頁岩、泥岩、砂岩であり、安山岩岩脈や凝灰質砂岩、ブロック状のチャートも見られる。走向傾斜はE-W,NW-SE走向、傾斜は20-60°北傾斜である。一部褶曲の影響によって南傾斜が見られる。上盤ではブーディンや褶曲で特徴づけられており、ブーディンの厚さは1mほどの大きさがよく見られる。褶曲軸は垂直でヒンジラインは水平でE-W方向のものが多い。ヒンジ上では約10mの大きさになるブーディン構造が見られる。また、翼部ではフレクシュラルスリップも確認でき、本地域は平均延性度が低い状態で変形したと考えられる。上盤の頁岩の鏡下観察では、主に微細な石英、斜長石から構成されており、わずかに緑泥石や方解石も含まれている。
境界断層
境界断層の断層コアの厚さは約1.9mで、主にカタクレーサイトから成り、層厚0.5mmの薄いウルトラカタクレーサイトも見られる(下松、2017)。走向傾斜はE-W走向、60°北傾斜である。断層コアには脆性破壊によって破壊された石英粒子が見られ、さらにその粒子を断層によって切断されている様子が確認できることから、複数回の脆性破壊活動が起きたと考えられる。ダメージゾーンは上盤側でのみ約80mにわたって発達している。そこでは小断層で特徴づけられ、上盤の小断層の剪断センスは逆断層センスと横ずれ断層センスの小断層が発達している。横ずれ断層を逆断層が切断しているケースが多く見られ、横ずれ断層の後に逆断層が活動したと考えられる。
下盤
下盤を構成する主な岩石は泥質片岩とチャートであり、玄武岩や緑色岩、石灰岩も見られる。走向傾斜はE-W,NW-SE走向、傾斜は境界断層付近では60°北傾斜であるが、境界断層から離れるにつれ20°北傾斜へと、緩傾斜になっている。下盤の泥質片岩は片理面や石英脈、ちりめんじわ劈開で特徴づけられており、石英脈のなかにレンズ状の石灰岩が入っている様子も見られる。ダメージゾーンは見られず、褶曲構造も顕著ではない。下盤の泥質片岩の鏡下観察では、主に石英、斜長石、方解石から構成されており、緑泥石、緑簾石、紅簾石、磁鉄鉱が含まれている。
〈結論〉
境界断層の上盤はブーディンや褶曲構造が発達しており、未固結変形が主体である。下盤の特徴として片理面や石英脈、ちりめんじわ劈開などが見られ、上盤よりも高い変成作用と供に延性変形を被っている。境界断層はくり返し破砕されたカタクレーサイトからなり、断層コアの厚さは約1.9m、ダメージゾーンの厚さが約80mである。(下松、2017)では一部に0.5mmほどの薄いウルトラカタクレーサイトがあり、部分溶融が確認されたことから、ナップ境界断層は地殻浅部で形成された震源断層であると考えられる。
〈引用文献〉
椛島太郎・磯崎行雄・西村祐二郎, 1993, 長門構造体, 300Ma低温高圧型片岩類と弱変成ペルム紀付加体間の境界スラストの発見, 地質学雑誌第99巻第11号877-880ページ, 880.下松匠, 2017, 秋吉帯呼野層群東部の熱構造と断層の性状, 山口大学理学部地球圏システム科学科卒業論文, 30-31.柳瀬晶・磯崎行雄, 1993, 九州北部企救半島のペルム紀付加体の岩相・層序および放散虫年代, 地質学雑誌第99巻第4号285-288ページ, 288.
