講演情報

[T18-O-4]令和6年能登半島地震(Mj7.6)に伴う河川を遡上した津波の痕跡:能登町九里川尻川の例

*岡田 里奈1、梅田 浩司1、茂木 勁吾1 (1. 弘前大学)
PDFダウンロードPDFダウンロード

キーワード:

能登半島地震、津波堆積物、河川遡上型津波

令和6年1月1日16時10分に石川県能登地方においてマグニチュード7.6の地震が発生した.この地震では能登地方の広い範囲で震度6弱以上の揺れ,北海道から九州にかけての日本海沿岸を中心に津波が観測された.地震直後の空中写真判読では,半島の広範囲で津波の浸水が認められ,その後の調査によって4m以上の津波高が確認された地域もあった.これまで地震津波が河川を遡上し,陸域の浸水範囲よりさらに内陸で氾濫し,堆積物を形成する事例が報告されているが,河川の堤外地の堆積物の事例の報告はそれほど多くない.また,陸域に比べて河道で堆積した津波堆積物は,その後の流水による侵食や再堆積,上流から供給された砕屑粒子によって覆われるなど,津波堆積物としての識別が困難となる.
 本研究では2月上旬と下旬および4月上旬の3回にわたって調査を行い,地震前後の空中写真を参考に九里川尻川の中州やポイントバーにおいて河川を遡上した津波によって運ばれたと考えられる堆積物を確認している.また,河口付近に形成されていた河口洲が地震後には消失していた.現地においては層相観察,室内で顕微鏡を用いた砕屑粒子の記載,粒度分析,珪藻化石分析などを実施し,河川遡上津波による堆積物について詳細に考察した.九里川尻川は石川県鳳珠郡能登町を流れる二級河川である.能登半島地震に伴い遡上した津波は,空中写真判読および現地調査によって少なくとも河口から1.2㎞以上に及ぶ.調査に際しては,河口から0.8 km~1.2 kmの範囲の中州やポイントバーに堆積した試料をショベルによるピット掘削およびジオスライサーを用いて26か所で採取を行った.
 遡上津波によって運ばれた堆積物は,色調,粒度,堆積構造,植物片や貝殻片の有無などからUnit 1~3に区分した.Unit 1は旧河床の直上の堆積物であり,砂粒~粗粒砂サイズで淘汰が悪く,円礫を含む.全般的に貝殻片を多く含んでいる.すべてのコアで確認することができず,河口から0.8 km付近のポイントバーでみられる.Unit 2は砂粒~粗粒砂サイズで上方細粒化が認められる.多くの地点で確認できたが,分布に規則性がみられなかった.Unit 3は全地点で確認でき,淘汰の良い,灰色の細~中粒砂で平行葉理が発達している.層厚が30㎝以上を超える地点もあった.それぞれのUnit境界には明瞭な侵食面が認められる.発表では津波の遡上経路や,各Unitの堆積物の給源,堆積プロセスについて報告する予定である.

コメント

コメントの閲覧・投稿にはログインが必要です。ログイン