講演情報

[T18-O-8]2024年能登半島地震で発生した砂丘斜面でのランドスライド: 内灘砂丘でのケース

*永田 秀尚1、加藤 靖郎2、大丸 裕武3、居川 信之4、高見 幸恵2 (1. (有)風水土、2. 川崎地質(株)、3. 石川県立大学、4. (株)エイト日本技術開発)
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キーワード:

2024年能登半島地震、内灘砂丘、液状化、ランドスライド、フロースライド

2024年能登半島地震によって,震源からかなり離れたところでも液状化が発生した.旧河道のみならず,日本海沿岸に発達する海岸砂丘の潟湖側でも発生したことが特徴である.本講演では石川県の内灘砂丘,河北潟沿岸で発生した液状化によるランドスライドについて報告する.
地形地質的背景:内灘砂丘は金沢市から内灘町,かほく市にかけて,長さ20km,幅1km,最大高さ60mに及ぶ長大なもので,その陸側の潟湖として河北潟がある.河北潟は江戸時代から小規模な埋立ての後,1960年代からの大規模な干拓事業によりそのほとんどが干陸化された.この際の築堤材料として砂丘潟側の砂が切土され使用された1).このような経緯により,砂丘から河北潟にかけて,以下の地形が区分される.砂丘本体-切土斜面-切土平坦面-沿岸緩斜面-埋立地-承水路-締切堤防-干拓地.公表されたボーリング柱状図2)によれば潟側の砂丘砂は標高-5~-10mまで分布し,表層の5,6mはN<5の緩い中粒-細粒砂である.河北潟の堆積物は厚さ20m以上のシルト-粘性土である.地下水深は1m前後と浅い.
ランドスライド:震度5強の地震動による液状化により,切土平坦面から沿岸緩斜面に相当する狭長な範囲で顕著な地盤の変状が発生した.変状は無秩序なものではなく,幅300m,長さ150m程度までの横長の土塊がまとまって移動しており,その意味でランドスライドである.弧状の滑落崖は切土平坦面にあることが多く,側崖に相当するものがほぼ見られないことも形態的な特徴である.末端は沿岸緩斜面のほぼ下端を走る県道沿いに出現することが多い.このことから,地すべり体の厚さはせいぜい2,3mと薄いものと考えられ,想定されるすべり面の傾斜は1-2°ときわめて緩い.ある程度の厚さをもった液状化層3)がすべりに関与したことは当然予想できるが,詳細は今後の調査に待ちたい.
類似例と分類:内灘砂丘沿いの地震被害は寛文十一(1799)年金沢地震の際も発生した4).「砂が崩壊して家屋が埋没」とあるので液状化が発生したのだろうが,ランドスライドについては記述がない.地形地質条件が類似しているとみられる八郎潟西岸の砂丘では1983年日本海中部地震で多数の地すべりが報告されている5).今回発生したランドスライドは,その素材と運動様式に基づく分類6)ではフロースライドに相当するだろう.
文献1)北陸農政局(1985) 干拓の記. 2)国土地盤情報センター(2024) https://publicweb.ngic.or.jp/emergency-1/ 3)平ほか(2012) 地質雑,118,410-418. 4)寒川(1986) 地震,39,653-663. 5)山崎・粟田(1983) 地質ニュース,347,7-14. 6) Hungr et al. (2014) Landslides, 11, 167-194.

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