講演情報

[T14-O-2]沖縄島周辺の海底地質

*荒井 晃作1 (1. 産業技術総合研究所 地質調査総合センター)
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キーワード:

海洋地質、沖縄島、久米島、テクトニクス、沈み込み

産業技術総合研究所では,日本周辺海域の地質情報整備の一環として海洋地質図の作成を行っている.2008年度にスタートした沖縄周辺の海域地質学的研究(沖縄プロジェクト)は、海洋地質学的観点から,琉球弧及び周辺海域の形成史に関するデータの取得を系統的に行ってきた.沖縄プロジェクトでは,先ず沖縄島周辺から調査を開始し,その海底地質図は,荒井ほか(2015)荒井ほか(2018)荒井・井上(2022)として出版されている.本発表では沖縄島の成立に関して,海洋地質学的な調査から得られた成果をもとにして議論する.沖縄島を含む琉球諸島は琉球弧と呼ばれ,フィリピン海プレートがユーラシアプレートの下に沈み込んでいることによって形成された高まりの列にあたる.弧状に並ぶ島の列は,九州から台湾まで約1200 kmも連続する.そして,琉球弧の南東側にはプレートの沈み込み境界である水深7000 mにも達する南西諸島海溝が発達し,一方,島弧の北西側には水深2000 mに達する沖縄トラフ(舟状海盆)と呼ばれる活動的な背弧海盆が形成されている.沖縄プロジェクトで行った反射法音波探査は,音源として355cu.inchのGIガン(Sercel社製),受信部としてGeometrics社製の16チャンネルのストリーマケーブルを用いた.さらに,ロックコアラーやグラブ採泥及びドレッジによる固結・半固結試料の採取,及び微化石年代を基にして地質層序の検討を行った.
 沖縄島周辺の地質は,先新第三系とした音響基盤を,不整合面を境とする4つの堆積層が覆っている.産総研の調査では,島弧の周りの上部斜面の調査を密に行っているが(図),プレート沈み込みに伴うような圧縮応力を示すような断層や褶曲構造は認められず,むしろ島弧を横切る方向の正断層が支配的であった(Arai et al., 2018).沖縄島南東側の海溝軸に向かう斜面に沿って多数発達している海底谷は,この様な活動的な正断層が規定していると言える.一方,背弧側の沖縄トラフにも,多数の活断層が認められた.その多くは,島弧と平行な方向と,それとやや斜交する東西方向の走向の正断層の発達に分けられるが,沖縄トラフが活動的であることを示し,沖縄トラフに至る沖縄島背弧側の複雑な地形を規定している.また,中琉球と南琉球を境とする垂直変位量が2000 mに達する慶良間海裂が存在するが,この垂直変位は中新統〜更新統の堆積層を切っている.この断層の運動によって,沖縄島南部が隆起し,現在の沖縄島の形を形成したと考える.
(引用文献)
荒井晃作・佐藤智之・井上卓彦(2015)沖縄島北部周辺海域海底地質図.海洋地質図,no. 85,産業技術総合研究所地質調査総合センター.26 p.
荒井晃作・井上卓彦・佐藤智之(2018)沖縄島北部周辺海域海底地質図.海洋地質図,no. 90,産業技術総合研究所地質調査総合センター.26 p.
Arai, K., Sato, T. and Inoue, T. (2018) High-density surveys conducted to reveal active deformations of the upper forearc slope along the Ryukyu Trench, western Pacific, Japan. Progress in Earth and Planetary Science. 5:45 doi.org/10.1186/s40645-018-0199-0
荒井晃作・井上卓彦 (2022) 久米島周辺海域海底地質図.海洋地質図,no. 92,産業技術総合研究所地質調査総合センター.28 p.

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