講演情報

[T14-O-6]音響層序に基づくトカラ列島東方海域の地質構造発達史

*石野 沙季1、石塚 治1、針金 由美子1、三澤 文慶1、有元 純1、井上 卓彦1、高下 裕章1、谷 健一郎2 (1. 産業技術総合研究所 地質調査総合センター、2. 国立科学博物館)
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キーワード:

マルチチャンネル反射法地震探査、トカラ列島、沖縄トラフ、琉球弧、前弧海盆、新生代

トカラ列島は,九州南方から台湾にかけて分布する琉球弧の北端に位置しており,九州につながる第四紀火山フロント上の島弧である[1].過去の構造探査や応力場解析等の研究によって,トカラ列島周辺海域は沖縄トラフの拡大に関連したテクトニクスに特徴付けられることが知られている[2, 3].中でも,トカラ列島東方の前弧域には,琉球弧を南北に区分する構造境界の1つであるトカラ海底谷が分布する.トカラ海底谷付近で四万十帯白亜紀の岩石が発見されている[4]ことから,トカラ列島東方海域は,北部沖縄トラフの初期段階やトカラ海底谷形成に関わる構造発達過程が記録されている可能性があり,日本列島の地史において重要な海域である.本発表では,マルチチャンネル反射法地震探査プロファイルの音響層序区分及び各層序・構造のマッピングから明らかになったトカラ列島東方の新生代地質構造発達史について発表する.
トカラ列島周辺海域における20万分の1海底地質図作成を目的として,2021–2022年に地質調査航海を実施した.調査の一環として,G.I. Gun(355 cu.in.)を用いてマルチチャンネル反射法地震探査を行い,2-4マイルのグリッド状の測線沿いにプロファイルを取得した.トカラ列島東方において,50を超える測線で層相を対比し,広く分布する不整合面を基準に4つの音響ユニット(Unit TY1–TY4)に区分した.また,ドレッジ及びグラブ採泥器で採取した堆積岩の年代をもとに各ユニットの年代を推定した.これらの情報を統合することで,音響基盤であるUnit TY1を覆う堆積層として,Unit TY2(鮮新統―下部更新統), TY3(中部-上部更新統), TY4(上部更新統-完新統)の分布及び堆積過程が明らかになった.Unit TY2はトカラ列島東方に広く分布し,内部には琉球弧に並行なNNE-SSW走向の西落ち正断層による累積性のある変位が認められ,Unit TY2以下の地層は右横ずれを伴いながらブロック化している.それに対して,Unit TY3はトカラ海底谷西方の堆積盆を中心に分布し,内部には琉球弧に垂直のWNW-ESE走向の正断層による累積性のある変位が認められ,南へ遷移しながら堆積していた.Unit TY4は,トカラ海底谷西方域の堆積盆において往復走時1秒ほど厚く成層しており,累積性のある内部構造の変化は現在も沈降を続けていることを示す.一連の堆積層の分布・内部構造の変化は,中期更新世以降に琉球弧に並行な引張応力が作用し,トカラ海底谷付近の胴切り構造が形成されたことを示唆している.

引用文献:[1]下司信夫・石塚治,2007,地質ニュース,634,6–9; [2] Kubo, A. & Fukuyama, E., 2003, EPSL, 210, 305–316; [3] Minami et al., 2021, Marine Geology, 441, 106623; [4] 木村政昭ほか,1993,第9回深海シンポジウム報告書,283–307.

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