講演情報

[T1-O-4]長崎変成岩野母ユニット中の蛇紋岩メランジュの構成岩種と形成場

*西山 忠男1、外山 茂樹1、森 康2、重野 未来2 (1. 熊本大学、2. 北九州市自然史博物館)
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キーワード:

蛇紋岩メランジュ、沈み込み帯、海洋コアコムプレックス

九州西端長崎変成岩においては西彼杵半島に分布する西彼杵ユニットと野母半島に分布する野母ユニットに蛇紋岩メランジュが発達する.これらの蛇紋岩メランジュは,同じ白亜紀の沈み込み帯で形成されたと考えられるが,産状と構成岩種の点で大きな違いがある.西彼杵半島の蛇紋岩メランジュについてはNishiyama et al. (in press)で報告したので,ここでは野母ユニットの蛇紋岩メランジュについて述べる.野母ユニットは,約500 Maの変成ハンレイ岩,250-180 Maの低温結晶片岩類(野母崎層群),そして90 Maの低温高圧変成岩類(三和層群)から構成され,これらは断層で接している(宮崎・西山,1989).三和層群は蛇紋岩とそれに衝上する結晶片岩類からなり,蛇紋岩中ならびに蛇紋岩と結晶片岩との境界部には蛇紋岩メランジュが発達する.蛇紋岩メランジュ中の構造岩塊の年代は90 Maを示し,メランジュは三和層群と同時期に形成されたものである.この蛇紋岩メランジュは,蛇紋岩体と結晶片岩との境界部ならびに蛇紋岩体内部に厚さ100 m規模(最大の厚さ300 m)の層状岩体として産する.メランジュ構造岩塊の構成岩種は変成火山岩類(変成された枕状溶岩,ピローブレッチャ,ハイアロクラスタイト,火山角礫岩)と角閃岩(後退変成作用を受けている)を主とし,変成ハンレイ岩や曹長岩などを伴う.これらのブロックは塊状のもの(径数10 cm–数m)が多く,延性変形を示すものは少ない.角閃岩にはカタクラスティックな変形を示すものがある.また曹長岩化した苦鉄質片岩(原岩は玄武岩質凝灰岩と推定される)には厚さ数m,長さ数10 mの岩体として産するものがある.蛇紋岩体中には変成ハンレイ岩とロジン岩の岩脈が多く発達する(Nishiyama et al., 2017)が,メランジュ中には変成ハンレイ岩は産するがロジン岩は全く産しない.メランジュの基質は,アクチノ閃石片岩が主であるが,マグネシオリーベック閃石片岩の場合も稀にある.構造岩塊は,角閃石(ウインチ閃石–バロワ閃石)+緑簾石+緑泥石+アルバイトの鉱物組み合わせを持つものがほとんどで,一部にはオンファス輝石を産するが,石英と共存せず,マグネシオリーベック閃石を産するが藍閃石を産しないなど,西彼杵ユニットに比べて低圧の条件を示す.野母ユニットの蛇紋岩メランジュに特徴的に含まれる角閃岩は,大洋底変成作用の産物と考えられ,変成火山岩類とともにメランジュ中に産することは,野母メランジュの起源が,oceanic core complexまたはそれに類似した海洋リソスフェアの物質に由来し,沈み込み帯の比較的浅い場所で,沈み込む海洋プレート表層に露出していたこれらの岩石が混合し,変成作用を受けたものと推定される.

宮崎・西山(1989)地質学論集,33, 217-236.Nishiyama et al. (2017) PEPS, 4:1, DOI 10.1186/s40645-016-0115-4Nishiyama et al. (in press) Island Arc.

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