講演情報

[T7-O-6]四国北西部中央構造線の深度方向の歪分布

*髙﨑 理央1、吉松 寛奈2、坂口 有人1 (1. 山口大学、2. NEC航空宇宙システム)
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キーワード:

中央構造線、カルサイト、応力集中、歪

はじめに
断層の周辺層には様々な歪分布が生じると予測される。例えば地表付近では、令和6年能登半島地震について、地震前後のSAR強度画像の比較が行われ、地震に伴う引きずり変形が明らかとなっている(国土地理院, 2024)。一方で、地下深部では、断層中心部における応力集中により、局所的に高い歪が生じ、亀裂伝播における応力集中の減衰レートy=??-0.5(Broberg, 1999)に沿って歪も減衰すると予想される。応力集中が生じるということは、亀裂伝播に対して断層が抵抗したことを意味し、典型的には固着していた断層において期待される。すなわち、応力集中が生じた場合、断層は固着している。このような浅部の引きずり変形から、深部の固着型の応力集中への遷移がどれくらいの深度で生じるのか、地質学的データや地殻変動データなどから推定することは容易ではない(Scholz, 1999)。中央構造線は国内最大の内陸活断層である。愛媛県西条市丹原町湯谷口付近において、中央構造線断層(MTL)を様々な深度で交差するボーリング掘削が行われた(原子力規制庁, 2019)。本研究は、ボーリングコアH31MTLD-1およびH30MTLD-1を用いてMTL周辺層の深さ方向の歪分布を明らかにする。調査地域は、愛媛県西条市丹原町の湯谷口中央構造線露頭付近であり、地表から330 m掘削したH31MTLD-1および102m掘削したH30MTLD-1を使用する。両者はMTLを貫く深度が異なる。H31MTLD-1の岩相は下位より三波川変成岩類、主破砕帯、和泉層群の砂岩・泥岩互層、岡村層群の礫岩、扇状地堆積物の砂礫層の5層からなる。H30MTLD-1の岩相は下位より三波川変成岩類、主破砕帯、淡緑色凝灰岩、黒色泥質岩、和泉層群の砂岩・礫岩互層、扇状地堆積物の砂礫層の6層からなる(Miyawaki & Sakaguchi, 2021)。歪の推定には、カルサイトを使用する。カルサイトは断層帯に多く産し、剪断応力によってe面に沿って双晶変形が形成されるという特性を持つ。これは歪計として利用できる(坂口・安藤, 2022)。
結果と議論
MTLを深度69.43mで貫いたH30MTLD-1の歪分布は、断層付近では双晶密度132.8本/mmで歪にして1.0%に相当するが、断層から離れるにつれて緩やかに減衰し、断層から約50m離れると双晶密度27.9本/mm、歪にして0.06%になる。これは距離に反比例したリニアな減衰であり、断層の摩擦滑りに伴って周辺層に引きずり変形かもしれない。それに対してMTLを深度137.02mで貫いたH31MTLD-1の歪分布は、断層付近では双晶密度120.5本/mmであり、断層からわずか23m離れると87.1本/mmに急減する。これは歪にして0.95%から0.60%に相当する。歪は断層から離れると急激に減衰する。そのレートは弾性体における亀裂先端の応力減衰レート(Broberg, 1999)に近い。これは、亀裂伝播の応力集中をみている可能性がある。本地域では亀裂伝播による応力集中、すなわち固着型の挙動が、深度137.02m以浅で生じているのかもしれない。
引用文献
原子力規制庁(2019), pp319
Chirstopher H.Scholz, (1999), pp448
国土地理院(2024), https://www.gsi.go.jp/uchusokuchi/20240101noto_insar.html
Bertram Broberg, (1999), Academic Press, 244-250
Masahiro Miyawaki, Arito Sakaguchi, (2021), Earth, Planets and Space, 73:194
坂口有人・安藤航平, (2022), 国際特許出願、WO2022/009957 A1

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