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[T13-O-24]モンゴル西部Bayan Gol層 (カンブリア系テレニュービアン統) のオンコイドに認められる空隙の特徴と起源

*足立 奈津子1、上村 葵1、江﨑 洋一1、劉 建波2、渡部 真人3、Altanshagai Gundsambuu 4、Enkhbaatar Batkhuyag4、Dorjnamjaa Dorj 4 (1. 大阪公立大学、2. 北京大学、3. 早稲田大学、4. モンゴル科学アカデミー古生物研究所)
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キーワード:

カンブリア紀、オンコイド、空隙、モンゴル西部

内部をセメントで充填され,直径が数mmから数cmの多様な形態を示す空隙構造は,微生物岩組織にしばしば認められる.現生の微生物マットでは,シアノバクテリアの光合成由来の酸素の気泡が,フィラメント間にトラップされ,急速に石灰化することで砂時計様の空隙 (砂時計組織) が形成される場合がある (Mata et al., 2012).モンゴルゴビ・アルタイ県に分布するBayan Gol層上部 (カンブリア系テレニュービアン統) では,空隙構造が顕著なオンコイドが産出する.空隙は,見掛け上,砂時計組織に類似し,酸素の気泡に起源したと説明される (Wilmeth et al., 2015). 本発表では,石灰質微生物類の分布に注目し,多様な空隙の特徴とその起源を検討する.
 空隙は,石灰質微生物類Botomaella (樹状形態) を豊富に含むオンコイドによく発達する.一方,Girvanella (フィラメント状形態) が豊富で,明層・暗層の同心円状ラミナが規則的なオンコイドでは空隙は顕著ではない.形態に基づいて,樹状タイプ (高さ約4 mm),円柱〜球状タイプ (直径0.2‒0.8 mm, 長さ約4 mm), 塊状タイプ (直径2‒10 mm) の空隙が識別される.樹状タイプが最も豊富で,内部が完全にスパーセメントで充填されたものから,上方に伸びるフィラメントを保存しているものまで,様々に変化する.Girvanellaを産するラミナが,樹状タイプの間やそれらの上部の凸凹起伏に沿って発達する.円柱〜球状タイプでは,周縁部は不規則で,内部をスパーセメントが充填する.本タイプの空隙間でGirvanellaが密集する.塊状タイプは,Botomaellaの間に発達する.空隙は,下部をペロイド状粒子が,さらに上位を等層厚セメントやモザイク状セメントが充填する.
 樹状タイプの空隙は,Wilmeth et al. (2015) によって気泡由来とされた空隙に対比される.樹状タイプの内部に残されたフィラメントは,保存が良好なものから不明瞭なものまで様々である.フィラメントの集合からなる微生物本体が,石灰化する前に分解したり,石灰化の程度が弱かった部分が二次的に溶解したことに起因したと考えられる.円柱〜球状タイプは,Girvanellaの密集部に存在し,密集部間で最後まで石灰化することなく残された空隙であったと考えられる.塊状タイプは,Botomaellaが作る微小な枠組み間に形成された空隙に起源した.今後,豊富な樹状タイプの空隙の存在がどのような環境を反映しているのかについてもさらに検討を進める.

(引用文献)
Mata et al. (2012) Palaios 27, 206‒219. Wilmeth et al. (2015) Palaios 30, 836‒845.

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