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[T6-O-1]ジルコンの年代と微量元素から推測される鬼界カルデラのマグマの変遷

*伊藤 久敏1 (1. 電力中央研究所)
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キーワード:

鬼界カルデラ、マグマの変遷、ジルコン、U-Th-Pb年代測定、微量元素

九州南方の海中で7300年前(7.3 ka)に巨大噴火を起こした鬼界カルデラのマグマの変遷を知ることは,将来の巨大噴火災害のリスクを評価する上で重要である.鬼界カルデラで発生した巨大カルデラ噴火は,7.3 kaのK-Ah,95 kaのK-Tz,~140 kaのK-abが知られている.また,Ito et al. (2017)は,鬼界カルデラの南方約30 kmに位置する屋久島のK-Tzから広域テフラとされるKsdとAnboの年代に相当する0.7~0.6 Maのジルコンを見出し,これらのテフラも鬼界カルデラ起源である可能性を指摘した.今回,鬼界カルデラのカルデラ縁に位置する竹島にて,K-Ahと竹島の基盤を構成する赤崎溶岩からジルコンを抽出し,3つの年代測定手法(U-Pb法,Th-Pb法,U-Th法)の適用と微量元素分析を行った.その結果,以下のような鬼界カルデラのマグマの変遷を推測した.K-Ahのジルコンからは,約0.1 Maと1.5~1.0 MaのU-Pb年代が得られた.前者の年代を示すジルコンはK-Ah,K-Tz,もしくはK-abのマグマ活動に関連して晶出したと判断した.後者の年代は,鬼界カルデラでジルコンを晶出するマグマ活動が始まった年代を示すと判断した.赤崎溶岩のジルコンは微量元素に極端に富んでおり,マグマの残液から晶出したものと判断した.さらに,Th/U比が約3.7と高いことから,ジルコンを晶出したマグマのTh/U比はさらに高く(約16と推定),天水の影響を受けたマグマであると推定した.赤崎溶岩のジルコンはTh濃度が高かった(>2,000 ppm)ために,U-Pb年代と誤差の範囲で一致する約0.25 Maの高精度なTh-Pb年代を得た.U-Th年代は誤差が大きく,精度の良い年代が得られなかったが,マグマのTh/U比が高いことを支持する結果が得られた.赤崎溶岩のマグマは,先行するカルデラ噴火により生じたカルデラ縁を伝って浅部に出来たマグマ溜りから噴出した可能性があると判断した.以上のことから,鬼界カルデラでは,ジルコンを晶出するような珪長質のマグマ活動が1.5~1.0 Maに生じ,恐らく最初のカルデラ噴火が0.7~0.6 Maに起こった.約0.25 Maに(カルデラ噴火を起こしたマグマよりも)浅部のマグマ溜りから赤崎溶岩が噴出した.その後,~140 ka,95 ka,7.3 kaに巨大カルデラ噴火が起きたと推定した.

文献
Ito, H., Uesawa, S., Nanayama, F., and Nakagawa, S., 2017. Zircon U–Pb dating using LA-ICP-MS: Quaternary tephras in Yakushima Island, Japan. J. Volcanol. Geotherm. Res., 338, 92–100.

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