講演情報

[T6-O-2]北海道北部、利尻火山の完新世噴火履歴

*中川 光弘1、谷内 元2、石塚 吉浩2 (1. 北海道大学理学研究院、2. 産総研地質調査研究センター)
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キーワード:

利尻火山、噴火履歴、テフラ層序学、活火山、完新世

利尻火山は北海道北部の日本海に位置し、気象庁は複数の研究成果をもとに(石塚、1999;佐藤ほか、 2013)、本火山を活火山に指定している。しかしながら、その根拠となる完新世の噴火史については不明の点が多かった。そのため気象庁では活火山の見直し対象のひとつとして、利尻山をリストアップしている。そこで、我々は本火山の完新世噴火履歴を新たに検討した。まず、利尻島の赤色立体地図を作成し、火山地形を再検討して完新世の可能性ある火口や噴出物などを探索し、その後に地表踏査を行った。さらに人力トレンチおよび重機トレンチ掘削調査も行い、テフラを探索した。それに加えて、利尻起源テフラの模式地である、対岸の北海道北部の豊富地域のテフラ層序についても再検討を行った。 
 今回、利尻山南~南東山麓において完新世の年代を示すテフラを、2地点の露頭において確認した。まず、島南端の野中海岸沿いの海食崖(図1)の表層部において野中軽石層(新称)を見出した。このテフラは細粒火山灰層の上位に降下軽石層、さらに上位に火山灰にコーテイングされた降下軽石層、その上位のシルト質火山灰中に軽石が散在する火砕流あるいはサージ層から構成されている。直下の土壌3試料の年代は8160 - 7130yBP、直上のローム層から5200yBPの年代を得た。これらの結果から、本テフラは7000年前頃のテフラであることが明らかになった。 次に、仙法志ポン山溶岩流上の表土中で(図1)、2層の細粒の降下火山灰層を認めた。下位テフラ直下のローム層からは4300yBP、上位テフラ直下の土壌層からは3500yBP、そして上位テフラ直上の土壌からは2600yBPの年代値が得られた。これらのことから、これらは4000年前頃と3000年前頃のテフラであることが明らかになった。これらを仙法志ポン山南テフラグループと仮称する。
 一方、地形解析ではこれまで認識されていなかった火口および火砕丘地形を、島南東部の沼浦マール北部で見出した。これらを沼浦北新期火口群および沼浦北旧期火口群と呼ぶ(図1)。火口群は沼浦マール噴出物を地形的に覆っている。それぞれの火砕丘地形の縁で重機トレンチ掘削を行った。その結果、両火口群で累層厚が1~2m以上のスコリア質火山礫凝灰岩層を見出した。これらは成層構造が認められ、径30㎝に達するballistic blockも認められた。このことからこれらは、それぞれ沼浦マールよりは新しい火口に由来する、火口近傍堆積物であることが明らかになった。直上の土壌層の年代からは、沼浦北旧期火口群は更新世末、そして沼浦北新期火口群は7000年前頃の噴出物であると推定できた。
 今回、完新世のテフラが複数認識され、それらの年代は7000年前頃と、4000~3000年前であることが明らかになった。これにより利尻火山は活火山であることが確定した。今後はこれらテフラの分布や給源火口、そして岩石学的性質について検討する必要がある。
引用文献
石塚吉浩(1999)火山.44,23-40.
佐藤雅彦ほか(2013)プロ・ナトウーラ・ファンド助成第21期助成成果報告書.

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