講演情報
[T6-O-11]西南日本岩城島に産する後期白亜紀閃長岩及び花崗岩類の起源:全岩組成及びジルコン年代を用いた評価
*藤崎 渉1、佐藤 幹太1、澤木 佑介2、浅沼 尚3 (1. 筑波大学、2. 東京大学、3. 京都大学)
地球型惑星に固有の花崗岩は、大気-海洋-生物の相互作用に対して極めて重要な役割を担っており、固体地球進化を探る上で欠かすことのできない岩石である。花崗岩は、これまで様々な分類法が提案されてきたが、その中でも全岩中の化学組成の違いに基づいたアルファベット型分類法(e.g., Chappell and White, 1974; M: Mantle, I: Igneous, S: Sedimentary, A: Alkaline)が広く使用されている。この4種類の花崗岩の内、I型及びA型花崗岩類に関しては、様々な花崗岩帯にしばしば共存して産出することから、時間的空間的に密接な関係にあり、それらの起源については因果関係があるとされているが、その詳細についてはわかっていない。西南日本外帯には、散点的ではあるがI型花崗岩に付随するA型花崗岩(閃長岩)の産出が確認されている。西南日本に産する閃長岩の成因として、これまでフェン岩化作用とアルカリ交代作用の2つの説が提案されており、特に瀬戸内海に点在する島々、例えば愛媛県岩城島に産する閃長岩に関しては、後者に起因すると考えられている(村上ほか, 1976)。一方、岩城島のアルカリ交代作用が花崗岩形成後どの程度の時間をおいて生じたのかは定かではない。そこで本研究は、岩城島に産する花崗岩類及びそれに付随する閃長岩の鉱物記載及び地球化学分析から、当該地域における花崗岩形成、及びアルカリ交代作用を引き起こした詳細なメカニズムの解明を目的としている。
全岩主要元素及び微量元素分析用の試料として、花崗岩5試料(GR042, 045, 046, 047, 048)、花崗閃緑岩1試料(GR044)、及び閃長岩3試料(GR049, 050, 051)を用いた。主要元素分析に関しては,ガラスビード法に則り、東京工業大学設置の蛍光X線分析装置(XRF)を用いて測定を行った。微量元素分析は、XRF分析にて用いたガラスビードを0.5M硝酸で溶解させ、In内標準溶液を加えた後、東京大学設置の誘導結合プラズマ質量分析計(ICP-MS) を用いて行った。一方、ジルコンU-Pb年代分析には、花崗岩4試料(GR042, 045, 046, 048)及び閃長岩1試料(GR051)を用い、京都大学設置のレーザーアブレーション誘導結合プラズマ質量分析計(LA-ICP-MS/MS) からデータの取得を行った。
主要元素及び微量元素濃度において、花崗岩は2試料を除き1000 × Ga/Al <2.6、Na2O + K2O <8 wt.%、Gd/Yb <60、Nb + Y <50 μg/g、Zr < 300 μg/g、及びNb <20 μg/gといった地球化学的特徴を示すことから、A型というよりはI型花崗岩の組成に近しいことが明らかとなった。一方、花崗岩及び閃長岩から得られたジルコンU-Pb年代はそれぞれ89-95 Ma及び89 Maであった。これらの年代は、同じ瀬戸内海上に位置する梶島にて報告された花崗閃緑岩の形成年代(90-92 Ma: Shimooka et al., 2023)とほぼ一致し、これら2地域の花崗岩類は同一起源のマグマ活動に起因すると推定される。さらに梶島では、花崗閃緑岩と共にアルカリ火成岩(ホルンブレンドを伴うトロクトライト、及び輝石/ホルンブレンドを伴うガブロノライト)が小規模に産出し、それらの形成年代(89-91 Ma)もほぼ同時期であることも確認されている(Shimooka et al., 2023)。以上を考慮すると、岩城島の閃長岩は花崗岩形成直後にアルカリ交代作用を被った可能性に加え、最初から閃長岩として形成された可能性も浮上してきた。
参考文献: Chappell, B.W., White, A.J.R., 1974. Pacific Geology 8, 173-174. Shimooka, K., Saito, S., Tani, K., 2023. Journal of Mineralogical and Petrological Sciences 118, 015. 村上允英, 1976. 岩石鉱物鉱床学雑誌 1, 261-281.
全岩主要元素及び微量元素分析用の試料として、花崗岩5試料(GR042, 045, 046, 047, 048)、花崗閃緑岩1試料(GR044)、及び閃長岩3試料(GR049, 050, 051)を用いた。主要元素分析に関しては,ガラスビード法に則り、東京工業大学設置の蛍光X線分析装置(XRF)を用いて測定を行った。微量元素分析は、XRF分析にて用いたガラスビードを0.5M硝酸で溶解させ、In内標準溶液を加えた後、東京大学設置の誘導結合プラズマ質量分析計(ICP-MS) を用いて行った。一方、ジルコンU-Pb年代分析には、花崗岩4試料(GR042, 045, 046, 048)及び閃長岩1試料(GR051)を用い、京都大学設置のレーザーアブレーション誘導結合プラズマ質量分析計(LA-ICP-MS/MS) からデータの取得を行った。
主要元素及び微量元素濃度において、花崗岩は2試料を除き1000 × Ga/Al <2.6、Na2O + K2O <8 wt.%、Gd/Yb <60、Nb + Y <50 μg/g、Zr < 300 μg/g、及びNb <20 μg/gといった地球化学的特徴を示すことから、A型というよりはI型花崗岩の組成に近しいことが明らかとなった。一方、花崗岩及び閃長岩から得られたジルコンU-Pb年代はそれぞれ89-95 Ma及び89 Maであった。これらの年代は、同じ瀬戸内海上に位置する梶島にて報告された花崗閃緑岩の形成年代(90-92 Ma: Shimooka et al., 2023)とほぼ一致し、これら2地域の花崗岩類は同一起源のマグマ活動に起因すると推定される。さらに梶島では、花崗閃緑岩と共にアルカリ火成岩(ホルンブレンドを伴うトロクトライト、及び輝石/ホルンブレンドを伴うガブロノライト)が小規模に産出し、それらの形成年代(89-91 Ma)もほぼ同時期であることも確認されている(Shimooka et al., 2023)。以上を考慮すると、岩城島の閃長岩は花崗岩形成直後にアルカリ交代作用を被った可能性に加え、最初から閃長岩として形成された可能性も浮上してきた。
参考文献: Chappell, B.W., White, A.J.R., 1974. Pacific Geology 8, 173-174. Shimooka, K., Saito, S., Tani, K., 2023. Journal of Mineralogical and Petrological Sciences 118, 015. 村上允英, 1976. 岩石鉱物鉱床学雑誌 1, 261-281.
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