講演情報
[T15-O-3]関東山地〜九州東部のペルム紀石英閃緑岩のジルコンU-Pb年代:阿武隈山地東縁割山花崗岩との対比
新井 孝彰1、*高木 秀雄2、淺原 良浩3 (1. 東京大学、2. 早稲田大学、3. 名古屋大学)
キーワード:
ジルコンU-Pb年代、ペルム紀、金勝山石英閃緑岩、臼杵川石英閃緑岩、割山花崗岩
西南日本外帯に分布が知られているペルム紀花崗岩類として,関東山地の御荷鉾帯にクリッペをなす石英閃緑岩の小岩体,中部地方の兵越花崗岩,九州東部臼杵川沿いに小規模な石英閃緑岩が存在する.これらの花崗岩類の帰属については,南部北上帯〜黒瀬川帯に分布するペルム紀薄衣礫岩中の花崗岩礫の年代やSr同位体初生値での一致が指摘されているが (柴田・高木,1989),岩体として対比できるものは知られていなかった.近年,福島県富岡のボーリングコア中の花崗岩試料や割山隆起帯の花崗岩類 (花崗閃緑岩〜トーナル岩) において293〜308MaのジルコンU-Pb年代を示すことが明らかにされていることから (Tsutsumi et al., 2010;土谷ほか,2013参照),上記の対比の可能性が浮かび上がった.そこで,筆者らは東北から九州にかけて分布が確認されている古生代末の年代を示す花崗岩類8試料について,ジルコンU-Pb年代測定を実施した.対象としたのは,岩沼石英閃緑岩 (新称),割山花崗岩 (2試料),関東山地寄居–小川町の金勝山石英閃緑岩 (2試料),皆野町の金沢石英閃緑岩,下仁田町の川井山石英閃緑岩,大分県臼杵市の臼杵川石英閃緑岩である.今回初めて年代が明らかにされる岩沼石英閃緑岩は割山隆起帯の北東5 kmに位置するグリーンピア岩沼北部の谷から得られたもので,割山花崗岩とやや異なり,石英閃緑岩の組成をもつ.ジルコンの U-Pb 年代測定は,名古屋大学大学院環境学研究科設置のNd-YAGレーザーシステム (NWR-213) を装着したICP-QMS (Agilent 7700x) を用いた.分析条件は高地ほか (2015) に従った.また,2次標準試料としてPlesoviceを用い,340.1 ± 2.6 Maを得た.年代測定の結果,岩沼石英閃緑岩は292.7±2.5Ma, 割山花崗岩は284.2±4.7 , 287.5±3.0 Maとなり,いずれもペルム紀の範囲に収まった.加えて,関東山地の4試料で282.0±3.6〜288.9±2.1Ma,臼杵川石英閃緑岩についても286.9±5.7Maと良い一致をみている.
既存のU-Pb年代と比較してみると,金勝山石英閃緑岩が281.5±1.8Ma (Ogasawara et al., 2016),川井山石英閃緑岩が277.1±3.2Ma (土屋ほか,2022),臼杵川石英閃緑岩が292.0±12.4Ma (Sakashima et al., 2003) という報告があり,今回得られた年代範囲と調和的である.以上より,割山花崗岩のU-Pb年代は,関東〜九州の石英閃緑岩の年代範囲に含まれており,岩沼石英閃緑岩もほぼ一致する.このことから,西南日本のペルム紀石英閃緑岩は,東北日本の割山花崗岩に対比できる可能性が高まったと言える.ただし,割山花崗岩については既存の報告値 (302,308Ma:土谷ほか,2013参照) よりも若い年代が得られたことについての検証や,化学組成や同位体比などの形成場に関する情報なども加えて,対比の可能性をさらに深めていく必要がある.
文献:Ogasawara, M., Fukuyama, M., Horie, K., 2016,Island Arc, 25, 28-42.; Sakashima, T. et al., 2003, J. Asian Earth Sci. 21, 1019–1039.; 柴田 賢・高木秀雄,1989, 地質雑,95, 687-700.; 高地吉一ほか, 2015, 地球化学,49,19-35.; 土谷信高ほか,2013,地質雑,119,154-167.; 土屋裕太ほか,2022,Naturalistae, 26, 47-51.; Tsutsumi, Y. et al., 2010, J. Mineral. Petrol. Sci., 105, 320–327.
既存のU-Pb年代と比較してみると,金勝山石英閃緑岩が281.5±1.8Ma (Ogasawara et al., 2016),川井山石英閃緑岩が277.1±3.2Ma (土屋ほか,2022),臼杵川石英閃緑岩が292.0±12.4Ma (Sakashima et al., 2003) という報告があり,今回得られた年代範囲と調和的である.以上より,割山花崗岩のU-Pb年代は,関東〜九州の石英閃緑岩の年代範囲に含まれており,岩沼石英閃緑岩もほぼ一致する.このことから,西南日本のペルム紀石英閃緑岩は,東北日本の割山花崗岩に対比できる可能性が高まったと言える.ただし,割山花崗岩については既存の報告値 (302,308Ma:土谷ほか,2013参照) よりも若い年代が得られたことについての検証や,化学組成や同位体比などの形成場に関する情報なども加えて,対比の可能性をさらに深めていく必要がある.
文献:Ogasawara, M., Fukuyama, M., Horie, K., 2016,Island Arc, 25, 28-42.; Sakashima, T. et al., 2003, J. Asian Earth Sci. 21, 1019–1039.; 柴田 賢・高木秀雄,1989, 地質雑,95, 687-700.; 高地吉一ほか, 2015, 地球化学,49,19-35.; 土谷信高ほか,2013,地質雑,119,154-167.; 土屋裕太ほか,2022,Naturalistae, 26, 47-51.; Tsutsumi, Y. et al., 2010, J. Mineral. Petrol. Sci., 105, 320–327.
コメント
コメントの閲覧・投稿にはログインが必要です。ログイン