講演情報
[T15-O-8]青森県津軽西岸域, 中部中新統十二湖凝灰岩の産状と岩石学的特徴:水中珪長質溶岩ドーム形成史の解明
*金指 由維1、折橋 裕二1、仁木 創太2、岩野 英樹3,4、佐々木 実1、淺原 良浩2、平田 岳史3 (1. 弘前大学、2. 名古屋大学、3. 東京大学、4. (株)京都フィッショントラック)
キーワード:
中部中新統、津軽西岸域、十二湖凝灰岩、U–Pb年代、水中珪長質溶岩ドーム
青森県津軽西岸域には中新統の珪長質火山岩・火砕岩類が広範囲に分布している. 同西岸域, 白神山地西端には“日本キャニオン”と呼ばれる白い岩肌の大断崖(幅約1 km, 高さ300 m)が露出し,十二湖凝灰岩の模式地とされる. 十二湖凝灰岩は流紋岩質火山砕屑岩・溶岩から構成され, 分布面積は約50 km2(東西約4 km, 南北約12 km)に達する.また, 同構成岩にNW–SE方向に大規模な流紋岩質岩脈が貫入している(例えば,盛谷,1968). 著者らは昨年度の日本地質学会学術大会(京都大学)において十二湖凝灰岩構成岩のジルコンのU–Pb・FT年代測定結果を報告し, 同構成岩が12.2–12.0 Maの短期間に形成されたことを明らかにした. また, 下位の大童子層上部と同時異相の関係にあるとする盛谷(1968)の見解を支持した(金指ほか, 2023).本研究では,さらに十二湖凝灰岩分布域の地質踏査を中心に行い, 得られた産状記載と岩石学的特徴から十二湖凝灰岩が水中珪長質溶岩ドームであることを示唆するとともに,新たに2試料のジルコンのU–Pb年代結果について報告する. なお, 本測定には東京大学大学院理学系研究科地殻化学研究施設設置のフェムト秒レーザーアブレーション多重検出器型ICP質量分析装置を用いた.
本地質踏査の結果,十二湖凝灰岩の分布域南部の小峰川流域では,下部から上部にかけて黒曜岩と流紋岩岩片から構成される凝灰角礫岩,角礫化した流紋岩溶岩,ガラス質凝灰岩およびガラス質凝灰角礫岩へと岩相が変化し,日本キャニオンでは,その大部分が平行ラミナの発達したガラス質凝灰岩および凝灰角礫岩から構成され,下部には放射状節理の発達したラバーローブ状黒曜岩質溶岩や流理構造の発達した流紋岩溶岩から構成されていることを確認した.これらの産状から十二湖凝灰岩の主体はハイアロクラスタイトと考えられる. また,これらに厚さ約10~30 mの流紋岩(または真珠岩)岩脈が多数貫入している.本分布域北部の笹内川流域では,下部から上部にかけて珪質泥岩と軽石凝灰岩の互層, 珪質泥岩片を多く含む凝灰角礫岩,細粒のガラス質凝灰岩へと岩相が変化する.盛谷(1968)が指摘するように,十二湖凝灰岩は日本キャニオンから南北にいくにつれ層厚が減少すると共に細粒岩相と変化することから,日本キャニオン周辺が噴出の中心であったと考えられる.
これまで年代測定を行った試料は十二湖凝灰岩の最上部, 軽石凝灰岩と最下部, 凝灰角礫岩および流紋岩質貫入岩である. 本研究では上部に位置する日本キャニオンの流紋岩溶岩および小峰川流域の中部に位置する凝灰角礫岩を年代測定した. 前者の238U–206Pb年代の加重平均は12.2 ± 0.1 Ma(2σ), 後者の238U–206Pb年代の加重平均は12.18± 0.05 Ma(2σ)であり, 十二湖凝灰岩は12.2–12.0 Maの短期間に形成されたことする金指ほか(2023)の見解を支持する結果となった.
産状記載, 岩石学的特徴および年代結果より, 十二湖凝灰岩は流紋岩質凝灰角礫岩, 流紋岩溶岩, 流紋岩質フィーダーダイクを伴うハイアロクラスタイトから構成される水中珪長質溶岩ドームであることが示唆される. 東北日本弧には背弧海盆の拡大期においてあらゆる化学組成のマグマに由来する海底火山噴出物が形成されている. 玄武岩質―安山岩質噴出物は堆積メカニズムおよび堆積環境について多く研究されているが(例えば, 後藤・合地, 1991), 珪長質なものに関しては, 国内ではほとんど報告例がない. 水中珪長質溶岩ドームの形成史を議論する上で, 十二湖凝灰岩は露頭の保存状態が良く, ほとんど変質を受けていないため非常に適している.
現在,十二湖凝灰岩を構成する流紋岩類の全岩化学組成についても検討中であり,本講演ではそれらの結果についても報告する予定である.
[引用文献]金指ほか, 2023, 日本地質学会第130年学術大会講演要旨. 後藤・合地, 1991, 火山,1, 37–50. 盛谷, 1968, 地質調査所, 57p
本地質踏査の結果,十二湖凝灰岩の分布域南部の小峰川流域では,下部から上部にかけて黒曜岩と流紋岩岩片から構成される凝灰角礫岩,角礫化した流紋岩溶岩,ガラス質凝灰岩およびガラス質凝灰角礫岩へと岩相が変化し,日本キャニオンでは,その大部分が平行ラミナの発達したガラス質凝灰岩および凝灰角礫岩から構成され,下部には放射状節理の発達したラバーローブ状黒曜岩質溶岩や流理構造の発達した流紋岩溶岩から構成されていることを確認した.これらの産状から十二湖凝灰岩の主体はハイアロクラスタイトと考えられる. また,これらに厚さ約10~30 mの流紋岩(または真珠岩)岩脈が多数貫入している.本分布域北部の笹内川流域では,下部から上部にかけて珪質泥岩と軽石凝灰岩の互層, 珪質泥岩片を多く含む凝灰角礫岩,細粒のガラス質凝灰岩へと岩相が変化する.盛谷(1968)が指摘するように,十二湖凝灰岩は日本キャニオンから南北にいくにつれ層厚が減少すると共に細粒岩相と変化することから,日本キャニオン周辺が噴出の中心であったと考えられる.
これまで年代測定を行った試料は十二湖凝灰岩の最上部, 軽石凝灰岩と最下部, 凝灰角礫岩および流紋岩質貫入岩である. 本研究では上部に位置する日本キャニオンの流紋岩溶岩および小峰川流域の中部に位置する凝灰角礫岩を年代測定した. 前者の238U–206Pb年代の加重平均は12.2 ± 0.1 Ma(2σ), 後者の238U–206Pb年代の加重平均は12.18± 0.05 Ma(2σ)であり, 十二湖凝灰岩は12.2–12.0 Maの短期間に形成されたことする金指ほか(2023)の見解を支持する結果となった.
産状記載, 岩石学的特徴および年代結果より, 十二湖凝灰岩は流紋岩質凝灰角礫岩, 流紋岩溶岩, 流紋岩質フィーダーダイクを伴うハイアロクラスタイトから構成される水中珪長質溶岩ドームであることが示唆される. 東北日本弧には背弧海盆の拡大期においてあらゆる化学組成のマグマに由来する海底火山噴出物が形成されている. 玄武岩質―安山岩質噴出物は堆積メカニズムおよび堆積環境について多く研究されているが(例えば, 後藤・合地, 1991), 珪長質なものに関しては, 国内ではほとんど報告例がない. 水中珪長質溶岩ドームの形成史を議論する上で, 十二湖凝灰岩は露頭の保存状態が良く, ほとんど変質を受けていないため非常に適している.
現在,十二湖凝灰岩を構成する流紋岩類の全岩化学組成についても検討中であり,本講演ではそれらの結果についても報告する予定である.
[引用文献]金指ほか, 2023, 日本地質学会第130年学術大会講演要旨. 後藤・合地, 1991, 火山,1, 37–50. 盛谷, 1968, 地質調査所, 57p
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