講演情報
[T6-P-3]蔵王火山の15世紀噴火テフラ層の地質学・岩石学的特徴
*岩脇 望1、伴 雅雄2、井村 匠2 (1. 山形大学大学院理工学研究科理学専攻、2. 山形大学理学部)
キーワード:
蔵王火山、テフラ層、15世紀噴火、火山層序、噴火推移
蔵王火山は東北日本火山フロントに位置する活火山である。約100万年前から活動しており、その活動は6期に区分されている。 約3.5万年前から始まる活動期Ⅵでは21枚のテフラ層(蔵王-遠刈田テフラ)が認められているが, このうちのZa-To14が15世紀に形成されたものとされている。Za-To14は、中腹から山麓では主に黒色スコリア質火山砂層からなり、粒径変化などから少なくとも3つのユニットに細分でき、また噴出中心は山頂の御釜火口との先行研究結果がある。本研究では火口近傍において保存状況の良い層が観察できたので、中腹での調査結果も合わせて報告する。火口近傍~中腹にかけての15か所において露頭・トレンチ調査にて岩相記載・試料採取を行った。中腹においては先行研究で認められている特徴が再確認されると共に、幾つかの地点において従来確認されていなかった微発泡粗粒スコリアを含むことが判明した。火口近傍においてはZa-To14は最大層厚約50 cmの降下スコリア層からなり岩相から4つに細分できる。下位から黒色スコリア層(unit 1)、弱い逆級化を示し橙色変質石質岩片を特徴的に含むこげ茶色スコリア層(unit 2)、弱い逆級化を示すこげ茶色スコリア層(unit 3)、逆級化を示す黒色スコリア層(unit 4)。各unitの最大粒径は、unit1は約3–4 cm、unit 2は約5 cm、unit 3は約7–8 cm、unit 4は約2–3 cmである。スコリアの発泡度はユニット内で幅がありユニット間での明瞭な差は認められない。また、御釜火口から西方約500 m地点で採取したZa-To14直上の古土壌について、西暦1437–1500年の較正年代を得た。なお、新たに作成した等高線図を用いて推定した体積は約0.005 km³となった。unit 2, 3, 4から採取した試料についてについて0.5–1 mmの粒度の構成物を観察した結果、スコリアは黒色とベージュのものが認識され、unit 2の方がunit 4よりも黒色スコリアの割合が大きく、鉱物片が少ない傾向にあった。unit 3は両者の中間的な特徴を示した。また、どの試料においても、黒色スコリアの方がベージュスコリアより結晶度が高く、また石基ガラス組成のSiO2量が高い傾向があった。 unit 3に含まれる特に粒径の大きなスコリアについて全岩化学組成分析を行ったところ、SiO2量は56.6–57.2 wt. %の範囲で、五色岳火砕岩類のうち御釜火口由来の火口近傍の噴出物の組成範囲(56.8–57.7 wt. %)の中の低SiO2量の領域にあることが判明した。以上のように、蔵王山の15世紀の噴火によるZa-To14について観察地点を増やすことなどにより、その特徴をより精度を上げて明らかにすることができた。特に、山頂近傍での岩相、構成物の割合などの上下方向の変化が確認でき、噴火の推移を解明する上で重要な情報を得ることができた。
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