講演情報

[T6-P-6]放射年代から見たマグマ滞留時間推定:三瓶山火山の例

*岩野 英樹1,6、浅沼 尚2、仁木 創太3、坂田 周平4、折橋 裕二5、平田 岳史1、檀原 徹6 (1. 東京大学附属地殻化学実験施設、2. 京都大学、3. 名古屋大学、4. 東京大学地震研究所、5. 弘前大学、6. 京都フィッション・トラック)
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キーワード:

後期更新世、UーTh非平衡年代、マグマ滞留時間、ジルコン、三瓶山火山

火山の活動はマグマの発生・輸送・分化・定置・噴出に至るプロセスに大別される。それらの素過程に関する数値としての時間情報は個々の火山活動について定量的な理解を深めるために重要であるのみならず、将来の噴火災害評価や固体地球内の元素循環解明へと繋がる基礎情報となる。年代測定分野では、実際に火山噴出物からそれらのプロセスに関する時間的制約を与える役割が求められている。年代の新しい火山になればなるほどその活動性評価の重要性が増すのに対し、新しい年代ほど測年は困難さが増し、長年発展途上にあった。近年、後期更新世年代学において、ウラン系列の中間生成物であるトリウム230(半減期7.5万年)を利用した238U−230Th放射非平衡年代測定法(以下U−Th法と略す)[1,2]が質量分析法の技術開発とともに実用化に至った。U−Th法の実質的な年代適用範囲は1万年前から30万年前であることから、5万年より若い年代測定が可能な14C法との年代適用範囲が重複し、また14C法の適用困難な5万年より古い試料の年代測定も可能である。U−Th法はウラン含有鉱物であるジルコン、アパタイト、イルメナイト、モナザイトなどに適用でき、日本の火山噴出物に対する同法の直近の年代報告例として、阿蘇4火砕流(86.4±1.1ka, イルメナイト) [3] 、三瓶木次軽石(105±6ka、ジルコン) [4]や洞爺火砕流(113.5±5ka、ジルコン+モナザイト) [4]がある。本研究は、放射年代測定からマグマ滞留時間(ここでは、マグマだまりでの鉱物晶出と噴火までの時間差とする)という未踏課題へチャレンジする。放射年代を用いたマグマ滞留時間推定に係るいくつかあるアプローチとして、①噴出年代(14C年代など)と鉱物結晶化年代との差、②同一鉱物粒子間での結晶化年代の差、③鉱物の一粒子内での結晶化年代の差(結晶成長期間)、④異なる鉱物間での結晶化年代の差、などが考えられる。本講演では、島根県三瓶山火山の噴出物のうち、先行研究において噴出年代が14C年代に基づき制約されている三瓶大田テフラ(50ka)[5]、三瓶池田テフラ(46ka) [5]を対象に上で述べたマグマ滞留時間の推定を試みる。これまでところ、アプローチ①によって、14C年代とジルコンU−Th年代とに約1万年の差があることを明らかにした。さらにアプローチ②③での検討結果を報告する予定である。[1] Kigoshi K. (1967) Science 156, 932―934. [2]福岡孝昭(1996)地質ニュース, 502号, 7-13. [3] Keller et al. (2022) Geostandards and Geoanalytical Research. 46, 465-475 https://doi.org/10.1111/ggr.12447. [4] Niki e al. (2022) Geostandards and Geoanalytical Research. doi: 10.1111/ggr.12458. [5] Albert et al .(2019). Quaternary Geochronology, 52, 103-131 https://doi.org/10.1016/j.quageo.2019.01.005

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