講演情報
[T6-P-9]岩石学的研究と年代学的研究によるアダカイト質マグマの貫入・定置プロセス:北上山地,堺ノ神深成岩体を例として
*鈴木 哲士1、浅井 信夫1、中島 和夫1、小北 康弘2、横山 立憲2、坂田 周平3、大野 剛4、長田 充弘2,5、湯口 貴史6 (1. 山形大学、2. 原子力機構、3. 東大地震研、4. 学習院大学、5. 日本大学、6. 熊本大学)
キーワード:
フレアアップ、アダカイト質マグマ、P-T履歴、t-T履歴、ジルコンHf同位体組成
島弧-海溝系の沈み込み帯では,カルクアルカリ~ショショナイト質マグマの生成だけではなく,若い海洋地殻の沈み込みの部分溶融によりアダカイト質マグマも生じる(Defant and Drummond, 1990, Nature).このアダカイト質マグマや非アダカイト質マグマの生成から上昇や貫入・定置プロセスは,大陸地殻の発達・進化をもたらす.また,島弧-海溝系の沈み込み帯において,マグマの生成量が大きく増加する「フレアアップ(Pastor-Galán et al., 2021, EPSL)」の発生が報告されており,フレアアップ期には効果的な大陸地殻の発達・進化が生じる.このため,島弧-海溝系のフレアアップ期におけるマグマの発生から貫入・定置プロセスの相違を把握することは,大陸地殻の発達・進化を理解する上で重要なカギとなる.
島弧-海溝系の沈み込み帯におけるフレアアップ期の火成活動を解明する上で,北上山地の深成岩体は,マグマの生成量が増大する白亜紀「フレアアップ期(Pastor-Galán et al., 2021, EPSL)」に形成され,また「アダカイト質マグマ」と「非アダカイト質マグマ(カルクアルカリ~ショショナイト質マグマ)」(土谷ほか, 2015, GKK)の特徴を併せ持つため,本研究において最適な研究対象である.特に,北部北上山地に位置する深成岩体である堺ノ神深成岩体を研究対象とする.北上山地の深成岩体の産状は,非アダカイト質マグマ単独で形成されるカルクアルカリ~ショショナイト質深成岩類と,アダカイト質岩の周囲に非アダカイト質岩が分布する累帯深成岩体の2つのタイプに分類される(土谷ほか, 2015, GKK).一方,堺ノ神岩体は筆者らの露頭調査や岩石学的研究により,中心部のアダカイト質岩とその周囲の非アダカイト質岩によって構成されるものの,明瞭な累帯構造を呈さないことが明らかとなっている.このことから,土谷ほか (2015, GKK)で示される産状とは異なる岩体であることが示唆されている.つまり,土谷ほか (2015, GKK)で提案されるマグマの貫入・定置モデルとは異なる形成様式を持つ可能性がある.このため,本研究は堺ノ神岩体の発生から貫入・定置プロセスを解明する.堺ノ神岩体の発生から貫入・定置プロセスの解明は,フレアアップ期の大陸地殻浅部への大量のマグマ供給に由来する大陸地殻の発達・進化の理解に貢献する.
本研究では,堺ノ神岩体に対し,岩石学的研究と年代学的研究を実施した.また,標高の異なる露頭から採取した多くのサンプルを使用することで,マグマの空間的な貫入・定置プロセス(冷却過程,定性的な貫入速度など)について考察できる.岩石学的研究ではホルンブレンドの化学組成から結晶化温度と圧力を導出し,ホルンブレンド結晶化時のアダカイト質マグマと非アダカイト質マグマの温度-圧力(P-T)履歴を解明した.導出した圧力を深度に読み替えたところ,アダカイト質マグマは約850 ℃から740 ℃への冷却に伴い,およそ深度11 kmから5 kmに上昇したことがわかった.一方で,非アダカイト質マグマは約940 ℃から700 ℃への冷却に伴い,およそ深度22 kmから6 kmに上昇したと解釈できた.最終的に2つのマグマは,深度約4-7 kmに温度700 ℃で定置したことが示唆された.年代学的研究では,ジルコンU-Pb年代・Ti濃度同時測定から,ジルコン結晶化時のアダカイト質マグマと非アダカイト質マグマの時間-温度(t-T)履歴を明らかにした.アダカイト質マグマは約120 Maにおよそ940 ℃から740 ℃まで冷却し,それに対して,非アダカイト質マグマは約125 Maにおよそ1070 ℃から830 ℃まで冷却したと解釈できた.
さらに,ジルコンのHf同位体組成からはマグマの起源(大陸地殻,マントルなど)の相違を議論できる(Belousova et al., 2010, Lithos).アダカイト質マグマと非アダカイト質マグマのジルコンについて,Hf同位体組成分析を実施したため,本発表では両マグマの起源についても議論する.Hf同位体組成分析を実施した分析点はU-Pb年代・Ti濃度の分析点と重ねるように設定し,すべてのデータを関連付けた議論が可能なように設定した.すなわち,既述のP-T履歴とt-T履歴を組み合わせた議論及びジルコンのHf同位体組成分析から明らかとなるマグマの起源の相違に関する議論から,アダカイト質マグマと非アダカイト質マグマについて,発生から貫入・上昇,定置,固化に至るまでの貫入・定置プロセスの相違について報告する.なお,本報告には経済産業省資源エネルギー庁委託事業「令和5年度高レベル放射性廃棄物等の地層処分に関する技術開発事業(地質環境長期安定性総合評価技術開発)」(JPJ007597)の成果の一部を使用している.
島弧-海溝系の沈み込み帯におけるフレアアップ期の火成活動を解明する上で,北上山地の深成岩体は,マグマの生成量が増大する白亜紀「フレアアップ期(Pastor-Galán et al., 2021, EPSL)」に形成され,また「アダカイト質マグマ」と「非アダカイト質マグマ(カルクアルカリ~ショショナイト質マグマ)」(土谷ほか, 2015, GKK)の特徴を併せ持つため,本研究において最適な研究対象である.特に,北部北上山地に位置する深成岩体である堺ノ神深成岩体を研究対象とする.北上山地の深成岩体の産状は,非アダカイト質マグマ単独で形成されるカルクアルカリ~ショショナイト質深成岩類と,アダカイト質岩の周囲に非アダカイト質岩が分布する累帯深成岩体の2つのタイプに分類される(土谷ほか, 2015, GKK).一方,堺ノ神岩体は筆者らの露頭調査や岩石学的研究により,中心部のアダカイト質岩とその周囲の非アダカイト質岩によって構成されるものの,明瞭な累帯構造を呈さないことが明らかとなっている.このことから,土谷ほか (2015, GKK)で示される産状とは異なる岩体であることが示唆されている.つまり,土谷ほか (2015, GKK)で提案されるマグマの貫入・定置モデルとは異なる形成様式を持つ可能性がある.このため,本研究は堺ノ神岩体の発生から貫入・定置プロセスを解明する.堺ノ神岩体の発生から貫入・定置プロセスの解明は,フレアアップ期の大陸地殻浅部への大量のマグマ供給に由来する大陸地殻の発達・進化の理解に貢献する.
本研究では,堺ノ神岩体に対し,岩石学的研究と年代学的研究を実施した.また,標高の異なる露頭から採取した多くのサンプルを使用することで,マグマの空間的な貫入・定置プロセス(冷却過程,定性的な貫入速度など)について考察できる.岩石学的研究ではホルンブレンドの化学組成から結晶化温度と圧力を導出し,ホルンブレンド結晶化時のアダカイト質マグマと非アダカイト質マグマの温度-圧力(P-T)履歴を解明した.導出した圧力を深度に読み替えたところ,アダカイト質マグマは約850 ℃から740 ℃への冷却に伴い,およそ深度11 kmから5 kmに上昇したことがわかった.一方で,非アダカイト質マグマは約940 ℃から700 ℃への冷却に伴い,およそ深度22 kmから6 kmに上昇したと解釈できた.最終的に2つのマグマは,深度約4-7 kmに温度700 ℃で定置したことが示唆された.年代学的研究では,ジルコンU-Pb年代・Ti濃度同時測定から,ジルコン結晶化時のアダカイト質マグマと非アダカイト質マグマの時間-温度(t-T)履歴を明らかにした.アダカイト質マグマは約120 Maにおよそ940 ℃から740 ℃まで冷却し,それに対して,非アダカイト質マグマは約125 Maにおよそ1070 ℃から830 ℃まで冷却したと解釈できた.
さらに,ジルコンのHf同位体組成からはマグマの起源(大陸地殻,マントルなど)の相違を議論できる(Belousova et al., 2010, Lithos).アダカイト質マグマと非アダカイト質マグマのジルコンについて,Hf同位体組成分析を実施したため,本発表では両マグマの起源についても議論する.Hf同位体組成分析を実施した分析点はU-Pb年代・Ti濃度の分析点と重ねるように設定し,すべてのデータを関連付けた議論が可能なように設定した.すなわち,既述のP-T履歴とt-T履歴を組み合わせた議論及びジルコンのHf同位体組成分析から明らかとなるマグマの起源の相違に関する議論から,アダカイト質マグマと非アダカイト質マグマについて,発生から貫入・上昇,定置,固化に至るまでの貫入・定置プロセスの相違について報告する.なお,本報告には経済産業省資源エネルギー庁委託事業「令和5年度高レベル放射性廃棄物等の地層処分に関する技術開発事業(地質環境長期安定性総合評価技術開発)」(JPJ007597)の成果の一部を使用している.
コメント
コメントの閲覧・投稿にはログインが必要です。ログイン