講演情報
[T6-P-11]貫入岩のライフタイム。中新統油谷湾層群中の苦鉄質貫入岩の例
*坂口 有人1、池上 翔陽2、中野 敬太3 (1. 山口大学大学院創成科学研究科、2. 株式会社トレーダー、3. 地方独立行政法人 北海道立総合研究機構)
キーワード:
接触変成作用、ダイク、熱モデル
堆積層中の貫入火成岩の岩種、最高温度、形成年代などは岩石学的手法により推定できる。その一方で、マグマが貫入部を流路として移動し続け、定置し、そして冷却するというマグマのライフタイムの推定は容易ではない。貫入岩周辺の堆積層は、マグマの熱により接触変成作用を被る。その熱的影響の強さと範囲は、マグマの温度、加熱時間、岩石の熱物性により決まる。
陸源性堆積岩には炭質物が含まれており、地質温度計であるビトリナイト反射率分析を行うことができる。ビトリナイトは、温度と被熱時間の両方の影響を受けながら不可逆的に反射率を増加させていく。このビトリナイトの反射率増加作用は、反応速度論的に解かれており(Sweeney and Burnham, 1990)、堆積岩の熱物性値が既知の場合、熱源からの一次元熱伝導モデルを仮定することで、堆積岩が被った最高温度と継続時間を推定することができる。
山口県西部の中新統油谷湾層群(葦津・岡田,1989)は砂質岩優勢な緩傾斜の地層である。この地層中に火成岩は顕著ではなく、ごく小規模なダイクやシルが稀に散在する。本研究は、地層と高角に交差する厚さ約10mの苦鉄質岩のダイクを対象とする。周囲に関連する火成岩はみあたらず、孤立した貫入岩であると推定される。周辺層は砂質優勢のほぼ水平層であるのに対して、貫入岩はN40E78Sの急傾斜の走向傾斜を持ち、直線性の高い板状に産する。そのため貫入岩の壁面から熱は周辺層に一次元に伝導したと仮定できる。貫入岩近傍から、約1100mまでの範囲から15試料の有効なビトリナイト反射率値が得られた。貫入岩近傍でビトリナイト反射率は最大値の約3.6%が得られ、離れるにつれて急減し、最小値は0.5%であった。このようなビトリナイト反射率の減衰パターンを満足するための、熱源温度と被熱時間を、ビトリナイトの反応速度論に基づく熱モデルから捜索した。堆積層の熱物性値を一般的な値を用いた暫定解析では、約460℃以上の熱が数年間持続されることで、今研究で得られたビトリナイト反射率の減衰パターンが形成されることがわかった。これは暫定解析値であるが、本研究の貫入岩のライフタイムがかなり短く、マグマの供給はごく短期間だったことを示唆する。
引用文献
葦津賢一・岡田博有,1989,山口県新第三紀油谷湾層群の堆積地質学的研究,九州大学理学部研究報告,地質学, 16, 1-17.Sweeney, J. J. and Burnham, A. K., 1990, The American Association of Petroleum Geologists Bulletin, 74, 10 1559 1570.
陸源性堆積岩には炭質物が含まれており、地質温度計であるビトリナイト反射率分析を行うことができる。ビトリナイトは、温度と被熱時間の両方の影響を受けながら不可逆的に反射率を増加させていく。このビトリナイトの反射率増加作用は、反応速度論的に解かれており(Sweeney and Burnham, 1990)、堆積岩の熱物性値が既知の場合、熱源からの一次元熱伝導モデルを仮定することで、堆積岩が被った最高温度と継続時間を推定することができる。
山口県西部の中新統油谷湾層群(葦津・岡田,1989)は砂質岩優勢な緩傾斜の地層である。この地層中に火成岩は顕著ではなく、ごく小規模なダイクやシルが稀に散在する。本研究は、地層と高角に交差する厚さ約10mの苦鉄質岩のダイクを対象とする。周囲に関連する火成岩はみあたらず、孤立した貫入岩であると推定される。周辺層は砂質優勢のほぼ水平層であるのに対して、貫入岩はN40E78Sの急傾斜の走向傾斜を持ち、直線性の高い板状に産する。そのため貫入岩の壁面から熱は周辺層に一次元に伝導したと仮定できる。貫入岩近傍から、約1100mまでの範囲から15試料の有効なビトリナイト反射率値が得られた。貫入岩近傍でビトリナイト反射率は最大値の約3.6%が得られ、離れるにつれて急減し、最小値は0.5%であった。このようなビトリナイト反射率の減衰パターンを満足するための、熱源温度と被熱時間を、ビトリナイトの反応速度論に基づく熱モデルから捜索した。堆積層の熱物性値を一般的な値を用いた暫定解析では、約460℃以上の熱が数年間持続されることで、今研究で得られたビトリナイト反射率の減衰パターンが形成されることがわかった。これは暫定解析値であるが、本研究の貫入岩のライフタイムがかなり短く、マグマの供給はごく短期間だったことを示唆する。
引用文献
葦津賢一・岡田博有,1989,山口県新第三紀油谷湾層群の堆積地質学的研究,九州大学理学部研究報告,地質学, 16, 1-17.Sweeney, J. J. and Burnham, A. K., 1990, The American Association of Petroleum Geologists Bulletin, 74, 10 1559 1570.
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