講演情報
[T6-P-12]栃木県鹿沼市北西部,古第三紀カルデラ埋積堆積物の再検討
*佐藤 大介1 (1. 産総研地質調査総合センター)
キーワード:
地質図、古第三紀、いろは坂溶結凝灰岩類、カルデラ、栃木
はじめに 足尾山地北部の日光市南部〜鹿沼市北部周辺には,白亜紀〜古第三紀の珪長質火成岩が広く分布する.そのうち火山岩は,奥日光流紋岩類(河田,1966)または同時期の貫入岩と合わせて中禅寺型酸性岩類(矢内,1972)と呼ばれており,下位より松木川流紋岩体,いろは坂溶結凝灰岩類,半月山溶結凝灰岩類からなる(矢内,1972;根岸ほか,2002).
目的と調査対象 矢内(1973)は,中禅寺型酸性岩類が火山-深成複合岩体をなすことから,その形成機構はバイアス型カルデラに類似するとしたが,地質的な検討は十分になされていない.そこで陥没カルデラの検討のため,火山岩と基盤岩が連続的に観察できる火山岩分布域南東部の調査を行い,その地質と年代について報告する.
カルデラ埋積堆積物の概要 従来,本火山岩分布域縁辺部には,ジュラ系付加体の岩石が基盤岩として分布するとされていたが(根岸ほか,2002など),本調査で火山岩と基盤岩との間に崖錐性の角礫岩が水平距離数100 mにわたって分布することが明らかとなった.火山岩と角礫岩,角礫岩と基盤岩のそれぞれの境界は断層ないし岩脈で隔てられている.角礫岩はジュラ系付加体由来の泥岩(一部,チャート及び砂岩)を主体とする.角礫岩分布域の下位には破砕などが認められない泥岩が僅かに露出し,その走向傾斜は基盤岩のジュラ系付加体の走向傾斜と概ね一致する.
火山岩は主にいろは坂溶結凝灰岩類からなり,その上位に半月山溶結凝灰岩類相当の岩石が僅かに露出する.火山岩分布域には上記の角礫岩は認められない.いろは坂溶結凝灰岩には,下部から上部に向かって凝灰角礫岩〜火山礫凝灰岩〜凝灰岩の漸移的な変化の繰り返しが少なくとも3回あり,凝灰岩と凝灰角礫岩の間には砕屑岩が挟まる.いろは坂溶結凝灰岩類とその上位の半月山溶結凝灰岩類相当岩との直接の関係は確認できていないが,砕屑岩はなく両者の間に顕著な時間間隙は認められない.
角礫岩は無層理・不淘汰な岩塊相からなり,径10 mを超えるブロックも認められることから,カルデラ壁崩壊のような大規模崩壊に伴い形成し,角礫岩の下位に露出する泥岩はカルデラ床の可能性がある.また,角礫岩中には一部に火成岩由来の粒子が認められるほか,角礫岩の上部〜頂部では火砕岩が被覆ないし指交することがあり,角礫岩は火砕岩の堆積直前以降に堆積したと考えられる.
以上の火山岩・角礫岩の分布・産状から,本地域では少なくとも4回の噴火及び2回の陥没による階段状のカルデラ床の沈下があったと想定される.
形成年代 いろは坂溶結凝灰岩類,境界岩脈,半月山溶結凝灰岩類相当岩を対象にジルコンU–Pb年代を依頼測定した.その結果,層序・貫入関係と矛盾しない64.8 ± 0.4 Ma〜63.7 ± 0.4 Maの年代が得られ,本地域の火山岩は1 Myr程度で形成したと考えられる.
引用文献 河田清雄(1966)地球科学, 84, 6–13;根岸義光ほか(2002)地球科学, 56, 269–288;矢内桂三(1972)岩鉱, 67, 193–202;矢内桂三(1973)岩鉱, 68, 78–86.
目的と調査対象 矢内(1973)は,中禅寺型酸性岩類が火山-深成複合岩体をなすことから,その形成機構はバイアス型カルデラに類似するとしたが,地質的な検討は十分になされていない.そこで陥没カルデラの検討のため,火山岩と基盤岩が連続的に観察できる火山岩分布域南東部の調査を行い,その地質と年代について報告する.
カルデラ埋積堆積物の概要 従来,本火山岩分布域縁辺部には,ジュラ系付加体の岩石が基盤岩として分布するとされていたが(根岸ほか,2002など),本調査で火山岩と基盤岩との間に崖錐性の角礫岩が水平距離数100 mにわたって分布することが明らかとなった.火山岩と角礫岩,角礫岩と基盤岩のそれぞれの境界は断層ないし岩脈で隔てられている.角礫岩はジュラ系付加体由来の泥岩(一部,チャート及び砂岩)を主体とする.角礫岩分布域の下位には破砕などが認められない泥岩が僅かに露出し,その走向傾斜は基盤岩のジュラ系付加体の走向傾斜と概ね一致する.
火山岩は主にいろは坂溶結凝灰岩類からなり,その上位に半月山溶結凝灰岩類相当の岩石が僅かに露出する.火山岩分布域には上記の角礫岩は認められない.いろは坂溶結凝灰岩には,下部から上部に向かって凝灰角礫岩〜火山礫凝灰岩〜凝灰岩の漸移的な変化の繰り返しが少なくとも3回あり,凝灰岩と凝灰角礫岩の間には砕屑岩が挟まる.いろは坂溶結凝灰岩類とその上位の半月山溶結凝灰岩類相当岩との直接の関係は確認できていないが,砕屑岩はなく両者の間に顕著な時間間隙は認められない.
角礫岩は無層理・不淘汰な岩塊相からなり,径10 mを超えるブロックも認められることから,カルデラ壁崩壊のような大規模崩壊に伴い形成し,角礫岩の下位に露出する泥岩はカルデラ床の可能性がある.また,角礫岩中には一部に火成岩由来の粒子が認められるほか,角礫岩の上部〜頂部では火砕岩が被覆ないし指交することがあり,角礫岩は火砕岩の堆積直前以降に堆積したと考えられる.
以上の火山岩・角礫岩の分布・産状から,本地域では少なくとも4回の噴火及び2回の陥没による階段状のカルデラ床の沈下があったと想定される.
形成年代 いろは坂溶結凝灰岩類,境界岩脈,半月山溶結凝灰岩類相当岩を対象にジルコンU–Pb年代を依頼測定した.その結果,層序・貫入関係と矛盾しない64.8 ± 0.4 Ma〜63.7 ± 0.4 Maの年代が得られ,本地域の火山岩は1 Myr程度で形成したと考えられる.
引用文献 河田清雄(1966)地球科学, 84, 6–13;根岸義光ほか(2002)地球科学, 56, 269–288;矢内桂三(1972)岩鉱, 67, 193–202;矢内桂三(1973)岩鉱, 68, 78–86.
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