講演情報
[T7-P-3]西南日本外帯に分布する中期中新世岩体の熱年代学的解釈
*福田 将眞1、新正 裕尚2、安間 了3、鏡味 沙耶1、Kohn Barry4 (1. 日本原子力研究開発機構、2. 東京経済大学、3. 徳島大学、4. メルボルン大学)
キーワード:
熱年代学、中期中新世、フィッション・トラック法、(U-Th)/He法、西南日本弧
日本列島は,大陸プレートの下に海洋プレートが沈み込むプレート収束帯に分類され,沈み込みに伴うテクトニクスによって地震活動や火成活動,造山運動などが活発な地域である.日本列島が島弧として成立したイベントである日本海拡大によって中国大陸縁辺部から分裂・移動し,西南日本弧は18~16 Maに時計回り回転によって現在の位置に移動してきたとされる.中央構造線より南部の西南日本弧外帯では,同時代の火成活動の根拠となる中期中新世の火山岩が分布することが知られており,大規模なテクトニックイベントとの関連が示唆される(中嶋,2018,地質雑)ものの,テクトニクスモデルや岩体の定置・形成メカニズムについては現在も議論が続けられている.本研究では,西南日本外帯に分布する中期中新世の岩体について,貫入・定置後の隆起・削剥による熱履歴の復元のため,同一試料を対象に複数手法の熱年代法の適用を試みた.用いた熱年代法は閉鎖温度が比較的低温(<300℃)であるアパタイトフィッション・トラック(AFT)法やアパタイト・ジルコン(U-Th)/He(それぞれ,AHe,ZHe)法である.AFT年代分析は,日本原子力研究開発機構 東濃地科学センターに設置されたFT自動計測装置(TrackScan Plus Professional)を用いてFT密度の計測,レーザーアブレーション装置を備えた誘導結合プラズマ質量分析装置(Analyte G2: ArF 193 nm excimer laser+iCAP TQ: TQ-ICP-MS)を用いてウラン濃度定量分析をそれぞれ行った.AHe・ZHe年代分析はメルボルン大学にて実施した.本研究で対象とした地質試料は,東から順に主に石鎚山,宇和島,沖ノ島,種子島,屋久島で採取された岩石試料である.このうち,種子島の試料のみであり,そのほかの試料は全て花崗岩類である.花崗岩類の形成年代については,先行研究によりおよそ(Shinjoe et al., 2021, Geol. Magaz.),熱年代分析の結果,ZHe年代は約12~7 Ma,AFT年代は誤差範囲の大きいデータを一部含むが約27~9 Ma,AHe年代は8~6 Maが得られた(一部は福田ほか in press, FTNLから引用).本講演では各岩体で得られている熱履歴について議論する予定である.全体的な傾向として,得られたそれぞれの年代値は,閉鎖温度を考慮すると上述の既報U-Pb年代および黒雲母K-Ar年代よりも有意に若いか誤差範囲で重複しているため,概ね整合的なデータであると解釈される.これらは手法に依らず10 Ma前後の年代値であり,中期中新世の形成年代からは明らかな若返りを被っている.これらはフィリピン海プレートの沈み込みに伴う広域的なテクトニックイベントに基づく隆起・削剥の影響が推察され,具体的には6 Ma頃のフィリピン海プレートの沈み込み再開(Kimura et al., 2014, Tectonics)などのイベントによって,部分的に若返りを受けた可能性が示唆される.また,紀伊半島や四国南部に分布する四万十帯中の堆積岩におけるアパタイトのFT熱史解析により,5~2 Ma頃の急冷が推定されている(荒田・長谷部,2008;2009,FTNL).今後の展望として,本研究の試料を用いたアパタイトFT法に基づく詳細な熱史解析やより低温の熱年代法(例えば,OSL熱年代法)の適用によって,より詳細な冷却履歴の復元に寄与できると期待される.【謝辞】本研究は科学研究費補助金助成事業(若手研究:西南日本弧における熱年代学的研究:南海トラフ巨大地震のメカニズム解明を目指して,代表:福田 将眞)の成果の一部を使用している(21K14021).
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