講演情報
[T7-P-6]熊野灘における海底圧力変化の考察: 海底下の流体と地下構造との関係
*有吉 慶介1、永野 憲1、長谷川 拓也2、中野 優1、松本 浩幸1、荒木 英一郎1、堀 高峰1、高橋 成実3 (1. 海洋研究開発機構、2. 気象庁、3. 防災科学技術研究所)
キーワード:
圧力球根、間隙水、海底地殻変動
1.はじめに
熊野灘には長期孔内観測システム (LTBMS: Long-Term Borehole Measurement System) の中に、間隙圧を測定する水圧計が搭載されている。海底にある孔口にも同様の水圧計が設置されており、気象・海象起源によるノイズを除去し、海底地殻変動成分を抽出することが可能となっている。LTBMSと周辺に敷設されている海底ケーブル式地震観測網 (DONET: Deep Oceanfloor Network for Earthquakes and Tsunamis) の地震計(広帯域地震計・強震計)および圧力計を併用することで、通常の地震活動に加えて、人間では揺れを感じないスロー地震と呼ばれる現象も検知することが可能となっている。これまで、水圧計の静的な変化は、スロー地震の一種であるスロースリップイベントに伴う断層運動で説明してきたが、過去の間隙圧の記録を調べてみると、必ずしもスロースリップイベントでは説明できない可能性のある特徴的な変化が2013年に起きていることを見出した。本講演では、その要因および起源について考察を行った結果を報告する。
2.データ
DONETに設置されている海底圧力計にも、海洋変動や潮汐の影響が含まれている。そこで、過去の研究事例に倣って同じノード内でスタックしたものを差し引くことで、それらのノイズを軽減させたデータを用いた。海象擾乱の定量的な評価として、JCOPE (Japan Coastal Ocean Predictability Experiment) と呼ばれる海洋モデルを用いて、定量評価を行った。その結果、B-node 付近の海底圧力に静的な変化が生じている期間中、黒潮蛇行が起きていることが分かった。
3.議論
黒潮蛇行の特徴については、海底地殻変動成分として抽出した海底圧力データに対してスペクトル解析を行った結果、50-100km, 40-50日程度となった。これは、時空間的にメソスケールに相当することを定量的に立証するものである。静的な変化を断層モデルで説明しようとすると、大規模なすべりが想定される。そこで、球状およびシル状の圧力源を想定したモデル化を試みた。その結果、海底下 3-6km 程度の深さに、半径3-5 km 程度の大きさの間隙圧力源によって説明できることが分かった。この結果は、他の研究結果で推定された間隙水の構造と整合するものである。本発表を通じて、岩石に対する間隙圧変化の許容範囲や地質学の知見に基づく海底下の上部地殻における流体の移動範囲の可能性について議論できる機会としたい。
熊野灘には長期孔内観測システム (LTBMS: Long-Term Borehole Measurement System) の中に、間隙圧を測定する水圧計が搭載されている。海底にある孔口にも同様の水圧計が設置されており、気象・海象起源によるノイズを除去し、海底地殻変動成分を抽出することが可能となっている。LTBMSと周辺に敷設されている海底ケーブル式地震観測網 (DONET: Deep Oceanfloor Network for Earthquakes and Tsunamis) の地震計(広帯域地震計・強震計)および圧力計を併用することで、通常の地震活動に加えて、人間では揺れを感じないスロー地震と呼ばれる現象も検知することが可能となっている。これまで、水圧計の静的な変化は、スロー地震の一種であるスロースリップイベントに伴う断層運動で説明してきたが、過去の間隙圧の記録を調べてみると、必ずしもスロースリップイベントでは説明できない可能性のある特徴的な変化が2013年に起きていることを見出した。本講演では、その要因および起源について考察を行った結果を報告する。
2.データ
DONETに設置されている海底圧力計にも、海洋変動や潮汐の影響が含まれている。そこで、過去の研究事例に倣って同じノード内でスタックしたものを差し引くことで、それらのノイズを軽減させたデータを用いた。海象擾乱の定量的な評価として、JCOPE (Japan Coastal Ocean Predictability Experiment) と呼ばれる海洋モデルを用いて、定量評価を行った。その結果、B-node 付近の海底圧力に静的な変化が生じている期間中、黒潮蛇行が起きていることが分かった。
3.議論
黒潮蛇行の特徴については、海底地殻変動成分として抽出した海底圧力データに対してスペクトル解析を行った結果、50-100km, 40-50日程度となった。これは、時空間的にメソスケールに相当することを定量的に立証するものである。静的な変化を断層モデルで説明しようとすると、大規模なすべりが想定される。そこで、球状およびシル状の圧力源を想定したモデル化を試みた。その結果、海底下 3-6km 程度の深さに、半径3-5 km 程度の大きさの間隙圧力源によって説明できることが分かった。この結果は、他の研究結果で推定された間隙水の構造と整合するものである。本発表を通じて、岩石に対する間隙圧変化の許容範囲や地質学の知見に基づく海底下の上部地殻における流体の移動範囲の可能性について議論できる機会としたい。
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