講演情報
[T7-P-13]山形県鶴岡市南西部における応力場の解析
*岡田 尚大1、小林 健太1 (1. 新潟大学)
キーワード:
小断層、褶曲、多重逆解法、朝日山系摩耶山地、山形県
朝日山系摩耶山地北端部に位置し,庄内平野と山地の間に位置する山形県鶴岡地域では,新第三紀層中に褶曲構造がよく見られ,新第三紀以降に東北日本に加わった応力の影響を観察することができる.そこで本研究では,山形県鶴岡市南西部を対象に,地質調査及び研磨片・薄片作成やXRD分析等の各種室内作業を行い,山野井(1991)をもとに詳細な地質図を作成し,地質構造を把握するとともに形成過程を考察することを目的とした.
野外踏査の結果,本地域には,下位から基盤岩となる花崗岩類,その上位に不整合に堆積する,主に凝灰質砂岩・泥岩からなる新第三紀の善宝寺層,そこに整合に堆積する,同様に凝灰質砂岩・泥岩を主とする大山層が分布していた.新第三紀層について,善宝寺層からは珪化木が,大山層からは軟体動物の化石が産出された.
地質構造について,従来本地域の新第三紀層は鶴岡図幅地域でみられる褶曲の翼部にあたるとされていたが,層理面は北西~北東傾斜であり, NNE-SSW方向に北プランジする褶曲軸をもつ,ENE-WSW方向圧縮を示唆する短波長の褶曲の繰り返し構造が見られた.
加えて,本地域で見られる小断層から30セットのスリップデータを測定し,多重逆解法を用いて本地域の古応力を求めたところ,鉛直方向σ1,ENE-WSW方向σ3という正断層型の解と,NW-SE方向σ1,NE-SW方向σ3という横ずれ断層型の解が得られた.これらの小断層について傾動補正を行ったところ,傾動補正0%の状態でクラスターの集中がよく見られた.
また,新第三紀層について,善宝寺層と大山層の両層でみられる凝灰質砂岩・泥岩は化石が産出されない場合での野外における区別が難しいため,サンプルを採取し,室内にて全岩非定方位のXRD分析を行ったところ,石英の相対量比に差が見られた.
本研究地域に隣接する,土谷ほか(1984)の鶴岡図幅地域の地質断面図を読み取ると,本地域で見られた褶曲構造は,約3.6~2.6 Maに形成されたものであると考えられる.このことは,Sato(1994)で唱えられている東北日本の応力変遷とも調和的な結果である.しかし,本地域の小断層からは,褶曲を形成したと考えられる最大圧縮方向と同方向をσ3とする解が得られた.また,傾動補正0%で多重逆解法を行った状態が最もクラスターのまとまりがよかったことから,本地域で見られた小断層は,褶曲構造の完成以降に形成されたと考えられる.このことから,本地域でみられる正断層型のクラスターは,褶曲の形成と同時期にbending-moment faultによって,横ずれ断層型のクラスターは,花弁構造もしくは断層面の再利用によって形成されたものであると考えられる.
引用文献 [1]Sato, H.,1994,The relationship between late Cenozoic tectonic events and stress field and basin development in northeast Japan,JOURNAL OF GEOPHYSICAL RESEARCH, VOL. 99, NO. B11, PAGES 22,261-22,27 [2]土谷信之・大沢穠・池辺穣,1984,鶴岡地域の地質,地域地質研究報告(5万分の1図幅),地質調査所,77p [3]山野井 徹,1991,5万分の1表層地質図「三瀬・温海」・同説明書,土地分類基本調査,山形県,51p
野外踏査の結果,本地域には,下位から基盤岩となる花崗岩類,その上位に不整合に堆積する,主に凝灰質砂岩・泥岩からなる新第三紀の善宝寺層,そこに整合に堆積する,同様に凝灰質砂岩・泥岩を主とする大山層が分布していた.新第三紀層について,善宝寺層からは珪化木が,大山層からは軟体動物の化石が産出された.
地質構造について,従来本地域の新第三紀層は鶴岡図幅地域でみられる褶曲の翼部にあたるとされていたが,層理面は北西~北東傾斜であり, NNE-SSW方向に北プランジする褶曲軸をもつ,ENE-WSW方向圧縮を示唆する短波長の褶曲の繰り返し構造が見られた.
加えて,本地域で見られる小断層から30セットのスリップデータを測定し,多重逆解法を用いて本地域の古応力を求めたところ,鉛直方向σ1,ENE-WSW方向σ3という正断層型の解と,NW-SE方向σ1,NE-SW方向σ3という横ずれ断層型の解が得られた.これらの小断層について傾動補正を行ったところ,傾動補正0%の状態でクラスターの集中がよく見られた.
また,新第三紀層について,善宝寺層と大山層の両層でみられる凝灰質砂岩・泥岩は化石が産出されない場合での野外における区別が難しいため,サンプルを採取し,室内にて全岩非定方位のXRD分析を行ったところ,石英の相対量比に差が見られた.
本研究地域に隣接する,土谷ほか(1984)の鶴岡図幅地域の地質断面図を読み取ると,本地域で見られた褶曲構造は,約3.6~2.6 Maに形成されたものであると考えられる.このことは,Sato(1994)で唱えられている東北日本の応力変遷とも調和的な結果である.しかし,本地域の小断層からは,褶曲を形成したと考えられる最大圧縮方向と同方向をσ3とする解が得られた.また,傾動補正0%で多重逆解法を行った状態が最もクラスターのまとまりがよかったことから,本地域で見られた小断層は,褶曲構造の完成以降に形成されたと考えられる.このことから,本地域でみられる正断層型のクラスターは,褶曲の形成と同時期にbending-moment faultによって,横ずれ断層型のクラスターは,花弁構造もしくは断層面の再利用によって形成されたものであると考えられる.
引用文献 [1]Sato, H.,1994,The relationship between late Cenozoic tectonic events and stress field and basin development in northeast Japan,JOURNAL OF GEOPHYSICAL RESEARCH, VOL. 99, NO. B11, PAGES 22,261-22,27 [2]土谷信之・大沢穠・池辺穣,1984,鶴岡地域の地質,地域地質研究報告(5万分の1図幅),地質調査所,77p [3]山野井 徹,1991,5万分の1表層地質図「三瀬・温海」・同説明書,土地分類基本調査,山形県,51p
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