講演情報
[T7-P-17]歪速度変化による固結粒状体内部の歪分布への影響
*八塚 伸明1、月俣 涼太2、中谷 正生3、竹内 昭洋3、坂口 有人1 (1. 山口大学大学院創成科学研究科、2. 福岡市役所、3. 東京大学地震研究所)
キーワード:
固結粒状体、歪分布、歪速度、一軸圧縮、三軸圧縮
[はじめに] 岩石の圧縮破壊試験において、歪速度の上昇につれて岩石の破壊強度が増加する載荷速度依存性が報告されており(羽柴ら, 2005)、歪速度変化が試料の物性を変化させることが明らかになっている。岩石のような固結粒状体内部の歪分布は複雑であり、これまでは主に数値実験(例えば、Qin et al., 2021)や、光弾性体によるアナログ実験(例えばJoe et al., 2012)によって検討されてきた。これらの実験では粒子を球体とし、サイズ分布も粒子数も制限された条件で解析されてきた。岩石を構成する粒子はサイズも形状も多様であり、しかも岩石はきわめて多数の粒子から構成される。数値シミュレーションやアナログ実験には限界がある。これまで歪速度変化による歪分布に焦点を当てた研究は行われてこなかった。これは、内部の歪分布を知るための手法が無かったためである。試料内部の歪分布を知る新たな手法としてカルサイト歪計がある。カルサイトは歪みに応じて結晶内部に双晶変形を生じさせる特性があり(Sakaguchi et al., 2011)、双晶密度は歪量に比例することから、双晶密度は歪計として使用できる(坂口・安藤, 2022)。このカルサイト歪計をマイクロセンサーとして粒状体内部の歪分布を解析することができる。
[手法] 水熱合成された双晶変形を含まない合成カルサイトを高強度モルタルに2.7もしくは4.0重量%混ぜ込んだ模擬岩石を供試体とする。合成カルサイトは、歪がゼロの状態からの実験・測定を行うことができるという利点がある。セメント/水の比率が標準である場合は、一軸圧縮強度約100 MPa、三軸圧縮強度約180 MPa(封圧20 MPa条件下)の高強度モルタル供試体を作成できる。また、水の比率を2倍に増やすことで一軸圧縮強度約50 MPaの低強度モルタル供試体も作成できる。また、カルサイト粒子を多量に含む天然の砂岩も用いて比較する。使用する砂岩の一軸圧縮強度は約350 MPaである。高強度モルタル供試体、低強度モルタル供試体を約4.2×10⁻², 8.3×10⁻², 1.3×10⁻¹, 1.7×10⁻¹, 2.1×10⁻¹ /secの歪速度、砂岩を約2.5×10⁻², 5.2×10⁻², 1.0×10⁻¹, 1.6×10⁻¹, 2.1×10⁻¹ /secの歪速度で一軸圧縮試験を行う。また、高強度モルタル供試体を用いて2.1×10⁻², 4.2×10⁻² /secの歪速度で三軸圧縮試験を行う。そして偏光顕微鏡を用いて、薄片におけるカルサイト粒子の座標、双晶密度を測定し、カルサイト粒子と破壊面との距離の関係について検討を行う。破壊面との距離については、見かけの距離にはなるが、薄片を作成する際に破壊面に対して直交方向に切断することで、距離の誤差を小さくしている。
[結果・議論] 一軸圧縮試験では、破壊強度約100 MPaの高強度モルタル供試体の場合は、歪速度約1.7×10⁻¹ /sec以上で破壊面近縁における歪分布の偏りが顕著に現れた。その一方で、破壊強度約50 MPaの低強度モルタル供試体の場合、破壊面近縁における歪分布の偏りは、歪速度を約2.1×10⁻¹ /secにまで上げても顕著には現れなかった。また、カルサイト粒子を多く含む天然の砂岩(破壊強度約350 MPa)の供試体は、歪速度約1.0×10⁻¹ /sec以上で破壊面近縁における歪分布の偏りが顕著に現れた。しかし、歪速度を約1.6×10⁻¹ /sec以上に上昇させたとき、更に破壊面近縁への歪分布の偏りの傾向が増すことはなかった。一軸圧縮試験では人工的な岩石(模擬岩石)、天然の岩石(砂岩)のいずれにおいても、歪速度が大きくなると、破壊面近縁への高歪の偏りが大きくなる傾向が確認できた。そして、破壊強度が大きくなると、破壊面近縁への高歪の偏りを示し始める歪速度は低くなることが確認できた。また封圧20 MPa条件下で行った三軸圧縮試験では、高強度モルタル供試体の場合、歪速度約4.2×10⁻² /sec時、破壊面近縁への歪速度の偏りが顕著に現れた。
[引用文献]
羽柴ほか(2005), 資源と素材(Shigen-to Sozai) Vol.121 p.11-18
Joe et al.(2012), Journal of Geophysical Research, Volume117, Issue F1
坂口・安藤(2022), 国際特許, WO 2022/009957 AI
Sakaguchi et al.(2011), Geophysical Research Letters, 38, L09316
Qin et al.(2021), Scientific Reports, volume 11, Article number 4753
[手法] 水熱合成された双晶変形を含まない合成カルサイトを高強度モルタルに2.7もしくは4.0重量%混ぜ込んだ模擬岩石を供試体とする。合成カルサイトは、歪がゼロの状態からの実験・測定を行うことができるという利点がある。セメント/水の比率が標準である場合は、一軸圧縮強度約100 MPa、三軸圧縮強度約180 MPa(封圧20 MPa条件下)の高強度モルタル供試体を作成できる。また、水の比率を2倍に増やすことで一軸圧縮強度約50 MPaの低強度モルタル供試体も作成できる。また、カルサイト粒子を多量に含む天然の砂岩も用いて比較する。使用する砂岩の一軸圧縮強度は約350 MPaである。高強度モルタル供試体、低強度モルタル供試体を約4.2×10⁻², 8.3×10⁻², 1.3×10⁻¹, 1.7×10⁻¹, 2.1×10⁻¹ /secの歪速度、砂岩を約2.5×10⁻², 5.2×10⁻², 1.0×10⁻¹, 1.6×10⁻¹, 2.1×10⁻¹ /secの歪速度で一軸圧縮試験を行う。また、高強度モルタル供試体を用いて2.1×10⁻², 4.2×10⁻² /secの歪速度で三軸圧縮試験を行う。そして偏光顕微鏡を用いて、薄片におけるカルサイト粒子の座標、双晶密度を測定し、カルサイト粒子と破壊面との距離の関係について検討を行う。破壊面との距離については、見かけの距離にはなるが、薄片を作成する際に破壊面に対して直交方向に切断することで、距離の誤差を小さくしている。
[結果・議論] 一軸圧縮試験では、破壊強度約100 MPaの高強度モルタル供試体の場合は、歪速度約1.7×10⁻¹ /sec以上で破壊面近縁における歪分布の偏りが顕著に現れた。その一方で、破壊強度約50 MPaの低強度モルタル供試体の場合、破壊面近縁における歪分布の偏りは、歪速度を約2.1×10⁻¹ /secにまで上げても顕著には現れなかった。また、カルサイト粒子を多く含む天然の砂岩(破壊強度約350 MPa)の供試体は、歪速度約1.0×10⁻¹ /sec以上で破壊面近縁における歪分布の偏りが顕著に現れた。しかし、歪速度を約1.6×10⁻¹ /sec以上に上昇させたとき、更に破壊面近縁への歪分布の偏りの傾向が増すことはなかった。一軸圧縮試験では人工的な岩石(模擬岩石)、天然の岩石(砂岩)のいずれにおいても、歪速度が大きくなると、破壊面近縁への高歪の偏りが大きくなる傾向が確認できた。そして、破壊強度が大きくなると、破壊面近縁への高歪の偏りを示し始める歪速度は低くなることが確認できた。また封圧20 MPa条件下で行った三軸圧縮試験では、高強度モルタル供試体の場合、歪速度約4.2×10⁻² /sec時、破壊面近縁への歪速度の偏りが顕著に現れた。
[引用文献]
羽柴ほか(2005), 資源と素材(Shigen-to Sozai) Vol.121 p.11-18
Joe et al.(2012), Journal of Geophysical Research, Volume117, Issue F1
坂口・安藤(2022), 国際特許, WO 2022/009957 AI
Sakaguchi et al.(2011), Geophysical Research Letters, 38, L09316
Qin et al.(2021), Scientific Reports, volume 11, Article number 4753
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