講演情報

[T15-P-18]中新統北設亜層群に貫入する砂岩岩脈の産状と砕屑性ジルコンU–Pb年代に基づく砂岩岩脈の供給砂岩層の解明

*藪田 桜子1、竹内 誠1,2、淺原 良浩2、李 琪2 (1. 国立研究開発法人産業技術総合研究所地質調査総合センター、2. 名古屋大学大学院環境学研究科)
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【ハイライト講演】砕屑性岩脈の成因理解のために,岩脈の姿勢や給源を認定することは重要であるが実際の露頭状況では困難なことが多い.筆者らは露頭観察に加えて,ジルコンU-Pb年代を指標として各累層の砂岩と岩脈の砂岩とを比較・対比し,供給源について推定するものである.見えているところから見えないところを推定する層序学の妙味を示す講演となるだろう.(ハイライト講演とは...)

キーワード:

中新世、砂岩岩脈、砕屑性ジルコンU-Pb年代、北設亜層群、設楽層群

砕屑性岩脈の成因を知る上で,岩脈の供給源やそこからの貫入方向(上方・下方・側方)を解明することは不可欠である.しかし,砕屑性岩脈と供給砂岩層の関係を露頭で確認できない場合も多く,成因の議論は困難である.中新統設楽層群北設亜層群の東部地域の地層に貫入する砂岩岩脈においても,砂岩岩脈と供給砂岩層の関係は確認できず(入月・高橋, 1997),貫入形態からも貫入方向を特定できないという問題がある.Yabuta et al. (2023)は,同地域の北設亜層群を,下位より,下部の川角層・下田層および上部の坪沢層・玖老勢層に区分し,下部と上部の境界層準になる下田層梅平砂岩部層で明瞭に砂岩組成や砕屑性ジルコンU–Pb年代が変化することを報告した.本研究では,砂岩岩脈の砂岩組成と砕屑性ジルコンU–Pb年代を求め,北設亜層群の各層の砂岩のものと比較することで,砂岩岩脈の供給砂岩層を解明することを目的とする.砂岩岩脈は入月・高橋(1997)により報告されたものに加えて,より広範囲に分布することがわかった.砂岩岩脈は北設亜層群分布域東部の中央構造線(MTL)から2 km付近に集中して分布し,MTLから3.5 km離れたところにも分布する.また,砂岩岩脈の貫入面はMTLとほぼ平行な北東–南西走向,鉛直で,砂岩岩脈の走向方向に約2 kmの範囲で確認できる.砂岩岩脈のすべてが北設亜層群下部の下田層の泥岩主体層に貫入しており,貫入形態は幅10〜80 cmの平板状で,上方あるいは下方へ収斂するタイプは確認できない.砂岩岩脈には母岩である下田層泥岩の同時浸食礫が含まれる.砂岩岩脈から採取した砂岩試料(Sd-1〜Sd-5)は,いずれも北設亜層群下部の砂岩と同じく極粗粒〜中粒石英長石質砂岩に分類される.これらの試料に含まれる砕屑性ジルコンのU–Pb年代は,ほとんどが後期白亜紀の年代を示し,後期白亜紀の年代に加えてジュラ紀や先カンブリア時代の年代を含む北設亜層群上部の砂岩の年代構成とは異なり,北設亜層群下部の砂岩の年代構成の特徴を示す.また,砂岩岩脈のジルコンU–Pb年代は約95 Maの主要なクラスターと,72〜73 Maの小クラスターからなるという特徴を持ち,北設亜層群下部の梅平砂岩部層(下田層上部)下部の年代クラスター(Yabuta et al., 2023)と類似する(図).これらのジルコンのカソードルミネッセンス(CL)像も,両者で同様な年代をもつジルコンで類似したパターンを呈する.以上の砂岩組成や砕屑性ジルコンのU–Pb年代,CL像の結果から,砂岩岩脈は梅平砂岩部層下部の砂岩を供給源として貫入したと考えられる.
【引用文献】入月・高橋, 1997, 鳳来寺山東部の設楽層群にみられる砕屑性岩脈についての予報. 鳳来寺山自然科学博物館報, 26, 23–29.Yabuta, S., Takeuchi, M. and Asahara, Y., 2023, Detrital zircon U–Pb ages of the Miocene clastic sedimentary succession in the Shidara Basin, central Japan: Implications for provenance changes and timing of collision between the Izu–Ogasawara and Honshu arcs. Journal of Asian Earth Sciences, 241, 105463.

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