講演情報
[T15-P-20]愛知県知多半島に分布する中新統師崎層群上部の放散虫化石年代と古環境
*小林 和哉1、星 博幸2、本山 功1 (1. 山形大学、2. 愛知教育大学)
キーワード:
師崎層群、放散虫、中新統
愛知県知多半島に分布する中新統師崎層群は,微化石や放射年代測定,古地磁気によって年代が推定されている.師崎層群最上部を構成する内海層の堆積年代は珪藻化石と浮遊性有孔虫化石から推定されているが,珪藻化石年代と浮遊性有孔虫化石年代は互いに大きく異なっている.そこで筆者らは,内海層の堆積年代を明らかにする目的で,内海層の放散虫化石層序年代を検討した.また,師崎層群からは多数の化石が産出し,その化石群集に基づき堆積時の古環境が推定されている.しかし,内海層と内海層の下位にある山海層上部は化石の産出がそれらの下位層(山海層下部や豊浜層)に比べて乏しいため,内海層と山海層上部の古環境推定は十分に行われていない.そこで,筆者らは放散虫化石を用いて主に山海層上部と内海層の古環境推定も試みた.
岩石試料を山海層下部の1地点,山海層上部の7地点,内海層の11地点から採取し,放散虫化石の検出を試みた.その結果,12地点で36属31種の放散虫化石が産出した.山海層上部と内海層の試料から,Pentactinosphaera hokurikuensisの多産とCyrtocapsella tetraperaの産出を特徴とする群集,いわゆるP-C群集が認められた.P. hokurikuensisが多産する年代は約18.7~16.6 Maの間であることが示されている(本山・澤田,2014).よって,山海層上部と内海層はP. hokurikuensisの多産帯に相当し,堆積年代は約18.7~16.6 Maの間に含まれると推定される.これらの結果と,師崎層群から報告されている古地磁気極性 (Hayashida, 1986; Hoshi and Matsunaga, 2024) と合わせると,山海層上部と内海層の堆積年代は古地磁気年代のクロンC5Dn(17.466~17.154 Ma)に含まれると考えられる.この年代は珪藻化石から推定される内海層の年代(NPD 2B 帯:伊藤ほか,1999)と整合する一方,内海層の浮遊性有孔虫化石年代(N.9 帯以降:土井,1983)とは一致しない.
山海層下部から内海層にかけて,生息水深が漸深海と推定されているCornutella profundaなどの放散虫化石が産出した.よって,師崎層群上部(山海層下部+内海層)の堆積時の古水深は数100 m程度の漸深海と考えられる.そして,低・中緯度に生息する種と高緯度に生息する種が共に産出したことから,師崎層群上部堆積時には表層に温暖な水塊が分布し,表層より下部に寒冷な水塊が分布していたと考えられる.
引用文献
土井健太郎 (1983) 大阪微化石研究会誌, 10, 14-21.
Hayashida, A. (1986) J. Geomagn. Geoelectr., 38, 295-310.
Hoshi, H. and Matsunaga, A. (2024) Isl. Arc, 33, e12513, doi: 10.1111/iar.12513.
伊藤知佳ほか (1999) 地質学雑誌, 105, 152-155.
本山 功・澤田大毅 (2014) 2014年放散虫研究集会会津大会講演要旨集, 11.
岩石試料を山海層下部の1地点,山海層上部の7地点,内海層の11地点から採取し,放散虫化石の検出を試みた.その結果,12地点で36属31種の放散虫化石が産出した.山海層上部と内海層の試料から,Pentactinosphaera hokurikuensisの多産とCyrtocapsella tetraperaの産出を特徴とする群集,いわゆるP-C群集が認められた.P. hokurikuensisが多産する年代は約18.7~16.6 Maの間であることが示されている(本山・澤田,2014).よって,山海層上部と内海層はP. hokurikuensisの多産帯に相当し,堆積年代は約18.7~16.6 Maの間に含まれると推定される.これらの結果と,師崎層群から報告されている古地磁気極性 (Hayashida, 1986; Hoshi and Matsunaga, 2024) と合わせると,山海層上部と内海層の堆積年代は古地磁気年代のクロンC5Dn(17.466~17.154 Ma)に含まれると考えられる.この年代は珪藻化石から推定される内海層の年代(NPD 2B 帯:伊藤ほか,1999)と整合する一方,内海層の浮遊性有孔虫化石年代(N.9 帯以降:土井,1983)とは一致しない.
山海層下部から内海層にかけて,生息水深が漸深海と推定されているCornutella profundaなどの放散虫化石が産出した.よって,師崎層群上部(山海層下部+内海層)の堆積時の古水深は数100 m程度の漸深海と考えられる.そして,低・中緯度に生息する種と高緯度に生息する種が共に産出したことから,師崎層群上部堆積時には表層に温暖な水塊が分布し,表層より下部に寒冷な水塊が分布していたと考えられる.
引用文献
土井健太郎 (1983) 大阪微化石研究会誌, 10, 14-21.
Hayashida, A. (1986) J. Geomagn. Geoelectr., 38, 295-310.
Hoshi, H. and Matsunaga, A. (2024) Isl. Arc, 33, e12513, doi: 10.1111/iar.12513.
伊藤知佳ほか (1999) 地質学雑誌, 105, 152-155.
本山 功・澤田大毅 (2014) 2014年放散虫研究集会会津大会講演要旨集, 11.
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