講演情報
[T15-P-22]棚倉断層帯沿いに発達する堆積盆埋積層の層序と堆積盆発達史
*細井 淳1 (1. 茨城大学)
キーワード:
棚倉断層帯、層序、堆積盆、日本海拡大
棚倉断層帯は日本海拡大時にも活動したことが考えられており,当時,巨大なトランスフォーム断層だったとみなす研究もある.茨城県北部~福島県南部の棚倉断層帯沿い,棚倉断層帯の運動に伴った堆積盆が発達する.この堆積盆の発達史解明は,日本海拡大時の棚倉断層帯の運動,すなわち日本海拡大の地質構造発達史の解明につながることが期待される.Omori(1958)や大槻(1975)は綿密な地質調査に基づいて,50以上の層序単元に区分したが,その結果,層序単元毎の関係性が分かりにくくなってしまっており,堆積盆の発達史を議論する上で理解が困難になってしまっている.現在,5万分の1地質図幅「大子」の整備を進めており,発表者が担当する堆積盆埋積層の層序に関して新しい知見を得た.そこで棚倉断層帯沿いの新第三系層序を整理するとともに,最新の地質調査研究の成果に基づき層序を再定義する.棚倉断層帯沿いの中新統は棚倉断層帯の東西両側に分布し,棚倉破砕帯東縁断層を挟んで時代と岩相が異なる.棚倉断層帯破砕帯東縁断層の西側の中新統とそれらが埋積した堆積盆を西棚倉層群及び西棚倉堆積盆,東側の中新統とその堆積盆を東棚倉層群及び東棚倉堆積盆とする.西棚倉層群は堆積盆縁辺部(先新第三系との境界)周辺に分布する風木ノ草層及び東金砂山層と,堆積盆中央部周辺に分布する北田気層,大沢口層,男体山デイサイト,苗代田層,小生瀬層,内大野層から構成される.西棚倉層群の年代は約17–15 Maである(Hosoi et al., 2023など).一方の東棚倉層群は赤坂層と久保田層から構成され,それらの年代は約13–10 Maである(柳沢・細井,2024など).発表者は近年,層序学的研究に加えて,火山地質や古地磁気岩石磁気,構造地質などの様々な手法を駆使して,棚倉断層帯沿いの堆積盆発達史解明を行っている.本発表では,再定義した年代層序に基づいた,堆積盆の発達史に関する最新の成果を紹介する. 文献:Hosoi et al., 2023, Tectonics, e2022TC007642., Omori, M., 1958, Sci. Rep. Tokyo Kyoiku Daigaku. Sect. C: Geol., Mineral., Geogr., 55–116., 大槻憲四郎, 1975, 東北大地質学古生物学教室研究報文報告, 1–71., 柳沢・細井, 2024, 地質調査研究報告, 印刷中.
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