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[T15-P-32]北海道東部、屈斜路カルデラ火山周辺地域のテフラ層序と爆発的噴火史の再検討

*柴田 翔平1,2、長谷川 健1 (1. 茨城大学大学院理工学研究科、2. 日本学術振興会特別研究員PD)
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キーワード:

テフラ層序、噴火史、屈斜路火山、カルデラ

北海道東部に位置する屈斜路火山は,千島弧南部,阿寒-知床火山列南西部を構成する第四紀カルデラ火山である.本火山は,前期更新世に先カルデラ成層火山(外輪山)を形成した後,更新世チバニアン期の400 kaから後期更新世の40 kaにかけて,古梅(ふるうめ)溶結凝灰岩(FWT),屈斜路軽石流堆積物Ⅷ~I(Kp Ⅷ~Kp I)の大規模火砕流の噴出を経て,日本最大の屈斜路カルデラ(26×20 km)を形成した[1], [2], [3], [4].従来研究では,FWT,Kp Ⅷ~Kp Iに挟在する比較的小規模なテフラ群が記載されているが[1],[5],これらの詳しい層序や分布,噴出量は不明であった.本研究では,屈斜路火山のカルデラ形成期について,より高解像度の噴火履歴やマグマ変遷を検討するため,これらのテフラについて広域的・系統的な地質調査,岩石学的分析を実施した.本研究ではFWT,Kp Ⅷ~Kp Iに挟在するテフラ層(降下軽石堆積物,火砕流堆積物)について,これまで未記載であったものも含め10層以上を認識した.各テフラの層位や層相に加えて,Toya(112-115 ka)[6],Aso-4(87 ka)[7],Sp-1(46 ka) [8], [9]など既報の広域テフラとの層序関係や火山ガラス組成をもとに各テフラ層を対比した.比較的連続性の良いテフラは少なくともKp Ⅵ~Kp Ⅳの間に3層,Kp Ⅳ(120 ka)~Kp I(40 ka)の間に10層認められる.また,Kp Ⅳ以降のテフラ群には最大層厚が2 mに達し,給源から40 km以上追跡できる大規模なものも複数認められる.これらのテフラ層の大部分は,白色~白灰色の降下軽石堆積物で,本質物(軽石)の火山ガラス組成はデイサイト~流紋岩質であるが(SiO2=73.3~79.4 wt.%, K2O=1.7~3.8 wt.%),各テフラは固有の火山ガラス組成範囲を示し,SiO2, K2O, FeO*, CaOの含有量でそれぞれ識別,対比が可能である.屈斜路軽石流堆積物(特にKp Ⅵ~Kp Ⅳ)に挟在するテフラ群は,その上下に堆積する屈斜路軽石流堆積物との間に明瞭な火山灰土壌層を挟むものの,本質物の火山ガラス組成は層序的に近接する屈斜路軽石流堆積物のそれに類似し,同一の珪長質マグマ系に由来することが示唆される.大局的に見ると,最大規模のカルデラ形成噴火(Kp IV)以降から最新のカルデラ形成噴火(Kp I)にかけて挟在するテフラ層の枚数が増加し,また,これらのテフラには噴出量が1 km3以上のものも複数存在する.本火山では,Kp IV以降,火砕噴火の活動が活発化し,少なくとも8,000年間に1回以上の頻度で比較的規模の大きな降下火砕物と火砕流を繰り返し発生していたと考えられる.

[1]勝井・佐藤 (1963) 5万分の1地質図幅「藻琴山」42p. [2]山元ほか (2010) 地調研報, 43, 161-170. [3]長谷川ほか (2011) 地雑,117, 686-699. [4]Hasegawa et al. (2016) JVGR, 321, 58-72. [5]隅田 (1988) 知床館報, 9, 19-31. [6]町田・荒井 (2003) 新編火山灰アトラス,東大出版,336p. [7]Aoki (2008) Quant. Int., 178, 100-118. [8]Amma-Miyasaka et al.(2020) Quant. Int., 562, 58-75. [9]Uesawa et al. (2016) JVGR, 325, 27-44.

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