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[T9-O-5]琉球列島の花崗岩類と珪長質火山岩類のジルコンU-Pb年代測定による琉球弧火成作用の特徴

*福山 繭子1、小笠原 正継2 (1. 秋田大学、2. ジパング ジオサイエンス ラボ)
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キーワード:

琉球列島、花崗岩類、珪長質火山岩類、ジルコンU-Pb年代

九州の南,南西諸島において,琉球弧に沿った琉球列島の島々には,主に古第三紀と中新世の花崗岩類と珪長質火山岩類が点在する.小笠原・福山(2017)および福山・小笠原(2018)は,奄美大島,徳之島,沖永良部島,沖縄本島,石垣島の花崗岩類および珪長質火山岩類のジルコンU-Pb年代を報告し,これらのうち,代表的な花崗岩類16試料について全岩主成分・微量元素分析及びSr・Nd同位体比分析を行い,花崗岩類の成因について検討した.谷・堤(2018)は,奄美諸島花崗岩類の形成年代を検討し,またYamamoto et al. (2022)は,徳之島の花崗岩類のジルコンU-Pb年代を報告している.これらの研究以前は,琉球列島の花崗岩類の年代としてK-Ar年代,全岩Rb-Sr年代,およびFT年代が報告されていたが,ジルコンU-Pb年代測定により,琉球列島の珪長質火成活動の年代が明確となった.各島におけるジルコンU-Pb年代の報告は以下の通りである.
<奄美大島> 北から笠利,冠岳,市,勝浦,古仁屋,安脚馬,請島の花崗岩類は7岩体が分布するが,小笠原・福山(2017)はその中の,笠利,市,古仁屋,安脚馬についてジルコンU-Pb年代測定を行い,62.0±1.0 Ma,65.9±1.8Ma,61.7±0.6 Ma,62.2±0.5 Maという年代値が得られている.
<徳之島> 徳之島の与名間,金見,轟木の3花崗岩体と島南部の点在する小規模花崗岩体のジルコンU-Pb年代を測定し,それぞれ,64.40±0.6Ma - 62.7±0.6 Ma(与名間2試料),63.7±0.9 Ma,73.5±0.8 Ma,64.5±1.1 Maであることを示した(小笠原・福山,2017).Yamamoto et al. (2022) は花崗閃緑岩から61.3±1.0 Maの年代を得ている.
<沖永良部島> 島の中央部の花崗岩と東部の花崗斑岩の2試料のジルコンU-Pb年代測定の結果,17.1±0.3 Maおよび17.3±0.2 Maという年代値が得られている(小笠原・福山,2017).
<沖縄島> 石英斑岩について10.5±0.2Maの年代が示されている(小笠原・福山,2017).
<石垣島> 於茂登岩体,茶山岩体と流紋岩について,それぞれ33.3±0.4 Ma - 32.5±0.5 Ma(於茂登2試料), 32.6±0.6 Ma, 32.0±0.5 Maと求められている(小笠原・福山,2017).
 本研究では,今まで検討されていない幾つかの岩体について,新たにジルコンU-Pb年代測定を行なった.その結果,奄美大島の北西部に分布する多数の小規模な花崗岩岩脈(Osozawa, 1984)の年代は,17.2 ±0.2 Maであり,奄美大島にも中新世の花崗岩類が存在することが明確となった.この年代は沖永良部島の花崗岩の年代と同じである.また沖縄本島の中心部に産する花崗斑岩の年代は10.8 ± 0.2 Maとなり,上記で報告された石英斑岩の年代と同じである.これらの結果から,琉球弧における火成活動の時期は,中琉球における66-61 Ma,南琉球の石垣島における32 Ma,中琉球の奄美大島と沖之永良部島における17 Ma,そして沖縄本島における11Maと4つの活動時期があったことが明らかになった.またこれら岩石の全岩化学組成から琉球弧における火成作用の特徴および成因について議論をする.

引用文献
福山繭子・小笠原正継(2018) 2018年度日本地球化学会第65回年会講演要旨集,121.
小笠原正継・福山繭子(2017) 日本地質学会124年学術大会講演要旨, R5-O-22.
谷健一郎・堤之恭(2018) 日本地球惑星科学会, S-CG60-05O.
Osozawa, S.(1984) Sci. Rep. Tohoku Univ., Ser.2(Geology), 54,165-189.
Yamamoto H. et al.(2022) International Geology Reviews, 63, 1-16.

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