講演情報
[T9-O-6]琉球弧内の山陰帯花崗岩
*澤木 佑介1、坂田 周平1、大野 剛2 (1. 東京大学、2. 学習院大学)
キーワード:
ジルコン、山陰帯
琉球弧は日本列島南西端に位置し、西南日本の地体構造単元の南西延長と考えられている。面積的には小さいものの、日本列島の構造発達史において、各造山運動の側方連続性を議論する上で欠かせない地質体である。西南日本の大部分を構成する白亜紀~古第三紀の花崗岩類は大きく3分され、大陸側から山陰帯、山陽帯、領家帯とされる(石原, 1974)。そのおおよその火成年代は30~70Ma、70-105 Ma、70-100Maであり、山陰帯には磁鉄鉱系列の花崗岩類が多い一方、山陽帯及び領家帯にはチタン鉄鉱系列の花崗岩類が多い(中島, 2018)。最近、中琉球の徳之島から約65Maの閃緑岩が報告され(Yamamoto et al., 2022)、山本&磯﨑(投稿中)ではこの閃緑岩が山陰帯に帰属する可能性を述べた。これは、山陰帯が中琉球まで延長される事を意味する。徳之島よりもさらに南西に位置する南琉球・八重山列島にも花崗岩が産出するが、その帰属は不明である。本研究では石垣島に産する花崗岩の年代及び化学的特徴から、八重山列島の花崗岩の帰属について議論する。
石垣島西部に産する花崗岩体は於茂登プルトンと呼ばれ(川野&加藤, 1990)、加藤&永瀬(1983)はそれらが磁鉄鉱系列に属すると指摘した。於茂登プルトンから新鮮な花崗岩を採取した。主要構成鉱物は石英、斜長石、カリ長石、黒雲母、緑泥石であり、副次成分として最も多量なのはイルメナイトであり、磁鉄鉱は見つからなかった。岩石から粉末及びガラスビードを作成し、全岩化学組成をXRF及びICP-MSを用いて測定した。加えて単離したジルコンの206Pb/238U比をLA-ICP-MS/MSを用いて測定した。
花崗岩のSiO2濃度は76.66wt%であり、ACF図ではI型花崗岩領域にプロットされる。LILEに富み、NbやTaの負異常やPb正異常を示し、島弧花崗岩に一般的に見られる特徴を呈すると共に、HREEに枯渇することは無いため、浅部溶融起源である事が確かめられた。238U-206Pb年代はおおよそ33.0±2.5Maであった。これはジルコンのFT年代(28.7 ± 0.9 – 29.9 ± 1.1 Ma; 大四ほか, 1986)よりやや古く、小笠原&福山(2017)によるジルコンのU-Pb年代報告値とほぼ同じである。於茂登プルトンから得られたU-Pb年代は山陰帯の梅木花崗岩(31Ma; 飯泉・高橋, 2005)、内谷花崗岩(36Ma; 筒井ほか, 2002)、川本花崗閃緑岩(33Ma; Iwano et al., 2013)とおおよそ同じ年代である。於茂登プルトン内で早期晶出したジルコンの(Ce/Nd)Nは0.9程度と低く、副次成分鉱物同様にマグマが酸化的だったという痕跡は得られなかったが、年代の観点から言えば於茂登プルトンも山陰帯に帰属すると考えられる。山陰帯を形成した火成活動は、従来考えられていたよりもかなり広範に及んでいた事が明らかになった。
文献:石原 (1974) 地質ニュース 243, 23-29; 中島 (2018) 地質学雑誌 124, 603-625; Yamamoto et al. (2022) IGR 64, 425-440; 川野&加藤 (1990) 岩鉱 85, 390-401; 加藤&永瀬 (1983) 日本地質学会要旨集 90, 354; 大四ほか, (1986) 岩鉱 81, 324-332; 小笠原&福山 (2017) 日本地質学会要旨集 124, R5-O-22; 飯泉・高橋 (2005) 島根大学地球資源環境学研究報告 24, 1-11; 筒井ほか (2002) FTニュースレター 15, 15-18; Iwano et al. (2013) Island Arc 22, 382-394.
石垣島西部に産する花崗岩体は於茂登プルトンと呼ばれ(川野&加藤, 1990)、加藤&永瀬(1983)はそれらが磁鉄鉱系列に属すると指摘した。於茂登プルトンから新鮮な花崗岩を採取した。主要構成鉱物は石英、斜長石、カリ長石、黒雲母、緑泥石であり、副次成分として最も多量なのはイルメナイトであり、磁鉄鉱は見つからなかった。岩石から粉末及びガラスビードを作成し、全岩化学組成をXRF及びICP-MSを用いて測定した。加えて単離したジルコンの206Pb/238U比をLA-ICP-MS/MSを用いて測定した。
花崗岩のSiO2濃度は76.66wt%であり、ACF図ではI型花崗岩領域にプロットされる。LILEに富み、NbやTaの負異常やPb正異常を示し、島弧花崗岩に一般的に見られる特徴を呈すると共に、HREEに枯渇することは無いため、浅部溶融起源である事が確かめられた。238U-206Pb年代はおおよそ33.0±2.5Maであった。これはジルコンのFT年代(28.7 ± 0.9 – 29.9 ± 1.1 Ma; 大四ほか, 1986)よりやや古く、小笠原&福山(2017)によるジルコンのU-Pb年代報告値とほぼ同じである。於茂登プルトンから得られたU-Pb年代は山陰帯の梅木花崗岩(31Ma; 飯泉・高橋, 2005)、内谷花崗岩(36Ma; 筒井ほか, 2002)、川本花崗閃緑岩(33Ma; Iwano et al., 2013)とおおよそ同じ年代である。於茂登プルトン内で早期晶出したジルコンの(Ce/Nd)Nは0.9程度と低く、副次成分鉱物同様にマグマが酸化的だったという痕跡は得られなかったが、年代の観点から言えば於茂登プルトンも山陰帯に帰属すると考えられる。山陰帯を形成した火成活動は、従来考えられていたよりもかなり広範に及んでいた事が明らかになった。
文献:石原 (1974) 地質ニュース 243, 23-29; 中島 (2018) 地質学雑誌 124, 603-625; Yamamoto et al. (2022) IGR 64, 425-440; 川野&加藤 (1990) 岩鉱 85, 390-401; 加藤&永瀬 (1983) 日本地質学会要旨集 90, 354; 大四ほか, (1986) 岩鉱 81, 324-332; 小笠原&福山 (2017) 日本地質学会要旨集 124, R5-O-22; 飯泉・高橋 (2005) 島根大学地球資源環境学研究報告 24, 1-11; 筒井ほか (2002) FTニュースレター 15, 15-18; Iwano et al. (2013) Island Arc 22, 382-394.
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