講演情報
[T9-O-7]中国地方西部から九州に産する白亜紀貫入岩の活動場
*大和田 正明1、江島 圭祐1、亀井 淳志2、小山内 康人3、宮下 由香里4 (1. 山口大学、2. 島根大学、3. 九州大学、4. 産総研)
キーワード:
白亜紀、火成活動、テクトニクス場、マグマ過程
西南日本内帯の地質構造区分は,基本的に付加体とその高圧変成部から構成される。また,北東アジア収束帯ではジュラ紀初頭に火成活動が収まった後, 120 Ma頃から九州で火成活動が再開した (Kim et al. 2016, Lithos 262, 88–106)。近年,白亜紀以降のテクトニクスについては,火成活動の年代データに基づいて活発に議論されてきた (Tsutsumi 2022, Is. Arc, doi.org/10.1111/iar.12446; Yamaoka and Wallis 2023, PEPS, doi.org/10.1186/s40645-023-00594-8)。一方で,火成岩の化学的・年代学的特徴を踏まえた議論はJahn (2010, Amer. J. Sci. 310, 1210–1249)による研究のみである。そこで本研究では,ジルコンU–Pb法によるマグマの活動年代と化学的特徴の関係を考慮した火成活動場について議論する。
中国地方西部から九州中部にかけての先ジュラ系基盤類は,構造的上位から下位へ三郡-蓮華帯,秋吉帯/周防帯そして玖珂層群が累重する。これら基盤岩類を前期白亜紀関門層群が覆う。中国地方西部の白亜紀火成岩類の母岩は,主に秋吉帯/周防帯と玖珂層群なのに対し,九州では,主に三郡-蓮華帯と秋吉帯/周防帯である。前期白亜紀の北部九州では,アジア大陸東縁で発達した横ずれ断層運動による堆積盆(half-graben)の形成に伴って関門層群が堆積した(Okada and Sakai, 1993, Palaeogeogr. Palaeoclim. Palaeoecol. 105, 3–16)。この時,まだ未固結な堆積岩にマグマが貫入している(江島2021,地質雑127,605–619)。すなわち,北部九州では,引張応力場にマグマが貫入したことを示す。一方,中国地方西部の火成活動は,主に圧縮応力場で生じた(Skrzypek et al. 2016, Lithos 260, 9–27)。
標題地域の白亜紀貫入岩のうち80以上の岩体からジルコンU–Pb年代が報告されている。それらを地域ごとに見ると,120–100 Ma(肥後帯), 115–95 Ma(中・北部九州),105–90 Ma(中国地方西部)と年代幅が地域ごとに異なる。一方で,上述した全てのデータをまとめると,九州と中国地方西部の火成活動は,それぞれ110–105 Maと100–95 Maにピークがあり,105–100 Maは休止期に相当する。
貫入岩類は,トーナル岩から花崗岩を主体とし,少量のはんれい岩から石英閃緑岩を伴う。九州では,ホルンブレンドを含むトーナル岩から花崗閃緑岩がホルンブレンドを欠く黒雲母花崗岩に貫かれる。また,未分化組成の苦鉄質岩脈がしばしば伴われる。一方,中国地方西部の岩体は貫入関係にかかわらず,一部ホルンブレンドを含む花崗閃緑岩を伴うが,大部分は黒雲母花崗岩である。そして泥質母岩との境界部の岩相には,しばしば白雲母やざくろ石が含まれる。
貫入岩類の化学的特徴は以下のとおりである。SiO2含有量は,活動年代や場所に関わらず45–75 wt%と広い組成範囲を示す。ジルコンU–Pb年代で補正した各試料のSr同位体初生値 (SrI)とSiO2の関係は,記載的特徴やSiO2の変化に関わりなく,九州全域でほぼ一定である。それに対して,中国地方西部の岩体は正の相関を示す。特に白雲母やざくろ石を含む試料のSrIは高く,マグマの上昇・分化過程で地殻物質を同化したことが示唆される。また,九州と中国地方西部の岩体から得られた試料のイプシロンNd同位体初生値 (eNdI) はそれぞれ正と負である。花崗岩類のeNdIの値が正の岩体はマントルの関与が大きい起源物質に由来する。産状と Sr–Nd同位体組成の特徴を考慮すると,正のeNdIを示す九州の岩体は引張応力が主要な場に貫入したと想定され,その年代は主に120–105 Maで,95 Maまで継続した。一方,100–95 Maに活動した中国地方西部の岩体は,圧縮応力場のもとでマグマが貫入し,その上昇過程で地殻物質を同化したマグマに由来すると考えられる。
本研究で明らかになった同位体組成の変化には,年代の違いや地域性が認められるが,本質的には,マグマ貫入時のテクトニクスが強く影響していると考えられる。こうした,テクトニクスは白亜紀に北東アジアへ沈み込んでいたイザナギプレートとユーラシアプレートの相互作用,特に海洋プレート運動とそれに対応する大陸地殻の構造的な配置の変遷に起因すると推察される。
中国地方西部から九州中部にかけての先ジュラ系基盤類は,構造的上位から下位へ三郡-蓮華帯,秋吉帯/周防帯そして玖珂層群が累重する。これら基盤岩類を前期白亜紀関門層群が覆う。中国地方西部の白亜紀火成岩類の母岩は,主に秋吉帯/周防帯と玖珂層群なのに対し,九州では,主に三郡-蓮華帯と秋吉帯/周防帯である。前期白亜紀の北部九州では,アジア大陸東縁で発達した横ずれ断層運動による堆積盆(half-graben)の形成に伴って関門層群が堆積した(Okada and Sakai, 1993, Palaeogeogr. Palaeoclim. Palaeoecol. 105, 3–16)。この時,まだ未固結な堆積岩にマグマが貫入している(江島2021,地質雑127,605–619)。すなわち,北部九州では,引張応力場にマグマが貫入したことを示す。一方,中国地方西部の火成活動は,主に圧縮応力場で生じた(Skrzypek et al. 2016, Lithos 260, 9–27)。
標題地域の白亜紀貫入岩のうち80以上の岩体からジルコンU–Pb年代が報告されている。それらを地域ごとに見ると,120–100 Ma(肥後帯), 115–95 Ma(中・北部九州),105–90 Ma(中国地方西部)と年代幅が地域ごとに異なる。一方で,上述した全てのデータをまとめると,九州と中国地方西部の火成活動は,それぞれ110–105 Maと100–95 Maにピークがあり,105–100 Maは休止期に相当する。
貫入岩類は,トーナル岩から花崗岩を主体とし,少量のはんれい岩から石英閃緑岩を伴う。九州では,ホルンブレンドを含むトーナル岩から花崗閃緑岩がホルンブレンドを欠く黒雲母花崗岩に貫かれる。また,未分化組成の苦鉄質岩脈がしばしば伴われる。一方,中国地方西部の岩体は貫入関係にかかわらず,一部ホルンブレンドを含む花崗閃緑岩を伴うが,大部分は黒雲母花崗岩である。そして泥質母岩との境界部の岩相には,しばしば白雲母やざくろ石が含まれる。
貫入岩類の化学的特徴は以下のとおりである。SiO2含有量は,活動年代や場所に関わらず45–75 wt%と広い組成範囲を示す。ジルコンU–Pb年代で補正した各試料のSr同位体初生値 (SrI)とSiO2の関係は,記載的特徴やSiO2の変化に関わりなく,九州全域でほぼ一定である。それに対して,中国地方西部の岩体は正の相関を示す。特に白雲母やざくろ石を含む試料のSrIは高く,マグマの上昇・分化過程で地殻物質を同化したことが示唆される。また,九州と中国地方西部の岩体から得られた試料のイプシロンNd同位体初生値 (eNdI) はそれぞれ正と負である。花崗岩類のeNdIの値が正の岩体はマントルの関与が大きい起源物質に由来する。産状と Sr–Nd同位体組成の特徴を考慮すると,正のeNdIを示す九州の岩体は引張応力が主要な場に貫入したと想定され,その年代は主に120–105 Maで,95 Maまで継続した。一方,100–95 Maに活動した中国地方西部の岩体は,圧縮応力場のもとでマグマが貫入し,その上昇過程で地殻物質を同化したマグマに由来すると考えられる。
本研究で明らかになった同位体組成の変化には,年代の違いや地域性が認められるが,本質的には,マグマ貫入時のテクトニクスが強く影響していると考えられる。こうした,テクトニクスは白亜紀に北東アジアへ沈み込んでいたイザナギプレートとユーラシアプレートの相互作用,特に海洋プレート運動とそれに対応する大陸地殻の構造的な配置の変遷に起因すると推察される。
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