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[T3-O-16]須恵器の鉱物組成とその胎土の推定(2)

*小滝 篤夫1 (1. 京都府立大)
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キーワード:

須恵器、鉱物組成、胎土、珪藻、土の調整

はじめに 
考古学において,土器を作る材料として使われた土(胎土)の産地の推定には,多様な方法が取られてきた(石田2015,2022).ルーペ,実体顕微鏡などによる土器表面の鉱物観察,土器薄片の偏光顕微鏡による鉱物や微化石の観察,蛍光X線分析XRF,中性子線分析などによる土器の化学組成の検討である.化学組成の検討は数多く行われてきたが,薄片観察は,須恵器のように1000℃以上の高温で焼成するとされている土器中の鉱物は熱で変質していて同定が難しいとされ,薄片による鉱物観察から胎土を推定した例は少ない.  筆者は,前年の本大会において京都府福知山市夜久野町末地区で表採された,京都府立大学考古学研究室と福知山市文化財保護係が保管する須恵器片のうち「焼きが甘い」と判断される試料の岩石薄片の鉱物観察結果と,末地区周辺の地質分布と比較をして,胎土を推定する方法を試みたことを報告した.その後,試料の数を増やして顕微鏡観察を進めた結果,胎土中にケイソウ遺体が見られることなど,胎土の推定に新たな展開があったので昨年の続報として報告する.
須恵器窯跡の地質
末地区には夜久野オフィオライトのメンバーであるはんれい岩が分布し,地表下数m以上の深さまで風化が進みマサ土状になっている.その中には斜長石,直方輝石,普通角閃石,粘土鉱物が確認できる.一部の窯跡は,三畳系夜久野層群の砂岩・頁岩の分布域にある(石渡・市山2009).
須恵器片中の鉱物 
上記の2地域に産する須恵器片の薄片を偏光顕微鏡下で観察した.ほとんどの試料からケイソウ遺体を含む粘土片が観察された.また土の調整のために粘土に混入されたと考えられる0.3㎜以上の砂サイズ(清水1992)の石英粒子も多くの試料に見られた.
胎土の推定
 前年の報告では,各試料には,それぞれの窯の所在地の地質に対応した鉱物が観察できたことから,窯所在地で採取した土を胎土とした可能性が高い,と報告した.しかし,試料を増やして検討して検討した結果,胎土の粒度を調整するために,牧川はんらん原の堆積物と考えられる粘土や砂が混入されている可能性が高いことが判明した.縄文・弥生土器,土師器などでは胎土の粒度を調整したことが明らかにされている(清水1992)が,須恵器においてもそれが明らかになってきた. 今後さらに試料数を増やして,須恵器作成の実態を明らかにしていきたい.
文献 ・石田智子(2015)鹿児島考古第45号,3-13, ・石田智子(2022)科学分析はじめてガイド.22-25.・石渡 明・市山祐司(2005)夜久野町史第1巻,159-180. ・清水芳裕(1992)京都大学構内遺跡調査研究年報1988年度,59-77.

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