講演情報

[T16-O-6]南三陸町大沼における津波堆積物の微化石群集(予察)

*佐々木 聡史1、藤森 一真2、山田 昌樹2、河潟 俊吾3、石村 大輔4 (1. 群馬大学、2. 信州大学、3. 横浜国立大学、4. 東京都立大)
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キーワード:

微化石、津波堆積物、完新世

2011年東北地方太平洋沖地震は,大津波を引き起こし,沿岸地域に大きな被害を及ぼした.東北地方の太平洋沿岸地域では,2011年以降に過去の津波履歴を解明するための古津波堆積物研究が盛んに行われている.Ishimura & Miyauchi(2017)は,宮城県南三陸町大沼においてトレンチ掘削,ジオスライサー掘削,ボーリング掘削を行い,堆積物の記載,放射性炭素年代測定,テフラ分析,化石群集分析(貝および珪藻)を行った.しかし,化石群集分析は,貝及び珪藻化石のみであり,異なる分類群を用いた分析を行うことで,さらに詳細な津波堆積物の供給源および運搬・堆積プロセスを解明できると考えた.そのため本研究の目的は,先行研究で採取された長さ100 cmのジオスライサー掘削試料中(ONM-GS7:海岸線から約550 m)の津波堆積物と推定された2つの砂層(S1:深度25〜34 cm,S2:深度87〜93 cm)から産出した微化石群集結果(貝形虫化石・有孔虫化石)に基づいて,これらの津波堆積物の供給源について考察を行った.
本研究対象の砂層の年代は,掘削試料下部のS2は4450-4780 cal BP,上部のS1は680-1010 cal BPと見積もられた(石村, 2019).結果として,S2の砂層から19属36種の貝形虫と15属21種の有孔虫がS1の砂層から8属12種の貝形虫と11属20種の有孔虫が産出した.先行研究の記載に基づくと,2つの砂層では,下部から上部にかけて細粒化していることが確認でき,それぞれの砂層の簡易含泥率の結果は,上部に向かって増加した.また,それぞれの砂層の最下部試料は,ほとんど貝形虫と有孔虫が確認できず,それぞれの砂層上部に向かって,試料1 gあたりの貝形虫と有孔虫個体数と種数が急激に増加した.加えて,貝形虫と有孔虫殻は,黒色や摩耗している殻が多く,保存状態が悪いと考えた.特に保存状態の良い貝形虫殻は,葉上種の殻がほとんどで,一部底生種の殻が含まれていた.以上のことより,2つの砂層の形成は,粗い粒子が堆積し,細かな粒子と貝形虫・有孔虫は,同時に堆積したため,試料に含まれる個体数が砂層上部で急激に増加したと考えられる.また,沖合などに生息する底生種は産出せず,浅海の保存状態が異なる底生種が産出したことより,浅海の現地性表層堆積物のみならず,異地性の浅海堆積物が津波に伴う侵食運搬によって,試料採取地点に堆積したと考えられる.

引用文献:Ishimura, D., Miyauchi, T., 2017, Marine Geology, 386, 126–139. 石村大輔,2019,活断層研究,51,53–59.

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