講演情報

[T2-P-3]東南極氷床の完新世中期における急速な融解とその後の再拡大の可能性

*奥野 淳一1,2,3、石輪 健樹2,3、菅沼 悠介2,3、青山 雄一2,3 (1. 情報・システム研究機構、2. 国立極地研究所、3. 総合研究大学院大学)
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キーワード:

完新世中期、東南極氷床、氷河性地殻均衡調整

近年,南極大陸における氷河地形的証拠と表面露出年代の蓄積により,完新世中期の南極氷床の詳細な変動史が明らかになってきている(たとえばSuganuma et al., 2022, Comm. Earth Env.).特に東南極のリュツォ・ホルム湾周辺では,完新世中期の3000年間で約400mの急速な氷床高度低下が報告されている(Kawamata et al., 2020, QSR).しかしながら,ICE-6G_D(Peltier et al., 2018, JGR)をはじめとする代表的な退氷モデルでは,この急激な融解過程は考慮されていない.
本研究では,リュツォ・ホルム湾沿岸の測地学的観測から,GIA(Glacial Isostatic Adjustment)によるシグナルの影響を再現することで,該当地域における完新世の東南極氷床変動を検討する.完新世中期の急速な氷床高度低下を考慮した氷床融解史を構築し,GIA数値シミュレーションを行った結果,対象地域におけるGNSS観測結果と一致したシミュレーション結果が得られた.この結果は,完新世中期における急速な氷床融解が測地学的にも支持されることを示すとともに,測地観測がこの地域の氷床融解過程の制約に大きく貢献できることを示唆する.さらに本研究では,精密なGIAモデリングに基づいて,急速な後退に続く再拡大の可能性とその条件となるGIAのモデルパラメータについて,定量的な結果に基づいて議論する.本研究の結果は,地形・地質学的証拠と測地学的観測を組み合わせることで,完新世中期の南極氷床変動の理解が深まることを示しており,将来の海水準変動予測の精度向上に貢献すると期待される.

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