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[T2-P-9]東南極リュツォ・ホルム岩体あけぼの岩東部に産する含十字石片麻岩の温度圧力経路

*北野 一平1、外田 智千2、馬場 壯太郎3、亀井 淳志4、本吉 洋一2 (1. 北海道大学総合博物館、2. 極地研究所、3. 琉球大学、4. 島根大学)
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キーワード:

十字石含有片麻岩、温度圧力経路、あけぼの岩、リュツォ・ホルム岩体、東南極

東南極リュツォ・ホルム岩体には約5–6億年前で時計回りの温度圧力履歴を有する高温変成岩類が広く分布し,変成度に基づき東から西へ角閃岩相帯,漸移帯,グラニュライト相帯に区分されている(例えばHiroi et al., 1983; Shiraishi et al., 1994).角閃岩相帯には,一部約9–10億年前の高温変成岩(角閃岩相~グラニュライト相)が異地性のブロックとして存在することが示唆されてきた(例えばShiraishi et al., 1994).あけぼの岩はその一つで,約9億3000–4000万年前に形成した角閃岩相の変成岩類から構成され,時計回りの温度圧力経路が推定されている(Baba et al., 2020, 2022).しかし,変成解析はあけぼの岩西部に限られているため,本発表では,あけぼの岩東部に産する十字石含有片麻岩から温度圧力条件を見積もり,西部との比較を行った.あけぼの岩は主に層状の黒雲母片麻岩,ザクロ石―黒雲母片麻岩,黒雲母―ホルンブレンド片麻岩からなり,局所的に花崗岩などに貫入されている(Hiroi et al., 1986).あけぼの岩西部の変成岩は,約7–8 kbar, 650–700 ℃の最高温度圧力条件を経て,せん断と上昇を伴い約4–5 kbar, 610–660 ℃に至る時計回りの温度圧力経路をしめす(Baba et al., 2020, 2022).分析試料の十字石含有ザクロ石―ゼードル閃石―黒雲母―緑泥石片麻岩はあけぼの岩東部に分布し,ミグマタイト質片麻岩中のザクロ石に富む層として産する.この試料は,粗粒なザクロ石の斑状変晶,定向配列するゼードル閃石,黒雲母,緑泥石に加え,斜長石と石英を含む.そのほか,少量の十字石および直閃石が斜長石の包有物として認められ,ザクロ石の中心部には少量の白雲母と直閃石+緑泥石+石英の細粒集合体が認められる.ザクロ石は比較的Caに乏しいコアとCaに富むリムからなる.コアはリムに対してやや高いXMg値とFe含有量,わずかに低いMn含有量をしめす傾向にある.斜長石中に残存する十字石は,黒雲母と石英の包有物の近くに産し,0.27–0.29のXMg値と0.48–0.94 wt%のZnO含有量をもつ.ザクロ石のコアおよび斜長石に包有される直閃石のXMg値は0.60–0.63である.ザクロ石コア中のゼードル閃石のXMg値は0.55–0.56であるのに対して基質部のゼードル閃石のXMg値は0.51–0.53である.ザクロ石のコアで白雲母および緑泥石と接する黒雲母は低いXMg値(0.60–0.62)をしめし,十字石を包有する斜長石中の黒雲母は高いXMg値(0.65–0.66)をしめす.一方,基質部の黒雲母は0.61–0.64のXMg値の幅をもつ.斜長石は縁辺部に向かってXAnが減少する組成累帯構造をしめし,十字石を包有する部分ではXAn = 0.13–0.15とやや高いものの,それ以外の部分ではXAn = 0.09–0.12である.緑泥石のXMg値は,ザクロ石コア中では0.66–0.67で,基質部のものは1点(XMg = 0.64)を除いて0.67–0.68である.地質温度圧力計により,ザクロ石コアおよびリムの形成条件はそれぞれ約5.0–7.9 kbar, 590–660 °C,約7.4–9.2 kbar, 540–610 °Cと計算された.その結果,本試料からは,あけぼの岩西部の変成岩と真逆の反時計回り温度圧力経路を持つ可能性が示唆された.一方で,両者は類似した変成年代をしめす(Baba et al., 2022; Kitano et al., 2023).したがって,あけぼの岩には同時期の変成作用で温度圧力経路の異なる変成岩が分布することが推察される.そのため,より広域的に岩石学的な解析を展開して,各温度圧力経路の変成岩の分布域を明らかにし,その地質学的意義を検討する必要性がある.引用文献:Baba et al. (2020) Antarctic Science,Baba et al. (2022) Gondwana Research,Hiroi et al. (1983) Memoirs of National Institute of Polar Research,Hiroi et al. (1986) Antarctic Geologicai Map Series, Sheet 16 Akebono Rock,Kitano et al. (2023) Journal of Mineralogical and Petrological Sciences,Shiraishi et al. (1994) Journal of Geology

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